関節リウマチの重症化防止のための臨床的早期診断法と早期重症化診断法に関する研究

文献情報

文献番号
200832004A
報告書区分
総括
研究課題名
関節リウマチの重症化防止のための臨床的早期診断法と早期重症化診断法に関する研究
課題番号
H18-免疫・一般-004
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
村澤 章(新潟県立リウマチセンター リウマチ科)
研究分担者(所属機関)
  • 井上 和彦(東京女子医科大学東医療センター)
  • 松田 剛正 (鹿児島赤十字病院 リウマチ・膠原病センター)
  • 衛藤 義人(国立病院機構名古屋医療センター 整形外科)
  • 宮原 寿明(国立病院機構九州医療センター 整形外科・リウマチ科)
  • 高木 理彰(山形大学医学部 整形外科)
  • 羽生 忠正(長岡赤十字病院 リウマチ科・整形外科)
  • 中野 正明(新潟大学医学部 保健学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
患者の医療への経済的負担軽減と安全性を確保し、医療経済性を配慮した医療が求められ中で、RAの重症化を防止するために、一般臨床医でも広く使用できるような臨床的早期診断法を検討する。また骨破壊の急速進行型や時に致死的な内科合併症などの重症化因子を早期に捉え、機能予後さらには生命予後の改善ために早期重症化診断法を新たに確立する。
研究方法
1)CT法にMTP関節所見を加え抗CCP抗体を組み込んだ新CT法の検証、2)RAの関節破壊早期指標 、3)TNF阻害薬のRAのLarge jointに対する骨関節破壊抑制効果、4)生物学的製剤による関節リウマチ下肢荷重関節破壊抑制効果、5)RAの腎障害の早期診断法、6)RAの(呼吸器合併症における早期重症化指標、7)RAにおける重症感染症マーカーとしての血清プロカルシトニンの検討
結果と考察
RAの早期診断はCT法に抗CCP抗体値を組み込みこんだ新CT法が陽性ならびに陰性的中率が上がることが確認された。全身の骨破壊の重症化パターンは非荷重関節、荷重関節、MTX使用下、生物学的使用下などで異なっていることが判明した。生物学的製剤の導入によって関節破壊抑制が認められたが、とくにLarsen Grade 2以上での薬剤導入では関節破壊進行の抑制は得られず、これらは重症化指標ととらえられた。腎機能障害の早期診断のために、とくにRAで筋肉量の少ない症例においてもシスタチンC(CyC)の有用性が認められた。内科的合併症のうち、呼吸器合併症例が圧倒的に多く、更にそのうち呼吸器感染症は66%を占め、RAにおける呼吸器合併症特に呼吸器感染症への対応が改めて認識された。
結論
新CT法はMRIや高額検査器機がなくとも、早期に感度・特異度とも高いこの診断法として確立され、RA疑いの患者が無駄な医療を受けることなく、一方真のRA患者が治療開始の時期を遅延されることなく薬物療法の恩恵を受けることが可能となった。骨関節破壊進行に関しては大・小関節部位や非荷重・荷重関節によって程度や進行度が異なり、とくに大関節・荷重関節はLarsen gradeⅡ以下であれば炎症をコントロールすることによって進行を抑制できることが解明された。内科合併症の中で呼吸器合併症は死亡率が高く呼吸器感染症への対応が重要であった。早期に低免疫能や感染が評価できる血清マーカーの導入が今後重要である。

公開日・更新日

公開日
2009-03-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200832004B
報告書区分
総合
研究課題名
関節リウマチの重症化防止のための臨床的早期診断法と早期重症化診断法に関する研究
課題番号
H18-免疫・一般-004
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
村澤 章(新潟県立リウマチセンター リウマチ科)
研究分担者(所属機関)
  • 井上 和彦(東京女子医科大学医療センター)
  • 松田 剛正(鹿児島赤十字病院 リウマチ・膠原病センター)
  • 衛藤 義人(国立病院機構名古屋医療センター 整形外科)
  • 宮原 寿明(国立病院機構九州医療センター 整形外科・リウマチ科)
  • 高木 理彰(山形大学医学部 整形外科)
  • 羽生忠正(長岡赤十字病院 リウマチ科・整形外科)
  • 中野 正明(新潟大学医学部 保健学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
患者の医療への経済的負担軽減と安全性を確保し、医療経済性を配慮した医療が求められ中で、RAの重症化を防止するために、一般臨床医でも広く使用できるような臨床的早期診断法を検討する。また骨破壊の急速進行型や時に致死的な内科合併症などの重症化因子を早期に捉え、機能予後さらには生命予後の改善ために予後予測に基づいた最善の治療法選択の指針となる早期重症化診断法を新たに確立する。
研究方法
[臨床的早期診断法]リウマトイド因子より疾患特異性に優れた抗CCP抗体を組み込んだ新CT法を作成し,UA患者に対する前向き試験を行い, ArnettらのCT法,MTP関節を加えた改良CT法,新CT法について,有用度を比較した。[重症化早期診断法]重症化を身障(骨関節破壊)、重度(内科合併症)、難治性(高度炎症)にわけ、各々の重症化因子を探り、早期重症化診断法を作成する。
結果と考察
[臨床的早期診断法]CT法,改良CT法,新CT法の感度,特異度,陽性的中率,陰性的中率を比較すると、新CT法が感度、陽性的中率と陰性的中率で高かった。[重症化早期診断法]生物学的製剤使用前患者を対象とした全身の骨関節破壊パターンは全体的には時間と程度に差があるものの直線的に進行していくことが判った。従来のMTXを中心にした治療では骨破壊に差がなかった。生物学的製剤の導入によって関節破壊抑制が認められるも、とくにLarsen grade Ⅱ以上での薬剤導入では関節破壊進行の抑制は得られず、これらは重症化指標ととらえられた。内科的合併症のうち、呼吸器合併症例が圧倒的に多く、更にそのうち呼吸器感染症は66%を占めた。
結論
新CT法はMRIや高額検査器機がなくとも、早期に感度・特異度とも高い診断法として確立され、RA疑いの患者が無駄な医療を受けることなく、一方真のRA患者が治療開始の時期を遅延されることなく薬物療法の恩恵を受けることが可能となった。骨関節破壊進行に関しては大・小関節部位や非荷重・荷重関節によって程度や進行度が異なり、とくに大関節・荷重関節はLarsen gradeⅡ以下であれば炎症をコントロールすることによって進行を抑制できることが解明された。内科合併症の中で呼吸器合併症は死亡率が高く呼吸器感染症への対応が重要であった。早期に低免疫能や感染が評価できる血清マーカーの導入が今後重要である。

