成人喘息の寛解を目指した治療薬の減量・中止に関する研究

文献情報

文献番号
200832005A
報告書区分
総括
研究課題名
成人喘息の寛解を目指した治療薬の減量・中止に関する研究
課題番号
H18-免疫・一般-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
小林 信之(国立国際医療センター 呼吸器科)
研究分担者(所属機関)
  • 工藤 宏一郎(国立国際医センター 国際疾病センター)
  • 大田 健(帝京大学内科)
  • 永田 真(埼玉医科大学呼吸器内科)
  • 上村 光弘(国立病院機構災害医療センター呼吸器科)
  • 森 晶夫(国立病院機構相模原病院臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
適切な治療により喘息の良好なコントロールが得られている患者において、一般の病院やクリニックでも使用できる簡便な治療薬減量・中止の指標を求める。呼気や喀痰中の炎症マーカーの測定が治療ステップダウンの際の予測マーカーとして有用かどうか、臨床的な寛解例では免疫学的にも寛解が得られているかどうかを明らかにする。
研究方法
3ヶ月以上トータルコントロールの得られている持続型の軽症または中等症の成人喘息患者を対象として、治療薬の減量/中止を行い、治療中止1年後の臨床的な寛解を予測するマーカーを求める多施設共同研究を行った。個別研究では、気道炎症制御の評価として呼気NO濃度 や呼気凝縮液中の液性因子、誘発喀痰中の好酸球比率を測定し、ステップダウン後の状態を予測する因子としての有用性について検討した。喘息治療の結果として無治療無症状となった患者、気道過敏性の消失がみられた患者を対象に、末梢血T細胞のサイトカイン産生能などの免疫学的な解析を行った。
結果と考察
1) 低用量の吸入ステロイド薬を中止した患者40名を対象に、喘息コントロール状態についてCox比例ハザードモデルの単変量解析によりスクリーニングを行った結果、治療中止1年後までの喘息増悪を予測する簡便な指標として、治療中止時の末梢血好酸球比率、%V50、%V25、気道過敏性が選択された。対象患者全例が治療中止後1年間の経過観察終了時に、多変量解析による最終解析を行う予定である。2) 呼気凝縮液中の液性因子は、得られる結果の感度/特異度や即時性の点に問題があるのに対し、呼気NO測定は比較的簡便であり即時に結果が得られるため、吸入ステロイド薬の中止成功のためのカットオフ値(例えばFeNO<50 ppb)を求めれば、中止基準としての臨床応用が可能であると考えられた。3) 環境アレルゲンであるダニや飼育中の有毛ペットへの感作は、喘息治療薬の中止/減量後の予後不良因子であることが示唆された。4) 臨床的寛解の得られた患者において、T細胞反応性の観点からみると、免疫学的な寛解群と非寛解群のあることが明らかとなった。
結論
長期間の適切な治療により薬物療法から離脱できる例もあるが、臨床的な寛解が得られても気道炎症が存続している例、免疫学的な寛解の得られていない例のあることが明らかとなった。治療ステップダウンの際には、予後の予測が可能である簡便な気道炎症マーカーの開発研究が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2009-06-05
更新日
-

文献情報

文献番号
200832005B
報告書区分
総合
研究課題名
成人喘息の寛解を目指した治療薬の減量・中止に関する研究
課題番号
H18-免疫・一般-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
小林 信之(国立国際医療センター 呼吸器科)
研究分担者(所属機関)
  • 工藤 宏一郎(国立国際医療センター 国際疾病センター)
  • 大田 健(帝京大学 内科)
  • 永田 真(埼玉医科大学 呼吸器内科)
  • 上村 光弘(国立病院機構災害医療センター 呼吸器科)
  • 森 晶夫(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、吸入ステロイドを主体とした適切な治療により喘息の良好なコントロールが得られている患者において、一般の病院やクリニックでも使用できる簡便な治療薬減量・中止の基準を作ることである。また、治療ステップダウンの際の気道炎症マーカー測定の有用性についても検討する。
研究方法
多施設共同研究として、3ヶ月以上トータルコントロールの得られている持続型の成人喘息患者を対象に、治療ステップダウン後のコントロール状態を観察し、治療中止を可能とする簡便な指標を求める。個別研究では、気道炎症制御の評価として呼気NO濃度 や呼気凝縮液中の液性因子、誘発喀痰中の好酸球比率を測定し、ステップダウン後の状態を予測する上での有用性について検討した。そのほか、成人喘息に対する早期介入8年後におけるコントロール状態の調査、臨床的寛解の得られている喘息患者における末梢血T細胞のサイトカイン産生能など免疫学的な解析、咳喘息・咳優位性喘息におけるブデソニド(BUD)ネブライザー吸入療法の検討を行った。
結果と考察
1)治療中止1年後における喘息コントロール状態を予測する指標として、単変量解析の結果、治療中止時の末梢血好酸球比率、%V50、%V25、気道過敏性が選択された。対象患者全例の経過観察終了時に、多変量解析による最終解析を行う。2)呼気NO測定は比較的簡便で即時性があり、吸入ステロイド中止成功のためのカットオフ値(例えばFeNO<50 ppb)を求めれば、中止基準としての応用が可能であると考えられた。3) 環境アレルゲンであるダニや飼育中の有毛ペットへの感作は、治療中止/減量後の予後不良因子であることが示唆された。4) 臨床的寛解の得られた患者では、T細胞反応性の観点からみると免疫学的な寛解群と非寛解群に分けられた。5) BUDネブライザー吸入療法は、 咳嗽を主体とする喘息患者で有用と思われた。6) 早期介入後の喘息寛解を予測する上で、介入1年後の短期的な喘息状態と治療中止時の%末梢血好酸球が有意な因子として選択された。
結論
長期間の適切な治療により約半数の喘息患者は薬物療法から離脱できたが、臨床的な寛解が得られても気道炎症が存続している例、免疫学的な寛解の得られていない例のあることが明らかとなった。治療ステップダウンの際には、予後の予測が可能である簡便な気道炎症マーカーの開発研究が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2009-06-05
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200832005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
喘息コントロール良好例では呼気凝縮液中のIP10高値、VEGF高値、IL-1&#61538;低値の傾向がみられたが、得られる結果の感度/特異度や即時性の点に問題がみられた。これに対し、呼気NO測定は比較的簡便であり即時に結果が得られ、呼気NOが高値例、あるいは中止後に上昇する例ではステロイドからの離脱が不可能であることが示唆された。適切な治療により臨床的寛解となった場合でも、T細胞反応性の観点からみると免疫学的な寛解の得られていない例のあることが確認された。
臨床的観点からの成果
低用量ステロイド薬のみでトータルコントロールの得られている喘息患者では、中止基準を満たせば、かなりの確率で毎日の治療薬から離脱することができることが明らかとなった。その基準については現在解析中であるが、現時点で使用できる指標として%末梢血好酸球、末梢気道閉塞マーカー、気道過敏性がスクリーニングにより選択された。気道炎症の指標のなかで、日常の臨床の場において簡便に使用できるマーカーとして呼気NOが有力な候補であることが示唆された。
ガイドライン等の開発
該当なし。
その他行政的観点からの成果
該当なし。
その他のインパクト
該当なし。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
10件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-