バリア機能障害によるアトピー性疾患病態解明に関する研究

文献情報

文献番号
200832013A
報告書区分
総括
研究課題名
バリア機能障害によるアトピー性疾患病態解明に関する研究
課題番号
H19-免疫・一般-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
天谷 雅行(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 古瀬 幹夫(神戸大学大学院 医学系研究科)
  • 工藤 純(慶應義塾大学 医学部)
  • 加藤 則人(京都府立医科大学 医学部)
  • 椛島 健治(京都大学大学院 医学研究科)
  • 浅野 浩一郎(慶應義塾大学 医学部)
  • 海老原 全(慶應義塾大学 医学部)
  • 久保 亮治(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
34,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究では、皮膚バリア機能障害による慢性抗原刺激が、アトピー性皮膚炎、気管支喘息発症の根本的原因であるという新しい仮説のもとに、新規モデルマウスを用いた免疫学的基礎的検討と、患者遺伝子解析および特定地域の疫学的調査による臨床的検討を総合的に行い、未解決であるアトピー性疾患の発症機序を解明する。
研究方法
 マウスを用いた解析では、アトピー性皮膚炎患者で欠損が認められる皮膚バリア機能蛋白であるフィラグリンを欠失させたノックアウトマウスを作出する。flaky tail(ft)マウスのフィラグリン遺伝子変異を同定する。さらに、皮膚バリア機構の破綻と気管支喘息の発症の関係を検討する。ヒトにおける解析では、日本人特有の遺伝子変異を効率よく検出できる簡便法を構築し、日本人データの蓄積を行う。さらに、バリア機能低下とアレルギー性疾患発症の疫学的解析を行う。
結果と考察
 フィラグリン遺伝子をターゲットしたハイブリッドES細胞をマウス胚に注入し、キメラマウスを作製した。変異ホモマウスは、蛋白レベルでのプロフィラグリン・フィラグリンを完全に消失していることが確認された。
 ftマウスのフィラグリン遺伝子解析により、6番目のFlgリピートに5303delAが存在することを明らかにした。
 C57BL/6およびBalb/cとも3回の経皮感作によって血清中のOVA特異的IgG1値の上昇、OVA暴露後の気道好酸球数の増加・気道上皮の杯細胞化生をきたした。
 日本人アトピー性皮膚炎患者129名におけるフィラグリン遺伝子解析を行った。フィラグリン遺伝子変異を有する患者は計12名で、患者全体の9%であった。

結論
 本年度は、モデルマウスの作成、解析に大きな進展が見られた。本抄録作成時点(平成21年3月)において、他の施設からの報告はなく、世界で初めてフィラグリンノックアウトマウスの作成に成功したことになる。同マウスは、フィラグリンの蛋白発現を完全に欠失しており、フィラグリンの角層バリアにおける機能解析が初めて可能となる。また、フィラグリン蛋白の減少が知られているflaky tail(ft)マウスのフィラグリン遺伝子の解析にも、世界で初めて成功した。
 皮膚バリアのメカニズムを解明するとともに、皮膚のバリア機能障害による種々の抗原に対する経皮的感作、慢性的刺激が、アトピー性皮膚炎、さらに喘息の根本的原因であるという概念の確立にむけて着実に成果を積み重ねている。

公開日・更新日

公開日
2009-06-05
更新日
-