公開日・更新日

公開日
2009-03-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-12-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200832004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
全身の骨関節破壊の重症化パターンは非荷重関節、荷重関節、MTX使用下、生物学的使用下などで異なっていることが判明した。手指、手関節、肘関節、膝関節の破壊様式から、関節破壊防止のために平均DAS28-CRP(3)が発症2年で3.0以下に維持されていること、生物学的製剤の導入によって関節破壊改善例はEULAR 診断基準でgood responder であり、かつ骨破壊程度がLarsen grade Ⅱ以下であることから、これらの条件を満たすよう強力な薬物療法の早期選択的導入が推奨される。

臨床的観点からの成果
今後生物学的製剤などの普及により、CRP値で表現される炎症がコントロールされると、骨関節破壊は抑制される反面、免疫抑制によって発生する感染症のコントロールが重要な課題となる。ImmuKnow○RはRA治療症例の免疫能を評価し易感染状態の早期発見に有用な可能性がある。また感染症、とくに重症感染症の早期診断法にはプロカルシトニン(PCT)が有用であることも判明したため、生物学的製剤使用中の低免疫能や感染症の早期発見が可能となった。
ガイドライン等の開発
従来の3種早期診断法(ACRのCT法、日本リウマチ学会診断法、厚生省診断法)の感度・特異度の再評価をおこなった後、リウマトイド因子(IgM-RF)より疾患特異性に優れた抗CCP抗体を組み込んだ新CT法を作成し,感度、特異度、陽性的中率と陰性的中率が高いことが確認された。また確定診断が難しい例では関節鏡視下組織学的診断法が有効であることが証明された。
その他行政的観点からの成果
従来の薬物療法によって炎症は70~80%コントロール可能であり、残り20~30%の患者は進行性で重症化するが、診断が確定されたすべての患者に対し早期から強力な免疫抑制剤や生物学的製剤を推奨する考えは、有害事象やコストの面ばかりでなく倫理面でも問題が残る。そのため重症化指標を早期に用いて重症化が予測される患者に対しては、早期から選択的強力薬物療法を導入することが入院期間・経費などの医療経済性や不安・有害事象など患者の精神・身体障害面からも有用と考えられる。
その他のインパクト
新CT法は高価な診断器機や専門性の高い器機(MRI,UAなど)がなくとも、一般臨床医が医療現場にて臨床重視で使用できる。ImmuKnow○Rやプロカルシトニンなどの新検査法、新マーカーの臨床的意義は更なる症例の積み重ねによる検索が必要である。

発表件数

原著論文(和文)
10件
原著論文(英文等)
21件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
32件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
神戸克明、井上和彦
関節リウマチの骨・関節破壊:骨関節破壊とQOL
Clinical Calcium , 17 (1) , 10-15  (2007)
原著論文2
中野正明、菊地珠美、村上修一、他
新しい腎機能評価法としてのシスタチンCのRAにおける有用性
リウマチ科 , 36 (3) , 305-311  (2006)
原著論文3
Toyohara I,Ishikawa H, Nakazono K, et al
Disease Activity and the Course of Wrist Joint Deterioration Over 10 Years in the Patients with Early Rheumatoid Arthritis
Mod Rheumatol , 19 (1) , 47-52  (2009)
原著論文4
Abe A, Ishikawa H, Murasawa A, et al
Disease activity and the course of elbow joint deterioration over 10 years in the patients with early rheumatoid arthritis
Clin Rheum , 27 , 867-872  (2008)
原著論文5
Kanbe K, Inoue K, Inoue Y, et al
Histological analysis of synovium in cases of effect attenuation associated with infliximab therapy in rheumatoid arthritis
Clin Rheum , 27 , 777-781  (2008)
原著論文6
Sato H, Kazama JJ, Kuroda T, et al
Serum cystatin C measured by a sol particle homogeneous immunoassay can accurately detect early impairment of renal function
Clin Exp Nephrol , 12 (1) , 270-276  (2008)
原著論文7
Sasaki K, Takagi M, Konttinen YT, et al
Up-regulation of matrix metalloproteinase (MMP-1) and its activator MMP-3 of human osteoblast by uni-axial cyclic stimulation
Journal of Biomedical Materials Research , 80 , 491-498  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-