文献情報
文献番号
202101012A
報告書区分
総括
研究課題名
タスクシフトによる医師労働時間短縮効果と医療機関経営上の影響に関する研究
課題番号
21AA2001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
荒井 耕(国立大学法人一橋大学 大学院経営管理研究科)
研究分担者(所属機関)
- 阪口 博政(金沢大学 経済学経営学系)
- 吉村 長久(京都大学 医学研究科 眼科学)
- 内藤 嘉之(社会医療法人愛仁会 高槻病院)
- 森 由希子(京都大学 医学研究科 医療情報学)
- 平木 秀輔(京都大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
12,407,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
医師の労働時間短縮を進める方法の一つとしてタスクシフトの推進が課題となる中、各種シフトの費用対効果分析の必要性も提唱されているが、極めて厳しい経営環境下にあって、短期的にはコスト増と認識されがちなタスクシフトに医療機関が積極的に取り組むことに躊躇せざるを得ない状況にある。そのため、費用対効果が大きいタスクシフトを明らかにすることは極めて重要となっているが、従来、タスクシフト種類ごとの費用対効果分析の方法論は確立されていない。そこで本研究では、タスクシフトによる医師労働時間短縮効果と医療機関経営への影響を体系的に分析する方法論を確立することを目的とする。その際、理論的な方法論をいくつかの医療機関で実践することを通じて、より現実的に利用可能な方法論として確立していくことを目的とする。
研究方法
本研究ではこれらの目的を達成するために、本年度には、文献調査、実地病院調査、労務費単価検討調査、アンケート調査、インタビュー調査の5つの調査を実施した。
結果と考察
まず、タスクシフトの持つ医師の労働時間短縮効果と医療機関経営への影響を同時体系的に評価する方法論を導き出すことを目標とするにあたり、参考となる文献が無いか、国内及び海外の文献レビューを実施した。しかし日本ではタスクシフトと医療機関経営を紐づけた研究は見られず、海外の文献ではコストに関する効果を評価した文献を複数見つけることが出来たものの、医療機関経営について言及した文献は見つからなかった。
そこで、事業体の経営のために発達してきた管理会計論における分析手法を参考にして本研究班自身で方法論を確立することを目指し、タスクシフトごとの費用対効果を分析するにあたって測定すべき項目や、測定の実現可能性を把握するため、3つの実地研究病院においてタスクシフトに伴う教育研修等の詳細を調査した。また一つの実地研究病院では、シフト対象業務ごとの作業時間推計を行った。その結果、教育研修は院内で勤務時間として院内講師によって行われることが大半であること、事前研修はともかくシフト後の継続研修については測定が困難であることなどが明らかとなった。また作業時間換算で相当な量の医師業務が他職種に移管されていることがわかったが、既にタスクシフトが実現している項目については、効果や現場の負担の把握が難しいことも判明した。
また経営への影響を把握するために必要な職種別労務費単価については、各病院から入手することは困難であることが確認される一方、今回の研究目的からは必ずしも各病院の単価である必要はなく、むしろ全国的な平均単価の方が好ましい面もある。そこで本研究において利用するのに適した全国平均値の得られる既存調査を検討し、『医療経済実態調査』の「一般病院集計1」を基礎として利用することが妥当なことを明らかにできた。また単価算出のための妥当な想定年間労働時間を検討することもできた。
一方、タスクシフトの現状に関するアンケート調査に基づいて、限られた時間と研究費をより効率的・効果的に利用する観点から、次年度以降に優先的に費用対効果分析の対象とすべき業務を明確にすることができた。また、タスクシフトに伴う研修等の技術的対応のための初期投資の回収期間という経営上の負荷(費用)と医師労働時間短縮という効果により、各タスクシフトの費用対効果を評価するという基本枠組みが妥当であることを確認できた。次年度以降も、この基本枠組みに基づき実地研究病院で部分的に検証された暫定的な具体的方法論を、より現実的で多くの病院への展開可能性のある簡易な具体的方法として確立していくことが適切であることが明らかとなった。
加えて、インタビュー調査からは、院内研修の場合は教育する側の負担を考慮する必要があり、院外研修の場合は受講料等の負担の問題があることが確認できた。また、研修に要する時間を勤務時間と見做すか否かの判断は分かれていたが、勤務時間とする場合は状況に応じて残業手当が発生していること、シフトした職員への賃金や新規の人員確保や意識に関する問題などについても確認できた。
そこで、事業体の経営のために発達してきた管理会計論における分析手法を参考にして本研究班自身で方法論を確立することを目指し、タスクシフトごとの費用対効果を分析するにあたって測定すべき項目や、測定の実現可能性を把握するため、3つの実地研究病院においてタスクシフトに伴う教育研修等の詳細を調査した。また一つの実地研究病院では、シフト対象業務ごとの作業時間推計を行った。その結果、教育研修は院内で勤務時間として院内講師によって行われることが大半であること、事前研修はともかくシフト後の継続研修については測定が困難であることなどが明らかとなった。また作業時間換算で相当な量の医師業務が他職種に移管されていることがわかったが、既にタスクシフトが実現している項目については、効果や現場の負担の把握が難しいことも判明した。
また経営への影響を把握するために必要な職種別労務費単価については、各病院から入手することは困難であることが確認される一方、今回の研究目的からは必ずしも各病院の単価である必要はなく、むしろ全国的な平均単価の方が好ましい面もある。そこで本研究において利用するのに適した全国平均値の得られる既存調査を検討し、『医療経済実態調査』の「一般病院集計1」を基礎として利用することが妥当なことを明らかにできた。また単価算出のための妥当な想定年間労働時間を検討することもできた。
一方、タスクシフトの現状に関するアンケート調査に基づいて、限られた時間と研究費をより効率的・効果的に利用する観点から、次年度以降に優先的に費用対効果分析の対象とすべき業務を明確にすることができた。また、タスクシフトに伴う研修等の技術的対応のための初期投資の回収期間という経営上の負荷(費用)と医師労働時間短縮という効果により、各タスクシフトの費用対効果を評価するという基本枠組みが妥当であることを確認できた。次年度以降も、この基本枠組みに基づき実地研究病院で部分的に検証された暫定的な具体的方法論を、より現実的で多くの病院への展開可能性のある簡易な具体的方法として確立していくことが適切であることが明らかとなった。
加えて、インタビュー調査からは、院内研修の場合は教育する側の負担を考慮する必要があり、院外研修の場合は受講料等の負担の問題があることが確認できた。また、研修に要する時間を勤務時間と見做すか否かの判断は分かれていたが、勤務時間とする場合は状況に応じて残業手当が発生していること、シフトした職員への賃金や新規の人員確保や意識に関する問題などについても確認できた。
結論
本年度の研究により得られた実地研究及び労務費単価検討の成果は、令和4年度以降におけるさらなる実地研究及び推計研究において検証すべき暫定的な方法として活用される。またアンケート調査研究の成果は、令和4年度以降の研究において優先的に分析対象とされるべきシフト対象業務の明確化のための知見として活用される。さらにインタビュー調査の成果は、タスクシフトに伴う医療機関経営への影響を対応投資の回収計算という分析方法に適切に組み込むことに生かされる。
公開日・更新日
公開日
2023-04-18
更新日
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