薬局ヒヤリハット事例に対する安全管理対策評価に関するAI開発

文献情報

文献番号
202103006A
報告書区分
総括
研究課題名
薬局ヒヤリハット事例に対する安全管理対策評価に関するAI開発
課題番号
20AC1005
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
岡本 里香(京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻 ビッグデータ医科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 中津井 雅彦(山口大学 大学院医学系研究科)
  • 小島 諒介(京都大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
14,591,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下,PMDA)では,公益財団法人日本医療機能評価機構が薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業(以下,本事業)に基づき収集・分析・公表した「ヒヤリ・ハット事例」に対し,医薬品の名称・包装等の観点から安全対策を講じる必要がないかを人による目で,評価1~5に分類することにより,安全対策の必要な事例を選定している.近年,評価機構の公表事例は約10万近い数におよび,PMDAでの人による評価分類の負担が増加していることを踏まえ,本研究では,この評価分類を人工知能が行えるようにすることを目的とし,PMDAでの評価分類の負担を軽減し,また事例数が増加している中でも,一貫性のある評価を行えるようにすることを目指す.
研究方法
2021年度は,これまでに作成した評価分類モデルが新様式データに対して再現できるかを検討した.さらに,精度向上等に向けた検討として,以下の(1),(2)の学習データについて追加検討を実施した.
(1)T辞書:商用利用の観点で,KEGGから有限会社ティ辞書企画が販売する医薬品情報データに関する辞書の変更
(2)ハイリスク薬情報:「特定薬剤管理指導加算等の算定対象となる薬剤一覧」にある薬剤
結果と考察
新様式データに対するno-step法と2step法の比較検討(AUC)では, no-step法で精度向上が認められ,実務上許容できるrecallを参考にno-step法か2step法かを選択する必要がある.次に,KEGGとT辞書の比較では,T辞書に含まれる同義語を特徴量として含めた場合に最も高いAUCが得られた.また,KEGGとT辞書での分類事例数比較では,KEGGとT辞書利用でラベル1,2の分類数は,KEGGが95事例に対し,T辞書では99事例であり,T辞書を利用することによりラベル1,2への分類精度が高まった.差異を示した4事例は,KEGGにはない,T辞書に含まれている同義語が名称変更前後の販売名に関する取違え事例の分類に寄与していた.しかし,T辞書をした場合でも,誤分類事例が49事例あり,内容はAIではカバーできない要因による誤分類事例であった.
以上,新様式データでは,様式変更に伴い,結果的に評価4及び5がほとんど含まれておらず,no-step法か2-step法のいずれも,分類スキームとして実施している内容に変わりがなく,むしろno-step法でAUCが向上する結果が得られた.実用化に向けては,実務上許容できるrecallを参考にno-step法か2step法かを選択する必要があるが,これまでに検討した評価分類モデルが新様式データにも適用可能であることが示された.
またハイリスク薬の特徴量として,これまで劇薬情報に注目していたが,「特定薬剤管理指導加算等の算定対象となる薬剤一覧」の薬剤を特徴化することにより,分類精度が向上することが確認できた.更に,T辞書の利用はKEGGの代用として問題なく,特にT辞書に含まれる同義語は,これまでの学習データで欠如していた「名称変更前後の販売名」に寄与することから,KEGGよりも有用であることが示された.
一方で,AIではカバーできない要因による誤分類が存在することから,ラベル1,2とする取り違いペアを事前に定義し一部はルールベースによる判断を組み入れるなどの運用上の工夫が必要であると考えられた.
結論
昨年度までに検討してきた評価分類モデルが新様式データに対しても適用可能であることが示された.旧様式では,報告様式上,フリーテキスト記述があったことから,テキスト情報に対する特徴量化,分類スキーム,サンプリング方法などの検討を行ってきたが,新様式のチェックボックス化に伴う簡略化されたデータに対しても,評価分類モデルはこれまでの精度を落とすことなく分類することができた.むしろ,旧様式データに対して,分類の取りこぼしを避けるための手法として採択した分類スキームの2-step法よりも,より簡易なno-step法が新様式データに対して効果があったことは,よりシンプルなアルゴリズムを使用できる点で医療安全評価のAIを使用する側での安心感に繋がると考える.また,PMDAでの実装化を考慮して,KEGGからT辞書への利用変更を検討した結果,評価分類モデルの精度向上に繋がったことは非常に興味深い.一方で,AIではカバーできない要因による誤分類が存在することから,PMDAでの運用では1次スクリーニングという位置づけで評価分類モデルを運用することに加え,特徴量の追加・調整や閾値の調整などでAI機能に対する精度向上も目指しつつ, AIではカバーできない誤分類に対しルールベースの分類を組み合わせるなど, 最終年度では実運用に向けたアルゴリズム全体の検討を進める必要があると考える.

公開日・更新日

公開日
2022-06-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202103006Z