スギ花粉症およびダニアレルギーに対する新しい免疫療法の開発

文献情報

文献番号
200832006A
報告書区分
総括
研究課題名
スギ花粉症およびダニアレルギーに対する新しい免疫療法の開発
課題番号
H18-免疫・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
阪口 雅弘(麻布大学 獣医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 辻本 元(東京大学大学院 農学生命科学研究科)
  • 小埜 和久(広島大学大学院 先端物質科学研究科)
  • 高井 敏朗(順天堂大学大学院 医学研究科)
  • 内藤 誠之郎(国立感染症研究所 検定検査品質保証室)
  • 斎藤 三郎(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 岡本 美孝(千葉大学大学院 医学研究院)
  • 大久保 公裕(日本医科大学 医学部)
  • 中山 俊憲(千葉大学大学院 医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
スギ花粉症とダニを原因アレルゲンとした気管支喘息は重要なアレルギーである。本研究はこれらのアレルギーに対する新しい免疫療法を開発することを目的する。すなわち、組換体スギワクチン、プルランワクチン、乳酸菌・麹菌ワクチン、組換体ダニワクチン、経皮ワクチンの開発を行い、その有効性と安全性を検討する。また、ヒノキアレルゲンの必要性についても検討する。さらに、舌下減感作療法の治療に用いた臨床研究を行い、その有効性と機序の解析も行う。
研究方法
大腸菌から可溶性スギ花粉アレルゲンを発現させるためにシャペロンを共発現させることにより、組換え体Cry j 1を作製する。プルランを結合させた組み換えダニアレルゲンワクチンの安全性の検討を行った。組換え体Cry j 1の細胞内局在を探るべく、組換え乳酸菌破砕後の可溶性と不溶性画分におけるアレルゲンの存在を解析した。ダニアレルゲンのプロテアーゼ活性に変異を導入し活性を消失させた組換変異体を作製し、マウスにおけるアレルギーの治療効果を調べた。溶解性マイクロニードルアレイ(dMNA)を用いた経皮ワクチンを検討した。人におけるスギとヒノキアレルゲンのT細胞エピトープの解析を行った。花粉症患者に対して減感作抗原を舌下投与した二重盲検比較試験を行なった。また、マイクロアレイ解析も行なった。
結果と考察
減感作療法に応用可能な組換え体スギ花粉アレルゲンが開発され、今後、その安全性および薬効を検討する。ダニアレルギーに対する新規免疫療法として、プルラン結合Der f 2による免疫療法は安全で有効な治療法となり得る可能性がある。乳酸菌にて作製した組換え体Cry j 1の抗原性が低下しているおり、将来の減感作抗原としての有望と思われた。プロテアーゼ活性を消去したダニアレルゲン変異体が、予防的および治療的ワクチンとして機能する可能性を示した。dMNAはアレルギー免疫療法において従来の注射に代わる低侵襲のアレルゲン投与法として有望である。スギおよびヒノキ花粉アレルゲン特異的T細胞エピトープ部位の存在が明らかになった。二重盲検試験により、舌下療法の臨床症状に対する有効性が確認された。

結論
各ワクチンの進展の経過については差が認められるが、スギ花粉アレルゲンの組換え体の発現と生成に成功したことは今後のスギ花粉症の免疫療法の発展に大きく寄与すると考えられる。さらに舌下療法も二重盲検試験により、安全性と効果が確認できた。

公開日・更新日

公開日
2009-06-05
更新日
-

文献情報

文献番号
200832006B
報告書区分
総合
研究課題名
スギ花粉症およびダニアレルギーに対する新しい免疫療法の開発
課題番号
H18-免疫・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
阪口 雅弘(麻布大学 獣医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 辻本 元(東京大学大学院 農学生命科学研究科)
  • 小埜 和久(広島大学大学院 先端物質科学研究科)
  • 高井 敏朗(順天堂大学大学院 医学研究科)
  • 内藤誠之郎(国立感染症研究所 検定検査品質保証室)
  • 斎藤 三郎(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 岡本 美孝(千葉大学大学院医学研究院)
  • 大久保公裕(日本医科大学 医学部)
  • 中山 俊憲(千葉大学大学院医学研究院)
  • 安枝 浩(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究はスギ花粉症とダニアレルギーに対する新しい免疫療法を開発することを目的する。すなわち、CpG結合スギワクチン、DNAワクチン、プルランワクチン、乳酸菌・麹菌ワクチン、組換体ダニワクチン、経皮ワクチンの開発を行い、その有効性と安全性を検討する。また、ヒノキアレルゲンの必要性についても検討する。さらに舌下減感作療法の臨床研究を行い、有効性と機序の解析も行う。

