公的年金制度の所得保障機能・所得再分配機能に関する検討に資する研究

文献情報

文献番号
202101019A
報告書区分
総括
研究課題名
公的年金制度の所得保障機能・所得再分配機能に関する検討に資する研究
課題番号
21AA2008
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
山田 篤裕(慶應義塾大学 経済学部)
研究分担者(所属機関)
  • 百瀬 優(流通経済大学 経済学部)
  • 永野 仁美(上智大学 法学部)
  • 四方 理人(関西学院大学 総合政策学部)
  • 田中 聡一郎(駒澤大学 経済学部)
  • 大津 唯(埼玉大学大学院 人文社会科学研究科)
  • 渡辺 久里子(国立社会保障・人口問題研究所 企画部)
  • 藤井 麻由(北海道教育大学 教育学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
16,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 公的年金制度がその制度目的を適切に果たすには、社会保険としての適当な設計を保ちつつ、国民の生活、就労、疾病、家族の在り方、その他社会情勢の変化を適時に反映し、適切な保障内容と所得再分配機能の維持を図ることが望ましい。
 本研究では、①老齢年金制度については、国民年金・厚生年金両制度の加入者の属性・所得水準、受給者の生活における公的年金給付の位置づけ等の経時的変化を明らかにすること、②障害年金制度については、障害者の生活・就労状況、および海外の制度・実務を明らかにすること、③遺族年金制度については、遺族年金の受給者以外も含め、配偶者や親と死別・離別した者の所得・消費・就労状況を明らかにすること、を目的とする。また、日本年金機構が保有する行政データの活用可能性を探ることも目的としている。
研究方法
 総務省「全国消費実態調査」「全国家計構造調査」「全国単身世帯収支実態調査」「労働力調査」、厚生労働省「国民年金被保険者実態調査」「老齢年金受給者実態調査」「障害年金受給者実態調査」「遺族年金受給者実態調査」「全国ひとり親世帯等調査」「国民生活基礎調査」「所得再分配調査」「生活のしづらさなどに関する調査」等の大規模統計の調査票情報を活用し、研究を行った。みずほリサーチ&テクノロジーズに一部データの整備を依頼し、その他の研究者は整備されたデータを用い、計量経済学的手法で分析した。
 令和3年度は、公的年金の所得保障機能の前提条件となる 1)家計の金融資産・負債と所得分配について把握した上、2)老齢年金受給者の貧困リスクと公的年金の「部分繰下げ」受給の可能性、3)離死別女性の貧困と公的年金制度、4)遺族年金の見直しの方向性、5)障害年金受給者の動向と実態、6)遺族年金受給者の就業選択、7)年金等が障害者の就労・経済状況に及ぼす影響、8)フランスにおける障害者所得保障制度、等について分析した。
結果と考察
 主要な知見として、等価可処分所得の中央値は低下し、資産貧困率は低・中所得層で上昇し、生活水準は低下している可能性があること、家族扶養による貧困削減効果が衰え、公的年金による貧困削減効果も頭打ちになった結果、高齢死別女性の貧困率が上昇し、男女間の貧困率のギャップが拡大していること、部分繰下げ受給可能な高齢者は5割近く存在するが継続就業・繰下げによる貧困削減効果は限定的であること、精神障害・知的障害の年金受給者の増加に伴い障害年金に期待される所得保障の役割が変化してきていること、遺族年金受給者には子が多いほど就業率が低いという一般的な傾向が当てはまらないこと、在宅障害者に対する公的年金や公的手当が所得保障機能を十分に担っているとは言い難いこと、遺族年金及び障害年金の見直しの方向性に関する論点、フランスの法制度から得られる示唆、等が明らかになった。
結論
 これまでの日本の所得分配の実証研究は、所得データを用いた分析が中心であったが、家計の生活水準を捉えるためには、資産・負債データからみた分析も必要である。
 今後、高齢化が進み、少子化で扶養してくれる子も少なくなるため、死別後に単身化が進み、貧困率がより高くなると予想される。就労する貧困リスク者の部分繰下げ・就労継続が進んだとしても、部分繰下げ受給による防貧機能は万能薬ではないことから、公的年金を含めた社会保障給付の機能拡大がより求められる。生活保護、年金生活者支援給付金等による所得保障機能も重要である。
 遺族年金には、遺族厚生年金における男女差の解消など、制度全般に係る論点が存在するが、次回年金改正に向けて、本研究で取り上げたような個別の論点についても検討を進める必要がある。遺族年金制度の見直しを行うにあたっては、女性の一般的な就労状況だけでなく、遺族年金受給者の就労状況を継続的に把握する事が不可欠である。
 また知的・精神障害者が増えたことなどを背景として、現在の障害年金受給者構成や受給者像は、制度創設時あるいは1985年改正時とは異なる。こうした障害特性の分布変化に合わせた障害年金の見直しが必要と考えられる。公的年金等の社会保障給付により、障害者世帯の家計が一定程度下支えされていることも示唆されるが、所得保障機能を十分担っているとは言い難い。
 国際比較の観点からは、日本は社会保険の仕組みをとる公的年金制度の枠内で、扶助原理も取り入れつつ、障害者への所得保障を実現しようとしている。ただ、社会保険の仕組みを採用していることの限界(保険料未払いに起因する無年金障害者の存在等)への対応は難しい。また、日本の障害年金制度は、基本的に障害を医学モデルの観点から捉えていることから、社会保障による所得保障と就労との関係も曖昧なものとなっている。こうした課題に関し、フランス法制度から得られる示唆は多い。

公開日・更新日

公開日
2023-04-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-04-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202101019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
21,800,000円
(2)補助金確定額
21,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 518,407円
人件費・謝金 253,107円
旅費 14,080円
その他 15,984,899円
間接経費 5,030,000円
合計 21,800,493円

備考

備考
自己資金493円が発生したため、収入と支出の合計に差異が生じた。

公開日・更新日

公開日
2023-03-01
更新日
-