文献情報
文献番号
200832014A
報告書区分
総括
研究課題名
粘膜系自然・獲得免疫によるアレルギー制御
課題番号
H19-免疫・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
清野 宏(東京大学医科学研究所 感染・免疫部門 炎症免疫学分野)
研究分担者(所属機関)
- 審良静男(大阪大学微生物病研究所 自然免疫学)
- 川内秀之(島根大学耳鼻咽頭科学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
29,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
花粉症をはじめとするアレルギー性鼻炎の病態の成立までには、遺伝的な素因を背景としながら、生後の種々の外来環境因子への暴露により感作され、発症に至る過程がある。 そこで本研究では、アレルギー性鼻炎の発症に重要な役割を果たしているケモカインCCL19/CCL21に着目し、鼻腔咽頭組織におけるT細胞依存性アレルギー鼻炎の発症制御に関与しているか検討した。また、NALT以外の鼻粘膜上皮細胞層にも抗原の取り込み能を有するM細胞が存在するかどうか検討した。
研究方法
ケモカインCCL19及びCCL21欠損マウスである pltマウスおよび野生型マウスにオバルブミン(OVA)をアジュバントとともに1週間毎に3回腹腔内投与し、最後の免疫の1週間後から2週間毎日OVAを経鼻投与した。また、ケモカイン CCL19/CCL21のアレルギー性鼻炎発症における役割について調べるため、pltマウスにCCL19およびCCL21をコードするプラスミドDNAを経鼻投与し、アレルギー症状、OVA特異的IgE産生応答、Treg細胞数、樹状細胞数への変化を評価した。また、鼻粘膜にM細胞が存在するかについて、抗原の取り込み能についても調べた。
結果と考察
結果:pltマウスはコントロール野生型マウスと比較して アレルギー症状が重篤であった。pltマウスにCCL19およびCCL21をコードするプラスミドDNAを経鼻投与するとミエロイド系樹状細胞数が減少し、OVA特異的IgE産生が抑制されてアレルギー症状が抑えられた。一方、鼻粘膜上皮層にM細胞の特徴を有する細胞が発見され、抗原取り込み能も確認された。
考察:リンパ球系ケモカインCCL19およびCCL21は、NALTおよび顎下リンパ節において、Th2型応答を誘導するCD8-CD11b+ミエロイド系樹状細胞の数を制御することによってTh2型の応答を抑制し、上気道におけるアレルギー応答の抑制維持に関与していることが示された。さらに、鼻粘膜M細胞の気道系アレルギー発症への関与の可能性が示唆された。
考察:リンパ球系ケモカインCCL19およびCCL21は、NALTおよび顎下リンパ節において、Th2型応答を誘導するCD8-CD11b+ミエロイド系樹状細胞の数を制御することによってTh2型の応答を抑制し、上気道におけるアレルギー応答の抑制維持に関与していることが示された。さらに、鼻粘膜M細胞の気道系アレルギー発症への関与の可能性が示唆された。
結論
本研究より、CCL19およびCCL21は、気道系アレルギーの制御において制御性ケモカインとして働いていることが示され、これらケモカインを用いた樹状細胞の遊走制御がアレルギー性鼻炎治療の新しい戦略となり得ることが示された。またNALT および鼻粘膜のM細胞によるタンパク質抗原の取り込み能についての詳細な解析が、それを利用したワクチン開発にも重要である。
公開日・更新日
公開日
2009-06-05
更新日
-