アレルギー疾患の自己管理と個別化医療を目指した早期診断基準と早期治療法の確立及びその有効性と有害事象の評価に関する研究

文献情報

文献番号
200832009A
報告書区分
総括
研究課題名
アレルギー疾患の自己管理と個別化医療を目指した早期診断基準と早期治療法の確立及びその有効性と有害事象の評価に関する研究
課題番号
H18-免疫・一般-009
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
大田 健(帝京大学医学部 内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 秋山一男(独)国立病院機構相模原病院臨床研究センター)
  • 足立 満(昭和大学医学部第一内科)
  • 棟方 充(福島県立医科大学呼吸器内科学講座)
  • 森川昭廣(希望の家療育病院附属北関東アレルギー研究所)
  • 近藤直実(岐阜大学医学部小児病態学)
  • 眞弓光文(福井大学医学部小児科学)
  • 岡本美孝(千葉大学大学院医学系研究科耳鼻咽喉科学)
  • 池澤善郎(横浜市立大学医学部皮膚科学、大学院医科学研究科環境免疫病態皮膚科学)
  • 海老澤元宏(独)国立病院機構相模原病院臨床研究センター・アレルギー性疾患研究部)
  • 山口正雄(東京大学医学部附属病院アレルギー・リウマチ内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
46,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アレルギー疾患では、アレルゲンの同定と回避が、薬物療法とともに治療において重要である。また医師と患者との連携、患者個々のアレルゲンおよび重症度に応じた個別の治療戦略と自己管理が治療の成功の鍵となる。本研究では、各疾患の早期診断と早期治療を目指して、診断基準、重症度の判定基準、そして重症度に合わせた早期治療の指針を作成する。また喘息を主たる対象疾患として、喘息死ゼロ作戦を実行するための指針を作成し、ガイドラインに沿った喘息の診療が現実の医療に即して実行される方策の確立を目指し、喘息死がゼロに近づくための治療戦略を本研究の課題全体を通じて提言することを目指す。
研究方法
3年間の集大成として、「アレルギー疾患の早期診断、早期治療のための診療指針」に基づく喘息治療を実行かつ検証して、完成度をさらに高めた。また、「病診連携の実行指針」を作成し、「喘息死ゼロ作戦の実行に関する指針」に沿った作戦の遂行が推進されることを目指した。以上のような指針の作成と実行を通じて、JGL2006に沿った喘息の診療が現実の医療現場で実行されることを目指した。
結果と考察
アレルギー疾患の早期診断、早期治療のための診療指針を改訂した。成人喘息の早期診断基準では、呼気一酸化窒素の上昇(≧40ppb)と自覚症状 (反復する咳嗽or 喘鳴or 呼吸困難)とを組み合わせることで早期診断指標となることが示唆された。小児気管支喘息では、とくに乳児喘息で、全身ステロイド投与による症状改善効果が診断精度を上げることが明らかとなった。成人喘息では、平滑筋層とヒスタミンによる気道過敏性が負の相関を示し、吸入ステロイドの早期介入が気道リモデリングの改善を示唆した。食物等アレルギーでは、即時型を呈していない乳児期に湿疹で発症した症例は、皮膚病変への適切な対応と早期の原因抗原の除去で早期に寛解導入できることが示唆された。喘息死ゼロ作戦の成果の現れとして、喘息死の経年的な減少(2005年3198名から2007年2540名)を認めた。
結論
「アレルギー疾患の早期診断、早期治療のための診療指針」、EAP、ACT、「喘息日記」、「ぜん息カード」などの資材の選定や作成、「病診連携の実行指針」、そして「喘息死ゼロ作戦の実行に関する指針」を完成した。喘息死は経年的に減少しており、本研究が実地医療の改善に少なからず寄与していることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2009-06-05
更新日
-

文献情報

文献番号
200832009B
報告書区分
総合
研究課題名
アレルギー疾患の自己管理と個別化医療を目指した早期診断基準と早期治療法の確立及びその有効性と有害事象の評価に関する研究
課題番号
H18-免疫・一般-009
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
大田 健(帝京大学医学部 内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 秋山一男(独)国立病院機構相模原病院臨床研究センター)
  • 足立 満(昭和大学医学部第一内科)
  • 棟方 充(福島県立医科大学呼吸器内科学講座)
  • 森川昭廣(希望の家療育病院附属北関東アレルギー研究所)
  • 近藤直実(岐阜大学医学部小児病態学)
  • 眞弓光文(福井大学医学部小児科学)
  • 岡本美孝(千葉大学大学院医学系研究科耳鼻咽喉科学)
  • 池澤善郎(横浜市立大学医学部皮膚科学、大学院医科学研究科環境免疫病態皮膚科学)
  • 海老澤元宏(独)国立病院機構相模原病院臨床研究センター・アレルギー性疾患研究部)
