文献情報
文献番号
202101010A
報告書区分
総括
研究課題名
長期的人口減少と大国際人口移動時代における将来人口・世帯推計の方法論的発展と応用に関する研究
課題番号
20AA2007
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
小池 司朗(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
研究分担者(所属機関)
- 林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所)
- 小島 克久(国立社会保障・人口問題研究所 情報調査分析部)
- 岩澤 美帆(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
- 千年 よしみ(国立社会保障・人口問題研究所国際関係部)
- 守泉 理恵(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
- 菅 桂太(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
- 中川 雅貴(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
- 石井 太(慶應義塾大学経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
わが国では2008 年頃より長期的な人口減少時代に突入しているが,近年では出生 数の急速な減少ともに,将来人口の動向に対していっそう注目が集まっている。また,2019 年の新規在留資格の創設に伴って外 国人労働者のさらなる拡大が見込まれていることに加え,国内では,東京圏における人口一極集中の継続や地方圏における著しい人口減少及び超高齢化の顕在化など,人口に関連する問題は非常に多岐にわたっている。本研究では,新たなフェーズに入っ たと考えられる国際人口移動をはじめ,出生・死亡・国内人口移動の短期的・長期的傾向を的確に把握して分析するとともに,国立社会保障・人口問題研究所(社人研) が実施する人口・世帯の将来推計の精度向上および推計手法の方法論的発展およびその応用に関する研究を行うものである。
研究方法
研究は以下の(1)〜(3)の3領域に分けて進めた。
(1)長期的人口減少と大国際人口移動時代 における人口・世帯分析の深化
(2)外国人人口の急増や新たな出生・死亡のトレンドに対応した将来人口・世帯推計モデルの開発
(3)将来推計の政策的シミュレーションへの応用に関する研究
なお,研究全般にわたり,社人研や研究者個人が属する国際的研究ネットワークを 最大限に活用し,諸外国や国際機関などと緊密な国際的連携を図って研究を進めた。また,研究所が有する人口・世帯の将来推計に関する研究蓄積を方法論やモデル構築研究に活かすとともに,所内外の関連分野の複数の研究者に研究協力者として参加を要請し,総合的に研究を推進した。
(1)長期的人口減少と大国際人口移動時代 における人口・世帯分析の深化
(2)外国人人口の急増や新たな出生・死亡のトレンドに対応した将来人口・世帯推計モデルの開発
(3)将来推計の政策的シミュレーションへの応用に関する研究
なお,研究全般にわたり,社人研や研究者個人が属する国際的研究ネットワークを 最大限に活用し,諸外国や国際機関などと緊密な国際的連携を図って研究を進めた。また,研究所が有する人口・世帯の将来推計に関する研究蓄積を方法論やモデル構築研究に活かすとともに,所内外の関連分野の複数の研究者に研究協力者として参加を要請し,総合的に研究を推進した。
結果と考察
2020年に実施された令和2年国勢調査の結果を受け、社人研が平成30年に実施した地域別将来推計人口の精度評価を行ったところ、前回推計とほぼ同水準の推計精度であった。大規模標本調査データを用いて、日本における男性の無子割合を推定したところ、1965-70年出生コーホートの45―49歳時点において33.8%に達していた。さらに、無子志向男性は、低所得、交際異性なし、乳幼児ふれあい経験が少ない、15歳時都市居住、仕事志向といった要因が予測因子として有意であった。合計出生率の対数値が(1)基準値、(2)結婚力の直接効果、(3)結婚力の間接効果、(4)残差項からなるモデルを構築し、市区町村別データを用いて各パラメータを推定した。 推計された結婚力の総合効果と夫婦出生力効果を組み合わせることで、(A)結婚力も出生力も高い自治体、(B)結婚力は低く夫婦出生力は高い自治体、(C)結婚力は高く、夫婦出生力は低い自治体、(D)両方とも低い自治体に分類することができる。(A)は沖縄県、九州南部・東部、中国地方、近畿日本海側、岐阜県北部、岩手県東部、北海道東部根室地域、(B) は九州北西部、(C)は北海道、東北地方、(D)は都市部に分布する傾向が見られた。未婚・有配偶・死別・離別の4状態を区別した多相生命表を2015年国勢調査に基づいて作成し、社人研の平成29年の全国将来人口推計の基礎データと組み合わせることで配偶関係別人口の将来人口推計を行ったところ、全体の傾向としては「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」(2018(平成30)年推計)とおおむね一致することが確認された。社会保障財政影響シミュレーションについては、令和元年財政検証のシステムを先行事業と同環境に移行し、財政検証結果の再現可能性を検証したところ、移行下の環境においても、財政検証ケースI〜Vについて、最終的な所得代替率・調整終了年度が再現された。
結論
将来人口推計の基本は過去の人口学的トレンドの「投影」であり、将来人口の「予測」ではないことには注意を要するが、推計精度の評価は推計手法の改善には不可欠である。それゆえ、今後も引き続き様々な観点から将来人口推計の精度評価を行う必要がある。日本の男性の無子化には経済要因の影響と成育過程要因の影響の両方が認められ、若年層への就業支援や経済的支援だけでなく、家族形成について包括的に考える機会を提供する政策も重要であることが示唆された。市区町村別出生率を結婚力効果と夫婦出生力効果とに分解するモデルは、データの収集および推定方法が簡便であることから、市区町村における結婚力および夫婦出生力の特徴を適切に評価することを可能にし、地域社会に求められる少子化対応策を検討する際に活用できると期待できる。配偶関係別人口の将来推計については、配偶関係の記述に優れた多相生命表に基づき、既存の将来人口推計とも整合性を図ったうえで配偶関係別将来人口推計を行うことが可能であることが明らかになった。社会保障財政影響シミュレーションについては、石井・小島・是川(2020)の方論に基づき、これを令和元年財政検証ベースへと改定する可能性の検証が進んだ。
公開日・更新日
公開日
2023-03-27
更新日
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