文献情報
文献番号
202102004A
報告書区分
総括
研究課題名
人口の健康・疾病構造の変化にともなう複合死因の分析手法の開発とその妥当性の評価のための研究
課題番号
20AB1001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
別府 志海(国立社会保障・人口問題研究所 情報調査分析部)
研究分担者(所属機関)
- 林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所)
- 石井 太(慶應義塾大学経済学部)
- 篠原 恵美子(山田 恵美子)(東京大学大学院 医学系研究科 医療AI開発学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、原死因を決定する以前の死亡診断書データ(死亡個票データ)を用い、そこに記載されている各死因を用いた分析手法を探るとともに、分析結果の妥当性について評価し、長寿化を進展する要因を複合死因の視点から分析を試みるものである。これらの結果は健康・疾病構造の変化にともなった医療・介護・福祉への効果的な介入方法の検討に資する基礎資料となる。
研究方法
統計法に基づき人口動態統計の死亡票および死亡個票(死亡診断書に記載された各死因などの死亡情報)について二次利用申請を行い、利用可能な全期間にあたる2003~2020年分の提供を受けた。しかし死亡個票データはテキストデータかつデータのクリーニング等がされていないため、死因データはICD-10対応標準病名マスターで定義されている病名交換用コードおよびICD-10コードに、また死因別の期間欄は日数に変換する。
その上で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、死亡診断書での記載欄、他の死因、死亡までの期間について分析を試みる。
複合死因に関する分析方法等については複合死因研究の国際ネットワーク(MultiCause network)に研究が蓄積されている。その中のEgidi(2018)はネットワーク分析の手法を適用して死因間の関連分析を行った先駆的な研究であり、これを適用して複合死因のネットワーク分析を行う。
また近年増加している老衰がどのような複合死因であるのか集計・分析する。
その上で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、死亡診断書での記載欄、他の死因、死亡までの期間について分析を試みる。
複合死因に関する分析方法等については複合死因研究の国際ネットワーク(MultiCause network)に研究が蓄積されている。その中のEgidi(2018)はネットワーク分析の手法を適用して死因間の関連分析を行った先駆的な研究であり、これを適用して複合死因のネットワーク分析を行う。
また近年増加している老衰がどのような複合死因であるのか集計・分析する。
結果と考察
死亡個票データのうち死亡の原因欄はICD-10対応標準病名マスターで定義されている病名交換用コードおよびICD-10コードに、期間欄は日数に変換する。現在では使用されなくなった病名も含まれるため、ICD-10対応標準病名マスターには過去のバージョンも統合し用いる。
死亡個票データの記述は、誤字脱字、変換ミスなど多くの修正を必要とする記述があるが、記述自体の質が向上することを期待することは難しく、自動的に修正できるルーチンを集積したデータベース構築を継続的に行う必要があると考えられる。
新型コロナウイルス感染症による死亡は、2020年ではほとんどが直接死因に記載されていた。その約半数はⅡ欄に何らかの疾病が記載されており、中でも糖尿病は同時に慢性腎不全や高血圧、慢性心不全などが併記されていることが多かった。COVID-19が記載されていた場合の平均日数は19.7日、Ⅰ欄アでは17.9日、30日以下が全体の92%を占めていた。
Egidi(2018) の方法と同様に、粗隣接行列を作成し、IPF法を用いて正規化を行った後、95%タイルよりも大きい関係だけを取り出してネットワーク構造を作成し、提案されている複数のアルゴリズムを適用して死因間の結びつきが強いコミュニティへの分類・比較を行った。
本研究で示したネットワーク分析は、関連死因間の分析手法の一例を提示したものであり、このような分析を深めることによって複合死因情報の利用促進が期待される。
死因簡単分類別の原死因別にみた平均複合死因数は、いずれも記載数が減ってきているが、老衰の平均複合死因数が一番少なく2020年に1.04であった。
