アトピー性皮膚炎の発症および悪化因子の同定と発症予防・症状悪化防止のための生活環境整備に関する研究

文献情報

文献番号
200832003A
報告書区分
総括
研究課題名
アトピー性皮膚炎の発症および悪化因子の同定と発症予防・症状悪化防止のための生活環境整備に関する研究
課題番号
H18-免疫・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
河野 陽一(国立大学法人千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 池澤 善郎(横浜市立大学大学院医学研究科・環境免疫病態皮膚科学)
  • 佐伯 秀久(東京大学医学部附属病院皮膚科・皮膚免疫学)
  • 近藤 直実(岐阜大学大学院医学系研究科小児病態学)
  • 片山 一朗(大阪大学大学院医学系研究科情報統合医学皮膚科学)
  • 望月 博之(群馬大学大学院 小児生体防御学・小児アレルギー呼吸器疾患学)
  • 小田嶋 博(独立行政法人国立病院機構福岡病院)
  • 下条 直樹(千葉大学大学院医学研究院小児病態学)
  • 片岡 葉子(大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター皮膚科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
31,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1. ADの小児・成人での疫学調査2.コホート調査に基づく乳児AD自然歴とAD発症・悪化関連因子の同定3. 既知の発症・悪化因子に対する対策による発症予防・症状改善の評価
研究方法
1.(1)「ADの診断のための質問票」による全国複数地域において小児AD有症率を調査し、年次推移を検討する。(2)一般成人集団における本質問票の感度・特異度を複数の地域で明らかにする。2.(1)生後4か月からの乳幼児健診での医師の診断によるADの個別追跡調査により乳児期ADの自然歴を調査する。皮膚黄色ブドウ球菌の定着、皮膚バリア機能と乳幼児ADとの関連を調査する。(2)母乳中の免疫活性物質を測定する系を確立する。母乳中の成分と乳児ADの関連についてコホート乳児集団を設定して検討する。3.(1)シャワー浴の効果を客観的に検討する。(2)AD発症ハイリスク群の児に対するスキンケアによる乳児AD発症予防の効果を検討する。
結果と考察
1)質問票による調査では、5年前に比してAD有症率は小学生ではやや低下、3歳児では地域により増加が示唆された。2)健診追跡調査から、乳児期のAD自然歴が明らかとなり、男児、食物アレルギー合併、ネコ飼育が重要な早期発症リスクであった。3)出生コホート調査では、生後6か月までの母乳栄養は生後6ヵ月でのAD発症予防効果が判明した。4)皮膚バリア機能異常がAD発症、寛解に関与することが明らかになった。5)AD発症児の母乳は、非発症児の母乳と可溶性CD14濃度、Th2アジュバント効果、炎症惹起作用が異なることが示された。6)シャワー浴の効果が新たな客観的指標により確認された。これらの結果から、乳幼児期の免疫学的および物理的な皮膚バリア機能の異常がAD発症に深く関与していることが明らかとなり、スキンケアによるAD発症、悪化の予防に有用であることが示唆された。パイロット早期介入試験の結果もその有用性を示唆している。
結論
1)乳幼児期のADの自然歴が明らかとなった。2)母乳中免疫活性物質濃度と児のAD発症に関連が認められた。3)皮膚バリア機能の異常がADの発症に関与する。乳児期早期を対象とするバリア機能保持によるAD発症予防の可能性がある。4)学童のADに対するシャワー浴の効果が客観的に確認された。5)以上の班研究の結果を含めてアトピー性皮膚炎治療ガイドライン2005を改訂し、アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2008を発刊した。

公開日・更新日

公開日
2009-06-05
更新日
-

文献情報

文献番号
200832003B
報告書区分
総合
研究課題名
アトピー性皮膚炎の発症および悪化因子の同定と発症予防・症状悪化防止のための生活環境整備に関する研究
課題番号
H18-免疫・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
河野 陽一(国立大学法人千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 池澤 善郎(横浜市立大学大学院医学研究科)
  • 佐伯 秀久(東京大学医学部附属病院皮膚科)
  • 近藤 直実(岐阜大学大学院医学系研究科)
  • 片山 一朗(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 望月 博之(群馬大学大学院医学系研究科)
  • 小田嶋 博(独立行政法人国立病院機構福岡病院)
  • 下条 直樹(国立大学法人千葉大学 大学院医学研究院)
  • 片岡 葉子(大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター皮膚科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1. ADの小児・成人での疫学調査2.コホート調査に基づく乳児AD自然歴とAD発症・悪化関連因子の同定3. 既知の発症・悪化因子に対する対策による発症予防・症状改善の評価
研究方法
1.(1)「ADの診断のための質問票」による全国複数地域において小児AD有症率を調査し、年次推移を検討する。(2)一般成人集団における本質問票の感度・特異度を複数の地域で明らかにする。2.(1)生後4か月からの乳幼児健診での医師の診断によるADの個別追跡調査により乳児期ADの自然歴を調査する。皮膚黄色ブドウ球菌の定着、皮膚バリア機能と乳幼児ADとの関連を調査する。(2)母乳中の免疫活性物質を測定する系を確立する。母乳中の成分と乳児ADの関連についてコホート乳児集団を設定して検討する。3.(1)シャワー浴の効果を客観的に検討する。(2)AD発症ハイリスク群の児に対するスキンケアによる乳児AD発症予防の効果を検討する。
結果と考察
1)質問票による調査では、5年前に比してAD有症率は小学生ではやや低下、3歳児では地域により増加が示唆された。2)健診追跡調査から、乳児期のAD自然歴が明らかとなり、男児、食物アレルギー合併、ネコ飼育が重要な早期発症リスクであった。3)出生コホート調査では、生後6か月までの母乳栄養は生後6ヵ月でのAD発症予防効果が判明した。4)皮膚バリア機能異常がAD発症、寛解に関与することが明らかになった。5)AD発症児の母乳は、非発症児の母乳と可溶性CD14濃度、Th2アジュバント効果、炎症惹起作用が異なることが示された。6)シャワー浴の効果が新たな客観的指標により確認された。これらの結果から、乳幼児期の免疫学的および物理的な皮膚バリア機能の異常がAD発症に深く関与していることが明らかとなり、スキンケアによるAD発症、悪化の予防に有用であることが示唆された。パイロット早期介入試験の結果もその有用性を示唆している。
結論
1)乳幼児期のADの自然歴が明らかとなった。2)母乳中免疫活性物質濃度と児のAD発症に関連が認められた。3)皮膚バリア機能の異常がADの発症に関与する。乳児期早期を対象とするバリア機能保持によるAD発症予防の可能性がある。4)学童のADに対するシャワー浴の効果が客観的に確認された。5)以上の班研究の結果を含めてアトピー性皮膚炎治療ガイドライン2005を改訂し、アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2008を発刊した。

