文献情報
文献番号
202102005A
報告書区分
総括
研究課題名
国際生活機能分類ICFを用いた医療と介護を包括する評価方法の確立とAIを利用したビッグデータ解析体制の構築
課題番号
20AB1002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
木村 浩彰(広島大学病院 リハビリテーション科)
研究分担者(所属機関)
- 塩田 繁人(広島大学病院 診療支援部リハビリテーション部門)
- 木原 康樹(広島大学大学院 医系科学研究科)
- 日髙 貴之(県立広島病院 循環器内科)
- 北川 知郎(広島大学病院 循環器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,480,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
心疾患と脳血管障害を合わせた循環器病は我が国の死亡原因の第2位,介護が必要となった原因の第1位であり,医療費は年間6兆782億円と最多である.『高齢心不全患者の治療に関するステートメント』では,ICFを用いた包括的な生活機能の評価が推奨されており,臨床で利活用できるICFに基づく評価手法の確立は喫緊の課題である.
令和2年度事業において,我々は心不全高齢者の医療と介護に共通したICF43項目(心身機能17項目,身体構造1項目,活動と参加19項目,環境因子6項目)を選定した .また,ICF Linking Rulesに関するシステマティックレビューにより,ICF項目とリンクした既存の評価バッテリーを用いたスコアリング手法を開発した.さらに,心不全高齢者のICF43項目について,医療と介護で用いることができる簡便な評価手法について作成し,多職種からなるエキスパートパネルを構築し,RAND/UCLA Appropriateness methodを用いて評価手法の適切性を検証した.これらの先行研究の成果物として,「心不全高齢者のICF評価マニュアル」を開発した.
本年度は,心不全高齢者のICF評価手法の妥当性の検証とICF評価による予後予測システムを確立することを目的に,多施設間前向きコホート研究を開始した.現在,患者登録およびフォローアップデータの収集を継続しているが,途中経過を報告する.
令和2年度事業において,我々は心不全高齢者の医療と介護に共通したICF43項目(心身機能17項目,身体構造1項目,活動と参加19項目,環境因子6項目)を選定した .また,ICF Linking Rulesに関するシステマティックレビューにより,ICF項目とリンクした既存の評価バッテリーを用いたスコアリング手法を開発した.さらに,心不全高齢者のICF43項目について,医療と介護で用いることができる簡便な評価手法について作成し,多職種からなるエキスパートパネルを構築し,RAND/UCLA Appropriateness methodを用いて評価手法の適切性を検証した.これらの先行研究の成果物として,「心不全高齢者のICF評価マニュアル」を開発した.
本年度は,心不全高齢者のICF評価手法の妥当性の検証とICF評価による予後予測システムを確立することを目的に,多施設間前向きコホート研究を開始した.現在,患者登録およびフォローアップデータの収集を継続しているが,途中経過を報告する.
研究方法
研究デザイン:前向きコホート研究.対象:75歳以上の症候性心不全患者.セッティング:広島大学病院,県立広島病院,三次地区医療センター,広島共立病院,アマノリハビリテーション病院の5医療機関に入院した患者のうち,自宅退院した者.
調査期間:2021年10月1日~2022年9月30日の間に退院した患者を研究対象者として登録.退院時と退院3か月後,退院1年後の3点で評価を実施する.
調査項目:心不全高齢者のICF43項目,心不全治療内容,社会保障費,要介護度,健康関連QOL,再入院・死亡の有無.
(倫理面への配慮)
広島大学疫学研究倫理審査委員会の承認を得た(承認番号:E- 2580).また,臨床試験の実施に際し,UMIN登録を行った(UMIN000045315).
調査期間:2021年10月1日~2022年9月30日の間に退院した患者を研究対象者として登録.退院時と退院3か月後,退院1年後の3点で評価を実施する.
調査項目:心不全高齢者のICF43項目,心不全治療内容,社会保障費,要介護度,健康関連QOL,再入院・死亡の有無.
(倫理面への配慮)
広島大学疫学研究倫理審査委員会の承認を得た(承認番号:E- 2580).また,臨床試験の実施に際し,UMIN登録を行った(UMIN000045315).
結果と考察
2022年4月末時点では登録患者数は35例,データ入力は30例(退院時24例,退院3ヶ月後6例)の患者登録および30例のデータ入力が完了した.登録事例のうち,退院時データ24例の解析結果を以下に示す.
心不全の分類は,HFrEF:3例(12.5%),HFmrEF:3例(12.5%),HFpEF18例(75.0%).NYHA分類はclass 1:5例(20.8%),class 2:16例(66.7%),class 3:2例(8.3%),class 4:1例(4.2%)要介護度はなし:12例(50.0%),要支援1:4例(16.7%),要支援2:1例(4.2%),要介護1:3例(12.5%),要介護2:1例(4.2%),要介護3:2例(8.3%),要介護5:1例(4.2%)と軽度者が多かった.利用している介護サービス(重複あり)は訪問リハ:5例(20.8%),訪問看護:4例(16.7%),通所介護:5例(20.8%),訪問介護:3例(12.5%),通所リハ:2例(8.3%),福祉用具レンタル:4例(16.7%)であった.心不全治療については,カテコラミン(入院中):4例 (16.7%),βブロッカー:19例 (79.2%),ACE/ARB:9例 (37.5%),利尿薬:20例 (83.3%),MRA:7例 (29.2%),ARNI:8例(33.3%),SGLT2:6例 25.0%)であった.健康関連QOLについては,Euro QOL 5D-5Lの効用値は0.768±0.229,退院時にICFを用いた情報提供を実施した患者は9例(37.5%)であった.退院後に外来心臓リハビリテーションを利用した患者は1例(4.2%)であった.
心不全の分類は,HFrEF:3例(12.5%),HFmrEF:3例(12.5%),HFpEF18例(75.0%).NYHA分類はclass 1:5例(20.8%),class 2:16例(66.7%),class 3:2例(8.3%),class 4:1例(4.2%)要介護度はなし:12例(50.0%),要支援1:4例(16.7%),要支援2:1例(4.2%),要介護1:3例(12.5%),要介護2:1例(4.2%),要介護3:2例(8.3%),要介護5:1例(4.2%)と軽度者が多かった.利用している介護サービス(重複あり)は訪問リハ:5例(20.8%),訪問看護:4例(16.7%),通所介護:5例(20.8%),訪問介護:3例(12.5%),通所リハ:2例(8.3%),福祉用具レンタル:4例(16.7%)であった.心不全治療については,カテコラミン(入院中):4例 (16.7%),βブロッカー:19例 (79.2%),ACE/ARB:9例 (37.5%),利尿薬:20例 (83.3%),MRA:7例 (29.2%),ARNI:8例(33.3%),SGLT2:6例 25.0%)であった.健康関連QOLについては,Euro QOL 5D-5Lの効用値は0.768±0.229,退院時にICFを用いた情報提供を実施した患者は9例(37.5%)であった.退院後に外来心臓リハビリテーションを利用した患者は1例(4.2%)であった.
結論
令和3年度事業では,心不全高齢者のICF評価マニュアルに基づいたデータベースを開発し,5医療機関が協働して多施設間前向きコホート試験を開始した.今後は患者登録を継続するとともに,フォローアップデータの収集,AIを搭載し予後予測システムを構築する予定である.
公開日・更新日
公開日
2024-06-06
更新日
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