文献情報
文献番号
202103015A
報告書区分
総括
研究課題名
AIを活用した医療機器の開発・研究におけるデータ利用の実態把握と課題抽出に資する研究
課題番号
21AC1006
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
中野 壮陛(公益財団法人医療機器センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
3,721,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
令和3年度の規制改革実施計画では、「AI画像診断機器等の性能評価において、仮名加工情報を利用することの可否について検討した上で、教師用データや性能評価用データとして求められる医療画像や患者データについて整理を行い、当該データを仮名加工情報に加工して用いる際の手法等について具体例を示すこと」とされていることから、本研究では、これまで明らかとなっていなかったAI医療機器の開発および性能評価におけるデータ利用の国内外の実態調査を行い、わが国におけるデータ利用にあたっての課題抽出と整理を令和3年度末までに行う。これらを通して、AI医療機器開発の加速化に資する医療データ活用指針のあり方を提供する。
研究方法
AI医療機器の開発及び性能評価におけるデータ利用の国内外実態調査(ヒアリング、アンケート調査、Webによる文献調査等)を行い、AI医療機器の性能評価等における仮名加工情報を利用する場合の課題の整理を行った。申請者が研究総括として全ての研究遂行を行ったが、その実施にあたっては、企業(大手とベンチャー)、アカデミア、データ提供側、プライバシー保護等の専門家という幅広いステークホルダーによる研究班を組織して実施した。
結果と考察
企業、研究機関、医療機関などが画像情報(CT・MRI画像等)やその他の非テキスト情報(心電図・脳波等)、診療記録などの医療情報を利活用して以下、AI医療機器を開発するには、一般に膨大な量のデータが必要となるが、過去にさかのぼって膨大な数の患者に対して同意を取得する、いわゆるオプトイン同意は現実的には困難であり、企業が、AI医療機器の開発において、個人情報のまま医療情報を利活用できるケースは限られている。そこで、企業等が進めるAI医療機器の開発において、個人情報保護法で規定される匿名加工情報や仮名加工情報を円滑に利活用する方策が必要となる。そこで、個人情報保護法に主眼をおきつつ、個人情報保護法と人を対象とする生命・医学系指針の関係、また個人情報保護法と医薬品医療機器等法の関係に着目し、それらの課題を俯瞰的に抽出し、現行制度下において可能な方策と今後解消すべき課題を明確化した。その結果、個人情報保護法に関しては、法制度としての大きな課題は見られなかったが、仮名加工情報の共同利用にあたっては、『加工により他の情報と照合しない限り特定の個人を識別できない状態』であることが求められるため、医療機関向けの適切な加工手順を国よるガイドラインとして整備する必要があると考えられた。生命・医学系指針に関しては、第4章第8の1(2)イ(試料を用いない研究)において、「既に作成されているもの」に該当しない仮名加工情報(個人情報でない仮名加工情報)の利活用について、実質的に上乗せ規定が設けられており、仮名加工情報の利活用を進める上で弊害となっているため、今後見直しなどが求められるのではないかと考えられた。医薬品医療機器等法に関しては、性能評価(承認審査)、信頼性調査、市販後学習への仮名加工情報の利活用について大きな課題は見られなかったが、より積極的にデータ利活用を推進する観点からは、データの適切な管理体制を評価する方策や具体的方法論の検討を産業界が自ら率先して取り組むことが期待されるのではないかと考えられた。
結論
本研究では、これまで明らかとなっていなかったAI医療機器の開発および性能評価におけるデータ利用の国内外の実態調査を行い、わが国におけるデータ利用にあたっての課題抽出と整理を行うため、個人情報保護法に主眼をおきつつ、個人情報保護法と生命・医学系指針の関係、また個人情報保護法と医薬品医療機器等法の関係に着目し、それらの課題を俯瞰的に抽出し、現行制度下において可能な方策と今後解消すべき課題を明確化した。
公開日・更新日
公開日
2022-06-21
更新日
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