公開日・更新日

公開日
2009-06-05
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200832003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1)乳児コホート追跡調査から、乳幼児ADの自然経過が明らかになった。早期発症に、食物アレルギー、男児、ネコの飼育が関連すること、乳児ADの遷延化に食物アレルギーが関連することが判明した。また、皮膚バリア機能、黄色ブドウ球菌定着がAD発症のリスクであることが示された。
2)出生コホート調査からは、母乳栄養が乳児AD発症に抑制的に働くことが示された。また、母乳中の免疫活性物質と乳児AD発症の関連が明らかになった。
臨床的観点からの成果
「アトピー性皮膚炎の診断のための質問票」を用いた疫学調査から、この5年間での小学生のAD有症率は若干低下、3歳では地域によっては増加していることが示唆された。また疫学調査からAD発症のリスクが明らかになったことは早期介入によるAD発症予防につながる。
ガイドライン等の開発
班研究の結果を含めてアトピー性皮膚炎治療ガイドライン2005を改訂し、アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2008を発刊した。
その他行政的観点からの成果
学校におけるアレルギー疾患管理指導表のアトピー性皮膚炎炎の項で、学校でのシャワー浴についての項目が設定されたことは、学童のADのQOL向上に極めて大きな効果を有すると考えられる。母乳栄養のアレルギー抑制効果について今後発表予定である。
その他のインパクト
学校でのシャワー浴によるAD悪化予防効果が全国紙にて紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
6件
その他論文(和文)
21件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
31件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
佐伯 秀久
アトピー性皮膚炎の疫学
最新皮膚科学大系 , 4-140  (2008)
原著論文2
Matsukuma E,et al.
Development of fluorescence-linked immunosorbent assay for high throughput screening of interferon-gamma
Allergol Int , 55 , 49-54  (2006)
原著論文3
Saeki H,et al.
Prevalence of atopic dermatitis determined by clinical examination in Japanese adults
J Dermatol , 33 , 817-819  (2006)
原著論文4
望月 博之、森川 昭廣
アトピー性皮膚炎の学童におけるシャワー浴の効果
日本小児難治喘息・アレルギー疾患学会誌 , 4 (3) , 10-16  (2006)
原著論文5
池澤 善郎
アトピー性皮膚炎の予知と予防は可能か
小児科 , 48 (1) , 37-43  (2007)
原著論文6
佐伯 秀久
成人アトピー性皮膚炎
アレルギー・免疫 , 14 (5) , 596-600  (2007)
原著論文7
Saeki H,et al.
Community validation of the U.K.diagnostic criteria for atopic dermatitis in Japanese elem entary schoolchildren
J Dermatol Sci , 47 , 227-231  (2007)
原著論文8
冨板 美奈子、河野 陽一
最新の治療ガイドラインアトピー性皮膚炎
臨床と研究 , 85 (2) , 177-181  (2008)
原著論文9
冨板 美奈子、河野 陽一
アトピー性皮膚炎の最近の疫学
アレルギーの臨床 , 28 (13) , 15-1109  (2008)
原著論文10
Suzuki H,et al
A quantitative and relative increase in intestinal Bacteroides in allergic infants in rural Japan
Asian Journal of Allergy and Imuunoogy , 26 , 113-119  (2008)
原著論文11
鈴木 修一他
乳児期の黄色ブドウ球菌の皮膚定着とアトピー性皮膚炎の発症
日本小児アレルギー学会誌 , 23 (1) , 56-61  (2009)
原著論文12
下条 直樹
母乳とアレルギー
母子保健情報 , 57 , 80-86  (2008)
原著論文13
Mochizuki H,et al.
Effects of skin care with shower therapy on children with atopic dermatitis in elementary schools
Pediatr Dermatol , 26 (2) , 223-225  (2009)
原著論文14
Mochizuki H,et al.
Evaluation of out-in skin transparency using colorimeter and food dye in patients with atopic dermatitis.
Br J Dermatol  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-