  • 山口正雄(東京大学医学部附属病院アレルギー・リウマチ内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アレルギー疾患では、アレルゲンの同定と回避が、薬物療法とともに治療において重要である。また医師と患者との連携、患者個々のアレルゲンおよび重症度に応じた個別の治療戦略と自己管理が治療の成功の鍵となる。本研究では、各疾患の早期診断と早期治療を目指して、診断基準、重症度の判定基準、そして重症度に合わせた早期治療の指針を作成する。また喘息を主たる対象疾患として、喘息死ゼロ作戦を実行するための指針を作成し、ガイドラインに沿った喘息の診療が現実の医療に即して実行される方策の確立を目指し、喘息死がゼロに近づくための治療戦略を本研究の課題全体を通じて提言することを目指す。
研究方法
まず「アレルギー疾患の早期診断、早期治療のための診療指針」を作成し、より良い指針を完成するために必要な問題点を明らかにした。非専門医にも利用できる実用的で簡便な問診票としては、EAPの日本語版を基に我が国の「喘息予防・管理ガイドライン2006 (JGL2006)」の内容を加味したものを作成し、患者自身でチェックできる質問票としては、ACTの日本語版を採用した。喘息では、咳喘息を含む喘息の早期診断におけるFeNOの意義付け、早期診断後の早期治療法の臨床的検証、小児喘息の重症度評価の問診票の作成とFeNOによる重症度評価の意義を検討した。最終年度は、「アレルギー疾患の早期診断、早期治療のための診療指針」に基づく喘息治療を実行かつ検証して完成し、「病診連携の実行指針」を作成し、「喘息死ゼロ作戦の実行に関する指針」に沿った作戦の遂行が推進されることを目指した。
結果と考察
「アレルギー疾患の早期診断、早期治療のための診療指針」、EAP、ACT、「喘息日記」、「ぜん息カード」などの資材の選定や作成、「病診連携の実行指針」、そして「喘息死ゼロ作戦の実行に関する指針」を完成した。その成果の現れは、喘息死の経年的な減少であり、2005年(平成17年)に3198名であったのが、2006年2778名、2007年2540名と減少していることである。
結論
喘息死は経年的に減少しており、本研究が実地医療の改善に少なからず寄与していることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2009-06-05
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200832009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
呼気NOは咳喘息や軽症気管支喘息患者でも有意に上昇し、喘息早期診断において有用な指標となることが示唆された。気道リモデリングの指標として気道過敏性(ヒスタミン)が有効であることが示された。成人喘息では、吸入ステロイドによる早期介入により気道過敏性が有意に改善し、気道リモデリングの改善にもつながることが示唆された。基礎研究で、テープによりダニ抗原の定量を可能にしたことは大きな成果であり、環境整備の治療効果への寄与の程度をさらに明らかにするものと期待される。
臨床的観点からの成果
「自覚症状(反復する咳嗽or喘鳴or呼吸困難)」+「呼気NO≧40ppb」+「他疾患の除外」という気管支喘息早期診断基準の有用性が示唆された。乳児喘息では、発作頻度より全身性ステロイド投与を要する様な発作をおこしたか否かが重要と考えられた。喘息死ゼロ作戦の実行を目指して、病診連携の確立、JGL2006に沿った喘息治療の啓発活動とその実行に必要な資材の配布などを積極的に行なった。喘息死は経年的に減少し、本研究が実地医療の改善に寄与していることが示唆された。
ガイドライン等の開発
「アレルギー疾患の早期診断、早期治療のための診療指針」、「気管支喘息診療のための病診連携の実行指針」、そして「喘息死ゼロ作戦の実行に関する指針」を作成した。またJGL2006に沿って改変したEAP(Easy Asthma Program)、成人用ACT(Asthma Control Test)とそれを参考にした小児用ACT(C-ACT)、ACT点数が記載できる「喘息日記」、患者が携行する「ぜん息カード」などの資材の選定や作成も行った。
その他行政的観点からの成果
「アレルギー疾患の早期診断、早期治療のための診療指針」、「気管支喘息診療のための病診連携の実行指針」、「喘息死ゼロ作戦の実行に関する指針」は、診療内容や医療体制の改善に今後寄与することが期待される。ゼロ作戦の実行に関する指針は、作戦を具体化し、班研究としてその内容に沿った喘息の診療を実行して、2005年(平成17年)に3198名であったのが、2007年2540名と喘息死が順調に減少しているという事実から評価することができた。本研究を通じて、行政と医療現場との連携の具体的事例を示すことができた。
その他のインパクト
喘息死ゼロ作戦は、日本内科学会、日本呼吸器学会、日本アレルギー学会をはじめとする学術大会でシンポジウムや教育講演として発表の機会を得た。また各地域の医師会が主催する多くの講演会で発表する機会があった。啓発活動の一環ともとらえ、ゼロ作戦への参加を促し、作戦に必要な資材を提供する機会ができた。また、新聞や医学雑誌でも一部取り上げられ、取材を受けて記事として掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
