文献情報
文献番号
202105001A
報告書区分
総括
研究課題名
国連の持続可能な開発目標3(SDG3)‐保健関連指標における日本の達成状況の評価および国際発信のためのエビデンス構築に関する研究
課題番号
20BA1001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
児玉 知子(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
研究分担者(所属機関)
- 三浦 宏子(北海道医療大学 歯学部)
- 欅田 尚樹(産業医科大学 産業保健学部)
- 松本 俊彦(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
- 松岡 佐織(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
- 大澤 絵里(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
- 伊藤 加奈江(戸次 加奈江)(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
地球規模の保健課題は、近年、世界保健機関(WHO)のみならず、国連総会や主要国際会合でもしばしば主要議題として扱われる等、国際社会においてその重要性が高まっている。ミレニアム開発目標の後継として2015年9月に採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)では、開発国のみでなく先進国においても保健分野のゴールが設定され、国際的な取組が一層強化された。本研究では、SDG Goal3保健関連指標において、現在国内で実施されている統計調査等の結果を基にデータの集計・算出、近似値の推計を行う方法を開発し、各国と推計値の比較を行い、国際社会に向けて発信することを目的とする。
研究方法
本年度(2年目)はSDG3保健指標におけるユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)、生涯を通じた健康の確保(母子保健・高齢化)、非感染性疾患(Non communicable diseases:NCD)、感染症(HIV/エイズ、結核)、薬物乱用の予防と治療、人体に有害な環境の改善に関する指標について、引き続き国内既存の厚生労働統計や行政報告、および国連メタデータの活用について検討した。さらに、国際社会に向けた発信のため、家族計画指標に利用可能な統計データの探索、未受診妊婦と関連する社会経済環境要因の生態学的分析、NCDによる死亡率の経年変化と国際比較、物質使用障害(薬物依存症)における治療介入カバレッジの試算、水・衛生分野の施策の推進や国際協力のあり方の提案、異なる文化圏で高齢化指標Active Ageing Index(AAI)を適用した事例のプロセス分析等を実施した。
結果と考察
2年目は初年度の報告に準じ、引き続きUHCサービスカバレッジインデックス14追跡指標のメタデータ算出データ・方法について確認した。この中で家族計画、妊娠と出産指標については、既存データ収集時の改善による収集の可能性が示唆されたが、小児の肺炎治療指標は、高所得国では国際機関の推計値を用いる必要が示唆され、今後もWHOサイトや専門家グループ等による情報提供を注視する必要がある。HIV治療率については、国連推計モデルを導入する際に、国内モニタリングデータ(動向委員会)との情報整理が必要である。潜在的な薬物依存症者数を違法薬物のみに限定した場合の治療介入カバレッジは6.32%、違法薬物に医薬品乱用を加えた場合は1.81%と推計された。PM2.5を中心とした大気汚染物質は、国内でも疾病及び死亡への寄与が疫学的に示されており、今後はSDGsの枠組みでのモニタリングが期待される。NCDの標準化死亡率は、経年で着実に改善傾向が認められているが、性差や部位・カテゴリー別で異なるパターンがみられており、国際比較においては留意する必要がある。2020年以降のデータ収集や結果には新型コロナウイルス感染症による影響が懸念されるため、関連データ提出には対応が必要と予想される。同時に、国際協力の観点から保健医療施設や学校、生活の場における安全な水の供給の重要性が再認識された。
結論
保健領域におけるSDGs達成のためには、SDG3の指標等を通じて統一的な指標で評価・モニタリングすることが重要であり、多くは国内のプライマリデータが利用可能である。一方、カバレッジに主眼を置いた国連のUHC追跡指標には、低中所得国を対象に開発されているものもあり、現行の定義では一部国際機関の推計値を採用するのもやむを得ない。本研究では、既存の統計・行政データをもとに算出方法を明らかとし、関連データの推計およびエビデンス構築を行った。今後も各国動向を視野に入れつつ、国内の現状を反映した指標の算出について、既存の統計調査や行政報告等の利活用が進むことが期待される。また、今般の新型コロナウイルス感染症蔓延により、2020年以降のデータ収集や結果に影響が出ているため、今後の関連データ提出には別途対応が必要と考えられる。
公開日・更新日
公開日
2022-05-27
更新日
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