文献情報
文献番号
202101014A
報告書区分
総括
研究課題名
医師の勤務環境把握に関する研究
課題番号
21AA2003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
小池 創一(自治医科大学 地域医療学センター地域医療政策部門)
研究分担者(所属機関)
- 福井 次矢(東京医科大学茨城医療センター 病院長)
- 谷川 武(順天堂大学 大学院 医学研究科公衆衛生学講座)
- 片岡 仁美(臼井 仁美)(岡山大学病院ダイバーシティー推進センター)
- 井出 博生(東京大学 未来ビジョン研究センター)
- 和田 裕雄(順天堂大学 大学院医学研究科公衆衛生学講座)
- 吉村 健佑(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院)
- 種田 憲一郎(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
- 佐藤 香織(明治大学 商学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
12,666,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本年度は、10 の医療機関において詳細な記録から簡易な記録まで複数の調査票を用いて医師の勤務実態に関する自計式調査を行うとともに、調査員が医師の勤務に同行しながら勤務実態を記録する他計式調査を実施、自計式調査と他計式調査と比較、記入者負担を最小限にしながら正確な勤務実態が把握できる自計式調査の方法について検討を行うことで、医師の勤務の特殊性を踏まえつつ、医療提供体制を維持することが可能な医師の勤務環境についての議論を進める上で必要となる基礎データを得ることを目的とした研究を実施することとした。
研究方法
(1)自計式調査
本研究では、病院の種別・病床規模・地域分布を考慮し、計10 病院を対象に「医師の勤務把握に関する調査」として、調査協力施設の特性と調査対象者の医療機関としての
勤務時間把握の方法を調査する「施設調査」及び医師の勤務実態把握と調査に回答するにあたっての課題を把握するための「医師調査」を実施した。
(2)勤務医師の勤務実態把握(他計式調査)
本研究の意義・方法について賛同した医療機関において、推薦された各医師を同じ医療機関の看護師等が交代で観察し、1分単位でその業務内容を文章で記録し、簡易なコーディング(分類)を行う。そして、記録された詳細な業務内容について、研究者から依頼された他の医療者(医師、看護師等)が、詳細なコーディングを実施する。
(3)アプリを用いた医師の勤務環境把握に関する研究
各医療機関1 名(合計10 名)の医師にスマートフォン上のアプリを用い、勤務時間の記録を依頼した。研究班で準備した全て同一の仕様スマートフォンにアプリを導入し
た。被験者には説明書、同意書などをスマートフォンとまとめた一式としてキット化し、研究班全体の調査の委託先から医療機関を通じ、配布・回収した。
本研究では、病院の種別・病床規模・地域分布を考慮し、計10 病院を対象に「医師の勤務把握に関する調査」として、調査協力施設の特性と調査対象者の医療機関としての
勤務時間把握の方法を調査する「施設調査」及び医師の勤務実態把握と調査に回答するにあたっての課題を把握するための「医師調査」を実施した。
(2)勤務医師の勤務実態把握(他計式調査)
本研究の意義・方法について賛同した医療機関において、推薦された各医師を同じ医療機関の看護師等が交代で観察し、1分単位でその業務内容を文章で記録し、簡易なコーディング(分類)を行う。そして、記録された詳細な業務内容について、研究者から依頼された他の医療者(医師、看護師等)が、詳細なコーディングを実施する。
(3)アプリを用いた医師の勤務環境把握に関する研究
各医療機関1 名(合計10 名)の医師にスマートフォン上のアプリを用い、勤務時間の記録を依頼した。研究班で準備した全て同一の仕様スマートフォンにアプリを導入し
た。被験者には説明書、同意書などをスマートフォンとまとめた一式としてキット化し、研究班全体の調査の委託先から医療機関を通じ、配布・回収した。
結果と考察
(1)自計式調査について
調査対象医療機関の2024 年からの医師の時間外労働の適用については、B 水準が最も多く、次いでA 水準であった。宿日直勤務の労働基準監督署の許可の取得は調査対象医療機関の80%において行われていた。
(2)勤務医師の勤務実態把握(他計式調査)
52 名について他計式調査に協力をえることができた。観察時間の範囲は、出勤から・退勤まで観察できた医師は12 名(23.1%)であった。残る医師は、観察者の業務の都合により、日中の限定された観察時間であった。また、当直の有無については、観察時間の中に、当直の時間帯が含まれていた医師は8 名(15.4%)であった(うち1 名は夜間のシフト勤務であった)。
(3)アプリを用いた医師の勤務環境把握に関する研究
9 医療機関で各施設1 人が調査に参加した。アプリA における8 名の記録では、3 日間の勤務時間の中央値は1,937 分(32時間17 分)であり、最大2,166 分(36 時間6 分)、最小1,704 分(28 時間24 分)だった。同様にアプリB では中央値1,875 分(31 時間25 分)、最大2,280 分(38 時間)、最小1,590 分(26時間30 分)だった。
調査対象医療機関の2024 年からの医師の時間外労働の適用については、B 水準が最も多く、次いでA 水準であった。宿日直勤務の労働基準監督署の許可の取得は調査対象医療機関の80%において行われていた。
(2)勤務医師の勤務実態把握(他計式調査)
52 名について他計式調査に協力をえることができた。観察時間の範囲は、出勤から・退勤まで観察できた医師は12 名(23.1%)であった。残る医師は、観察者の業務の都合により、日中の限定された観察時間であった。また、当直の有無については、観察時間の中に、当直の時間帯が含まれていた医師は8 名(15.4%)であった(うち1 名は夜間のシフト勤務であった)。
(3)アプリを用いた医師の勤務環境把握に関する研究
9 医療機関で各施設1 人が調査に参加した。アプリA における8 名の記録では、3 日間の勤務時間の中央値は1,937 分(32時間17 分)であり、最大2,166 分(36 時間6 分)、最小1,704 分(28 時間24 分)だった。同様にアプリB では中央値1,875 分(31 時間25 分)、最大2,280 分(38 時間)、最小1,590 分(26時間30 分)だった。
結論
過去の調査形式を踏襲する場合、詳細な調査にすれば自計式、他計式の差は小さくなるものの、記入者負担は増加しており、勤務時間の把握の目的にそった調査票の設計が重要である。いずれにしても、記入者負担増は回収率にも直結する問題であり、回収率を上げるための取組が必要である。勤務状況を把握する上では、診療外の業務の範囲について、医師側は分類が困難であるものがあると感じており、調査票の設計上の工夫に加え、労働時間の範囲に関する周知活動の重要性が改めて示唆されたものと考えている。スマートフォンアプリを用いた調査については、被験者の医師は文書による説明を読んでアプリを使用できたが、不具合に対応できる大規模調査のマネジメントは難しいこと、紙の調査と同様に測定誤差を小さくするための工夫が必要であることが推察された。また、取得したデー
タの利用範囲を限定的にしたいと考える医師は少数派であった。引き続きアプリを用いた調査の適用範囲や条件、取得データの利用に関する課題について検討を深める必要がある。
タの利用範囲を限定的にしたいと考える医師は少数派であった。引き続きアプリを用いた調査の適用範囲や条件、取得データの利用に関する課題について検討を深める必要がある。
公開日・更新日
公開日
2023-04-18
更新日
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