81件
秋山一男, 大田 健:喘息コントロールテストの有用性 喘息患者を対象としたインターネット調査による. 医薬ジャーナル42(8):2144-2153,2006 他
原著論文(英文等)
62件
その他論文(和文)
83件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
176件
学会発表(国際学会等)
32件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
2007-250023・谷口克((独)理化学研究所)、堀口茂俊((国)千葉大学)、岡本美孝(同)、中山俊憲(同)・「頭頸部癌の治療に用いる、腫瘍栄養動脈に投与される抗癌細胞組成物の使用」
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Adachi T, Hanaka S, Masuda T et al.
Transduction of phosphatase and tensin homolog deleted on chromosome 10 into eosinophils attenuates survival, chemotaxis, and airway inflammation.
J Immunol. , 179 (12) , 8105-8111  (2007)
原著論文2
Suzukawa M, Komiya A, Yoshimura-Uchiyama C et al.
IgE- and FcεpsilonRI-mediated enhancement of surface CD69 expression in basophils: role of low-level stimulation.
Int Arch Allergy Immunol. , 143 (1) , 56-59  (2007)
原著論文3
Suzukawa M, Komiya A, Koketsu R et al.
Three cases of ortho-phthalaldehyde-induced anaphylaxis after laryngoscopy: detection of specific IgE in serum
Allergol Int. , 56 (3) , 313-316  (2007)
原著論文4
Bai CY, Matsui E, Ohnishi H et al.
A novel polymorphism, E254K, in the 5-lipoxygenase gene associated with bronchial asthma.
International Journal of Molecular Medicine , 21 , 139-144  (2007)
原著論文5
釣木澤尚実, 秋山一男
小児喘息の成人へのキャリーオーバーの予防
小児科 , 48 (1) , 25-35  (2007)
原著論文6
横江琢也, 美濃口健治, 小田成人, 他
難治性喘息患者の急性増悪に関する危険因子の検討
アレルギー , 56 (3) , 337-  (2007)
原著論文7
Suzukawa M, Koketsu R, Iikura M et al.
Interleukin-33 enhances adhesion, CD11b expression
Lab Invest. , 88 (11) , 1245-1253  (2008)
原著論文8
Suzukawa M, Iikura M, Koketsu R et al.
An IL-1 cytokine member, IL-33, induces human basophil activation via its ST2 receptor.
J Immunol. , 181 (9) , 5981-5989  (2008)
原著論文9
Tsurikisawa N, Tsuburai T, Akiyama K et al.
Prognosis of adult asthma after normalization of bronchial hyper-responsiveness by inhaled corticosteroid therapy
J Asthma. , 45 , 445-451  (2008)
原著論文10
近藤直実,平山耕一郎,松井永子,他
小児気管支喘息患児と親又は保護者のQOL調査票簡易改訂版2008(GIFU).
アレルギー , 57 (8) , 1022-1033  (2008)
原著論文11
足立満, 大田 健, 森川昭廣, 他
本邦における喘息のコントロールと管理の変化 2000年度と2005年度の喘息患者実態電話調査(AIRJ)より.
アレルギー , 57 (2) , 107-120  (2008)
原著論文12
Yamaguchi M, Koketsu R, Suzukawa M et al.
Human basophils and cytokines/chemokines
Allergol Int. , 58 (1) , 1-10  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-