感染症の国際的流行等を踏まえた外国人患者の受入れ環境整備に向けた研究

文献情報

文献番号
202106008A
報告書区分
総括
研究課題名
感染症の国際的流行等を踏まえた外国人患者の受入れ環境整備に向けた研究
課題番号
21CA2008
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
北川 雄光(慶應義塾大学 医学部 外科学(一般・消化器外科))
研究分担者(所属機関)
  • 武田 裕子(順天堂大学 大学院医学研究科 医学教育学)
  • 八木 洋(慶應義塾大学 医学部 外科学(一般・消化器))
  • 岡村 世里奈(国際医療福祉大学大学院 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
4,604,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、在留・訪日外国人旅行者の急増を背景として、医療機関を受診する外国人患者が増えてきているが、わが国では、外国人患者の受入れ体制が整備されている医療機関は非常に限られていることから、2018 年~2020 年度に実施した「外国人患者の受入れ環境整備に関する研究」(研究代表者:慶応義塾大学 北川雄光)では、外国人患者の受入れ環境整備に関する研究を行い、その成果を医療機関ならびに地方自治体向けマニュアルをまとめ、厚生労働省のホームページで公表して全国の医療機関や地方自治体に周知した。更なる外国人患者受入環境普及・実装のために、当該マニュアルの周知や取り組みのいっそうの推進が不可欠であるとされた。今後本格的にインバウンドが再開する前に、各医療機関において、外国人患者の円滑な受入れを行うために一定の通訳体制を整備し、「やさしい日本語」を活用した早急な対応が求められていることも踏まえた調査研究を行う。
研究方法
始めに、本研究では複数の通訳手法を導入している医療機関及び当該医療機関に対して遠隔医療通訳サービスを提供している事業者に対してインタビュー調査を行いその現状と課題を明らかにするとともに、そこで明らかになった課題への対応策への示唆を得るため、医療通訳先進国の取り組み状況について文献調査等を通して明らかにする。さらに、医療機関等における「やさしい日本語」の整備・普及に関する研究を実施し、医療機関において、新型コロナウィルス感染症の流行を背景として増えてきている在留外国人の受入れを円滑に行うために、「やさしい日本語」の活用が有効といわれている。しかしながらわが国では「やさしい日本語」の存在を知らない医療機関や地方自治体も多く、あるいは存在を知っていても導入のために必要なプロセスを理解していないことも多い。そこで本研究では、医療・行政関係者・在留外国人関係者等を対象としたアクションリサーチを行うことによって、医療機関等における「やさしい日本語」導入・普及プロセスについて検討を行い、その成果をまとめて、マニュアルに加えて公開することで、全国の医療機関・自治体への普及を図る。
結果と考察
<北川班>
感染症流行期における医療機関の医療通訳体制の在り方について検討を行うため、医療機関等に対してインタビュー調査及び医療通訳先進国の取り組み状況について文献調査等を行ったところ、次の 3 点が課題として明らかとなった。第 1 点目は、感染流行期の医療通訳体制としては、感染症対策の観点から電話やビデオを使用した遠隔医療通訳の活用。第 2 点目は、日本においても少なくとも医療従事者向けの医療通訳利用に関するガイドラインの策定や活用について。第 3 点目は、医療通訳体制整備・運用に関する費用。
<武田班>
在住外国人が増加の一途を辿り、コミュニケーションのツールとして「やさしい日本語」の注目度が高くなっている。医療現場では「やさしい日本語」があまり知られていない点に着目し、普及・啓発のための研究を始めていたところ、新型コロナウィルスのパンデミックにより、PCR検査やワクチン接種の場面での「やさしい日本語」の必要度が急速に上がった。広く普及するための方策として、「学ぶ」だけではなく「伝える」存在が必要と考え、自ら医療関係者に「やさしい日本語」研修を開催したいと希望する方を対象として研修会を実施した。本研究では、医療機関等で「やさしい日本語」の導入・普及のために必要な研修会の開催とその効果を検証し、“医療機関のための「やさしい日本語」ガイド”を作成した。
結論
研究の結果、感染症流行期の医療機関においては、感染症対策から対面通訳よりも電話やビデオなどの遠隔通訳の活用が期待されるが、今回回答した医療機関等においては利便性や機能性、ナレッジなどの問題から必ずしも適切に活用されていないことが明らかとなった。また、海外の医療通訳先進国では、遠隔医療通訳等が医療機関において適切に活用されるように様々な取り組みを行ってことが明らかとなった。そのため今後日本の医療機関において、感染症流行期はもちろんのこと通常期においても円滑な医療通訳体制の整備を進め、外国人患者に対して安全で安心な医療を提供していくためには、①医療通訳者のための遠隔通訳に関するトレーニングの実施や、②医療機関や医療通訳者向けにそれぞれの通訳手法ごとの通訳方法や留意点をまとめた情報ツールの作成・周知、③医療従事者向けの医療通訳に関するガイドラインの策定や周知、④医療通訳体制の整備・維持に関する費用負担の検討、等が重要になってくるものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2023-03-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-03-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202106008C

収支報告書

文献番号
202106008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,904,000円
(2)補助金確定額
3,904,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 199,793円
人件費・謝金 1,338,746円
旅費 0円
その他 1,465,461円
間接経費 900,000円
合計 3,904,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-03-29
更新日
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