医療安全の確保に向けた手術動画の記録および解析におけるAI活用の有用性の実証

文献情報

文献番号
202103005A
報告書区分
総括
研究課題名
医療安全の確保に向けた手術動画の記録および解析におけるAI活用の有用性の実証
課題番号
20AC1004
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
梶田 大樹(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 英雄(慶應義塾大学 理工学部情報工学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
15,384,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
厚生労働行政の課題として、安全・安心な医療の提供が挙げられる。手術に関しては、第三者の事後検証が実施できるように、術中の映像を残し、調査の対象に含められることが望ましい。特に医療安全の確保を目的に、常に発生しうる医療事故に備える場合、手術の全件録画・全録画が望ましいとされるが、実際の現場には多くの課題がある。
 ICTインフラの面では、内視鏡や顕微鏡が使用されない限り、手術動画の録画・保存のために必要かつ利便性の高い機器は開発されていないという問題がある。特に、開腹手術に限らず、外科医が直視下に行う手術(open surgery)においては、手術室のスタッフがわざわざカメラを細かく調整する必要があるうえ、術中にはカメラと術野の間に外科医の頭や体が入り込むため、術野の撮影は困難であり、全録画など不可能であった。
 本研究の研究代表者・研究分担者らは、この課題を解決するために、AMED 事業を通じて「マルチカメラ搭載型無影灯」を開発し、スタッフが撮影を意識せずとも、open surgeryの全録画が可能であることを実証した。
 本研究の目的は、マルチカメラ搭載型無影灯によるAIを活用した手術の全自動録画(手術全録画AI)およびAIによる手術映像の解析が、医療の質や安全の向上に有用であるとするエビデンスを確立することである。
研究方法
令和3年度には、手術全録画AIの有用性の実証研究、手術映像データ収集、手術映像解析AIの開発研究に取り組んだ。手術全録画AIの有用性の実証研究については、実際の整形外科手術での検証を行った。手術映像解析AIについては、術具の識別AIを開発・評価するためのデータセットと、術野の被注視領域・被注視点予測AIを用いた術野の自動拡大視聴支援システムを開発した。
結果と考察
 実際の整形外科手術での検証における5視点の映像について、カメラが1台の場合の捕捉率の平均は79.5%、2件の手術における最低値(5視点のうち最も術野が映らなかったカメラ)はそれぞれ70.6%, 51.2%であった。一方、手術全録画AIによる切替映像では、2手術の平均で96.4%であり、手術全録画AIの有用性が示された。
 手術映像データ収集について、令和3年4月から令和4年3月までに72件のopen surgeryの動画撮影を実施し、令和2年度以前の手術も含め、動画を研究に利用可能な手術の総数を142件(うち83件でマルチカメラを使用、65件でメガネ型アイトラッカーを使用)をとした。これらのデータをもとに、術具の識別AIを開発することを目指し、15の手術動画から得た19,000の画像について、31種類の術具を矩形で囲うアノテーションを施したデータセットを作成した。これは手術動画の術具検出に関するデータセットとしては世界的にも最大規模のものである。またopen surgeryを対象としたデータセットは非常に貴重であり、今後のAI開発を大きく加速させることが期待される。
 術野の被注視領域・被注視点予測AIを用いた術野の自動拡大視聴支援システムについては、外科医に自動要約の有無と、自動拡大(アイトラッカーの計測点およびAIの推定領域のいずれかに向かう拡大)の有無で動画を比較してもらったところ、手術場面の視認性、術野の視認性、外科手技の視認性、再生速度の適切さ、術野の映る大きさ、動画視聴の効率性の項目において、AIによる自動拡大・自動要約が施された動画が最も優れた評価を得た。手術動画を振り返る際、長時間に渡る動画の中から視聴者が所望する場面をすぐに見つけ出すことは困難であるが、手術映像解析AIの支援によって、業務の効率化がなされる可能性を示すことができた。
結論
 本研究を通じて手術全録画AIの有用性が確立すれば、手術動画の記録が奨励され、医療事故の客観的な検証が促される。また本研究で開発される手術映像解析AIによって、手術の進捗がリアルタイムに監視されれば、リスクの早期発見にもつながる。本研究では引き続き、これら2つのAIの有用性を示すことによって、安全・安心な医療の実現を目指す。

公開日・更新日

公開日
2022-06-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202103005Z