研究方法
マウスとイヌにおいてCpG結合スギ花粉ワクチンの検討を行い、さらに組換え体スギアレルゲンの作製を行った。ダニアレルゲン遺伝子を組込んだDNAワクチンおよびプルランを結合させた組換えダニワクチンを作製し、マウスとイヌで安全性の検討を行った。スギ花粉アレルゲンを発現する乳酸菌株の作製を行いマウスでの抗アレルギー作用の効果を調べた。ダニアレルゲンのプロテアーゼ活性に変異を導入し活性を消失させた組換変異体を作製し、マウスにおけるアレルギーの予防・治療効果を調べた。溶解性マイクロニードルアレイ(dMNA)を用いた経皮ワクチンを検討した。人やマウスにおけるスギとヒノキアレルゲンのT細胞エピトープの解析を行った。花粉症患者に対して減感作抗原を舌下投与したオープン試験と二重盲検試験を行なった。
結果と考察
マウスやイヌにおけるCpGの反応性と安全性が高いことが判った。また、減感作療法に応用可能な組換え体スギ花粉アレルゲンが開発された。ダニアレルゲン遺伝子DNAワクチンおよびプルラン結合ダニワクチンを用いた治療法は、ダニアレルギーに対する免疫療法として有望であると考えられた。スギアレルゲンを発現する組換え乳酸菌の開発に成功し、マウスモデルに対する経口ワクチン作用を明らかにした。プロテアーゼ活性を消去したダニアレルゲン変異体が、予防・治療的ワクチンとして機能する可能性を示した。抗原を効率的に免疫するdMNAを用いた経皮免疫では、皮内注射に匹敵する効率で免疫応答が誘導された。ヒノキ花粉アレルゲンには,スギ花粉とは異なった特異的T細胞エピトープのペプチドが存在することが,花粉症患者およびマウスにおいて明らかになった。2つの臨床試験の結果から、舌下免疫療法の安全性と有効性が確認できた。
結論
各ワクチンの進展の経過については差が認められるが、スギ花粉アレルゲンの組換え体の発現と精製に成功したことは今後のスギ花粉症の免疫療法の発展に大きく寄与すると考えられる。さらに舌下療法もオープン試験と二重盲検試験により、安全性と効果が確認できた。

公開日・更新日

公開日
2009-06-05
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200832006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
減感作療法に応用可能な組換え体スギ花粉アレルゲンが作製され、これらの組換え体はアレルゲン性が減弱していることが判った。今後、この組換え体アレルゲンを用いた学術的な研究の発展が期待できる。舌下減感作療法による臨床試験において舌下減感作療法の作用機序の解析を行い、制御性T細胞の関与が示唆され、今後の舌下減感作療法の作用機序の研究が進むものと考えられる
臨床的観点からの成果
本研究において組換え体スギ花粉アレルゲンが開発され、今後、この組換え体アレルゲンを用いた減感作療法やCpGやプルラン結合ワクチンなどの安全性の高いワクチンの開発が行えるようになった。臨床試験において二重盲検試験により、スギ花粉症に対する舌下減感作療法の臨床症状に対する有効性と安全性が確認された。この結果により、今後、安全性で効果的な舌下療法が普及する可能性が期待できる。
ガイドライン等の開発
本研究においてはガイドライン等の開発は行わなかったが、これまで日本でほとんど行われていなかったスギ花粉症の舌下減感作療法を100例以上の症例において行った。これらの臨床試験の情報は今後、スギ花粉症の舌下減感作療法のガイドラインを作製するときの最も重要なデーターとなると考えられる。
その他行政的観点からの成果
スギアレルゲン組換え体ワクチンは花粉から精製される自然アレルゲンに比べ、大量に精製アレルゲンを供給することができ、また、それにより、安価なワクチン開発が可能になり、医療費の削減に寄与できる可能性がある。これまでスギ花粉症は薬による対症療法が主体であったが、舌下減感作療法の有効性と安全性が証明されたので、根治的療法である舌下減感作療法が普及し、医療費の削減に寄与できる可能性が期待できる。
その他のインパクト
今回、マスコミには取り上げられなかったが、今後、組換え体を用いたスギ花粉症に対するワクチン開発の進展や、舌下減感作療法の有効性と効果の評価について情報に関して、取材等があれば、積極的に対応したいと考えている。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
42件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
79件
学会発表(国際学会等)
11件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nakamura T, Hirasawa Y, Takai T,et al
Reduction of skin barrier function by proteolytic activity of a recombinant house dust mite allergen Der f 1
J Invest Dermatol , 126 , 2719-2723  (2006)
原著論文2
Kikuchi Y, Takai T, Ota M, et al
Application of immunoreaction enhancer solutions to an enzyme-linked immunosorbent assay for antigen-specific IgE in mice immunized with recombinant major mite allergens or ovalbumin
Int Arch Allergy Immunol , 141 , 322-330  (2006)
原著論文3
Fujimura T, Futamura N, Midoro-Horiuti T, et al
Isolation and characterization of native Cry j 3 from Japanese cedar (Cryptomeria japonica) pollen.
Allergy , 62 , 547-553  (2007)
原著論文4
Ogawa T, Takai T, Kato T, et al
Upregulation of release of granulocyte-macrophage colony-stimulating factor from keratinocytes stimulated with cysteine protease activity of recombinant major mite allergens, Der f 1 and Der p 1
Int Arch Allergy Immunol , 146 , 27-35  (2008)
原著論文5
Wakahara K, Tanaka H, Takahashi G, et al
Repeated instillations of Dermatophagoides farinae into the airways can induce Th2-dependent airway hyperresponsiveness, eosinophilia and remodeling in mice. Effect of intratracheal treatment of fluticasone propionate
Eur J Pharmacol , 578 , 87-96  (2008)
原著論文6
Horiguchi S, Okamoto Y, Yonekura S, et al.
A randomized controlled trial of sublingual immunotherapy for Japanese cedar pollinosis
Int Arch Allergy Immunol , 146 , 76-84  (2008)
原著論文7
Okubo K, Gotoh M, Fujieda S,et al.
A randomized double-blind comparative study of sublingual immunotherapy for cedar pollinosis
Allergol Int , 57 , 265-275  (2008)
原著論文8
Yamashita M, Kuwahara M, Suzuki A,et al
Bmi1 regulates memory CD4 T cell survival via repression of the Noxa gene.
J Exp Med , 205 , 1109-1120  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-