糖尿病個別化予防を加速するマイクロバイオーム解析AIの開発

文献情報

文献番号
202103019A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病個別化予防を加速するマイクロバイオーム解析AIの開発
課題番号
21AC5004
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 國澤 純(医薬基盤・健康・栄養研究所 医薬基盤研究所)
  • 水口 賢司(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 医薬基盤研究所 バイオインフォマティクスプロジェクト)
  • 竹山 春子(早稲田大学 先進理工学部生命医科学科)
  • 小川 順(京都大学 農学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
265,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究グループでは、腸内細菌叢を中心とするマイクロバイオームに関するデータベース構築を進めている。そこには腸内細菌データだけではなく、GWASなどのゲノム情報や生活習慣、健康診断情報、生理・体力指標、免疫因子や代謝物など豊富なメタデータが登録されている。さらに現在、共同研究として多くのグループに解析プロトコルを提供し、同一プロトコルで収集した様々な疾患患者のデータ統合を進めている。
本研究では、これらの研究基盤を活用し、サンプルの追加と腸内細菌の高機能なメタゲノムデータを加えたデータベースへの格納と拡張、さらにはデータ解析のためのプラットフォーム改変、糖尿病の予防や改善のための有用菌の機能・ゲノム解析、最先端メタボローム解析システムを用いた有用代謝物の同定、メカニズム解明、生産システムの開発などを進め、糖尿病の個別化予防やヘルスケア・機能性食品開発等のためのデータベースならびに人工知能(AI)の機能強化を図る。
研究方法
腸内細菌のゲノム解析は、ビーズ破砕法による便サンプルからのDNA抽出、もしくはSAG-gel法を用いたシングルセルゲノムDNAを取得し、次世代シーケンサーを用いて遺伝子配列を測定し、菌種情報、ショットガンメタゲノム情報、細菌ゲノムの系統情報を取得した。代謝物解析について、血清、糞便、菌の培養上清、菌体を対象に、液体クロマトグラフィーと三連四重極型質量分析計もしくはオービトラップ型質量分析計、ラマン分析計を用いたメタボローム解析を行った。
得られたデータは、食事習慣などのメタデータとともに、PostgresSQLデータベースに格納し、さらに独自に開発した統合解析プラットフォームMANTAについて、ショットガンメタゲノムデータなど新規のデータ型に対応できる機能を拡張した。
 有用代謝物について、生産に関わる酵素の特定を行い、遺伝子工学手法を用いて鍵酵素を発現する形質転換大腸菌を用いた有用代謝物の生産システムや精製手法の構築を行った。
 全ての研究は倫理指針に従って遂行した。
結果と考察
本年度は縦断データや介入試験を含む、約1,800名からサンプルとデータを収集し、腸内細菌のゲノム解析を実施した。これらの情報をメタデータと共にデータベースに格納、一部のデータを公開し(NIBIOHN JMD, https://microbiome.nibiohn.go.jp/)、さらに、インハウスの統合解析プラットフォームであるMANTAの機能を拡張して統合解析基盤を構築した。NIBIOHNマイクロバイオームデータベースや統合解析プラットフォームMANTAなどを活用し、食品メーカーと共同で食の効果を判定する機械学習モデルを構築するなど、本事業の成果の利活用を進めている。
また糖尿病改善候補菌を中心に、シングルセルゲノム解析を行い、全ゲノム情報により有用候補菌Xの多様性を示唆する結果を得た。また、メタボローム解析システムならびにラマン分析システムを用いて、有用候補菌Xの菌体内に特異的もしくは有意に多く蓄積しており、腸内環境の改善に関わると予想される代謝物を新たに同定するなど、抗肥満や抗糖尿病効果を発揮するメカニズムの解明を進めた。
また本プロジェクトにより同定したαKetoAなどの有用代謝物(ポストバイオティクス)について、ヒトへの実用性や妥当性を評価するため、ヒトサンプルを用いたメタボローム解析を行い、糞便中のαKetoAが基質となるαリノール酸の量と相関することを確認した。さらに、有用代謝物質の代替食品の開発など製品化や実用化に向けた検討・取組みを推進している。
結論
本研究において、メタデータの付随した世界最大級のマイクロバイオームデータベースの拡充、精度の高いマイクロバイオームメタゲノム解析による腸内細菌の機能解析と高機能メタボローム解析によるポストバイオティクス分析の実施が進捗した。これにより、糖尿病予防に繋がる実効因子の同定などマイクロバイオームとの関連が分子レベルで明らかになり、機能性食品開発等の産業利用のための学術基盤が確立されてきた。さらに、本研究プラットフォームは、糖尿病だけではなく、他の健康状態も対象にした研究基盤へと拡張しつつあり、すでに企業を含む多くの機関との共同研究の開始・推進につながっている。本成果を糖尿病の個別化予防システム開発へ発展させることで、民間の機能性食品・ヘルスケア関連産業の開発・投資につながる研究基盤として進展が期待できると考える。

公開日・更新日

公開日
2022-09-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202103019C

収支報告書

文献番号
202103019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
34,450,000円
(2)補助金確定額
34,450,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 143,397,723円
人件費・謝金 36,891,239円
旅費 327,700円
その他 84,385,225円
間接経費 79,500,000円
合計 344,501,887円

備考

備考
支出の合計に自己資金1,887円を含むため。

公開日・更新日

公開日
2022-09-07
更新日
-