死因簡単分類をもとに原死因と複合死因順位をみると、原死因で一番多いのは老衰、次いで心不全、肺炎であり、複合死因順位も同じであった。老衰の発症から死亡までの期間で一番多いのは1ヶ月であるが、記載する医師により老衰の捉え方が異なる。
記載されている死因が老衰しかなければ、本来の死因が隠されている可能性もあるが、他に書きようのない「真の」老衰死も確かに存在していると考えられる。真の老衰があることを示せるよう、また老衰死の状況を適切に死因統計で把握できるよう死亡診断書の記載方法を検討する必要があるのではないだろうか。
死亡個票データの記述は、誤字脱字、変換ミスなど多くの修正を必要とする記述があるが、記述自体の質が向上することを期待することは難しく、自動的に修正できるルーチンを集積したデータベース構築を継続的に行う必要があると考えられる。
新型コロナウイルス感染症による死亡は、2020年ではほとんどが直接死因に記載されていた。その約半数はⅡ欄に何らかの疾病が記載されており、中でも糖尿病は同時に慢性腎不全や高血圧、慢性心不全などが併記されていることが多かった。COVID-19が記載されていた場合の平均日数は19.7日、Ⅰ欄アでは17.9日、30日以下が全体の92%を占めていた。
Egidi(2018) の方法と同様に、粗隣接行列を作成し、IPF法を用いて正規化を行った後、95%タイルよりも大きい関係だけを取り出してネットワーク構造を作成し、提案されている複数のアルゴリズムを適用して死因間の結びつきが強いコミュニティへの分類・比較を行った。
本研究で示したネットワーク分析は、関連死因間の分析手法の一例を提示したものであり、このような分析を深めることによって複合死因情報の利用促進が期待される。
死因簡単分類別の原死因別にみた平均複合死因数は、いずれも記載数が減ってきているが、老衰の平均複合死因数が一番少なく2020年に1.04であった。
死因簡単分類をもとに原死因と複合死因順位をみると、原死因で一番多いのは老衰、次いで心不全、肺炎であり、複合死因順位も同じであった。老衰の発症から死亡までの期間で一番多いのは1ヶ月であるが、記載する医師により老衰の捉え方が異なる。
記載されている死因が老衰しかなければ、本来の死因が隠されている可能性もあるが、他に書きようのない「真の」老衰死も確かに存在していると考えられる。真の老衰があることを示せるよう、また老衰死の状況を適切に死因統計で把握できるよう死亡診断書の記載方法を検討する必要があるのではないだろうか。
結論
本研究は、死亡診断書に記載された死因間の関連を分析し、長寿化を進展する要因を死因構造から分析するものである。
原死因に限定しないで新型コロナに関する死亡の複合死因をみると、その多くがⅠ欄アへの記載であり、Ⅰ欄イ~エはほとんどが空欄、Ⅱ欄には6割程度の記載があった。
また、本研究で行ったわが国の複合死因データへのネットワーク分析適用からは、複合死因間の関係を分析する上でのネットワーク分析の有効性が明らかになったといえる。
死亡診断書に記載される死因数の減少は、老衰死亡が大きく増加していることが理由の一つである。死亡に至った病気を明らかにする、という現在の死因統計の在り方を見直す必要があると考えられる。
複合死因は原死因と異なり死因選択方法の変更による影響を受けない。複合死因研究は国際的にもまだ開発途上であり、本研究を進めることによって死亡診断書データのさらなる有効活用や人口動態統計の分析の高度化など、将来的な公的統計に関する企画・立案に貢献できるものと考える。
原死因に限定しないで新型コロナに関する死亡の複合死因をみると、その多くがⅠ欄アへの記載であり、Ⅰ欄イ~エはほとんどが空欄、Ⅱ欄には6割程度の記載があった。
また、本研究で行ったわが国の複合死因データへのネットワーク分析適用からは、複合死因間の関係を分析する上でのネットワーク分析の有効性が明らかになったといえる。
死亡診断書に記載される死因数の減少は、老衰死亡が大きく増加していることが理由の一つである。死亡に至った病気を明らかにする、という現在の死因統計の在り方を見直す必要があると考えられる。
複合死因は原死因と異なり死因選択方法の変更による影響を受けない。複合死因研究は国際的にもまだ開発途上であり、本研究を進めることによって死亡診断書データのさらなる有効活用や人口動態統計の分析の高度化など、将来的な公的統計に関する企画・立案に貢献できるものと考える。
公開日・更新日
公開日
2024-09-02
更新日
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