公的医療保険における外科手術等の医療技術の評価及びその活用方法等に関する研究

文献情報

文献番号
202101007A
報告書区分
総括
研究課題名
公的医療保険における外科手術等の医療技術の評価及びその活用方法等に関する研究
課題番号
20AA2004
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
岩中 督(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
5,597,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、公的医療保険における外科手術等の医療技術の評価手法及びその活用方法を検討することである。本年の検討では、診療報酬上の手術分類を考えるにあたり重要となるKコードと外保連試案の基幹コード(STEM7)の関係を評価した。現行の診療報酬上の手術分類(Kコード)については、診療報酬改定ごとに、様々な追加等が行われてきたが、イノベーションの進展に伴い手術の多様化・高度化等が進む中で、一定の限界が指摘されている。一方で、臨床的な観点から、外科系学会社会保険委員会連合(外保連)により整理されている手術・手技の分類として、外保連手術試案の手術の基幹コード(STEM7)がある。平成30年よりDPCデータにてKコードに並行してSTEM7の収集が実施されている。今回、KコードとSTEM7にどのような組み合わせが存在し、それが実臨床をどう反映しているのかを評価し、手術分類を広く議論するための資料を作成した。
研究方法
DPCデータベースを用いて、診療報酬上の手術分類と外保連手術試案の手術基幹コード(STEM7)がどのような対応で登録されているか、そして各組み合わせの麻酔時間の分布を評価することで各術式にかかる人的リソースの一面を評価し、現行の手術分類が適正に行われているのか、の検討材料を構築することを目指した【Kコード×STEM7の組み合わせと手術麻酔時間の関係の検討】。DPCデータは、厚生労働省保険局の匿名診療等関連情報の提供に関するガイドラインに基づき、データ利用申請を行った。2019年度(2019年4月~2020年3月)のDPCデータを対象に、事前に選択した手術術式(Kコード)が登録された入院症例のデータを抽出した。対象術式は、複数のKコード×STEM7の組み合わせが予測される整形外科・心臓血管外科・消化器外科領域のものを選択した。ただし、同一日に別の手術のKコードが登録されている症例は対象から除外した。対象症例より、Kコード×STEM7の各組み合わせの頻度を算出。また、同一KコードだがSTEM7の異なる手術間で、手術時間の分布に違いがあるかを間接的に評価する目的で、DPCデータEファイルの全身麻酔実施コードの「使用量」情報を用いて手術当日の総麻酔時間を集計、組み合わせごとに麻酔時間のヒストグラムを作成した。
結果と考察
検証対象とした術式については、以下のKコードとSTEM7の組み合わせパターンに分類することができた。①1つのKコードに対して、手術部位ごとにSTEM7が分類されている例、②1つのKコードに対して、使用する器材の違いによりSTEM7が分類されている例、③複数のKコードに対してSTEM7が同一とされている例。
DPCデータの麻酔時間に着目し、KコードとSTEM7を突合したところ、麻酔時間の分布からはKコードの細分化もしくは合理化が可能と思われる術式が存在した。例えば人工関節置換術においては、肩・股・膝関節が同一のKコードでまとめられているが、麻酔時間の分布は異なっていた(中央値:肩関節(180‐199分)、膝関節(160-179分)、股関節(140-159分))。また、Kコード655-2 腹腔鏡下胃切除術については、ロボット支援手術か否かで麻酔時間の分布が異なっていた(中央値:ロボット(380-399)、非ロボット(340-359))。一方、今回対象とした術式の中には麻酔時間が540分以上の症例が多く存在し、今回の評価手法では適切な評価が困難な術式もあった。
今後検討を継続するにあたり必要な観点として、STEM7で分類したときに特定の術式の症例数が少ないものの取扱いをどのようにするか、麻酔時間の長さと手術時間の長さがどの程度一致しているのか、また包括されている材料の違いなど麻酔時間以外にも考慮すべき点がないか等が挙げられる。
結論
DPCデータを用いたKコード×STEM7の組み合わせと手術麻酔時間の関係の検討からは、今回限定的に評価を行った対象術式群における、分類の精緻化や合理化が可能と思われる術式の存在が示された。また、術式選択や手術時間のカットオフ値の検討など、今後対象を拡大し検討を継続するにあたっての課題が示された。

公開日・更新日

公開日
2023-04-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-04-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202101007B
報告書区分
総合
研究課題名
公的医療保険における外科手術等の医療技術の評価及びその活用方法等に関する研究
課題番号
20AA2004
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
岩中 督(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、医療の効率化の推進等、将来のあるべき姿を踏まえた技術評価のあり方及び具体的な評価手法を検討することにある。初年度は、具体的な実証検討の対象として、2018年に保険償還されたロボット支援手術における医療の質の評価そして保険上の施設要件と関連する術者経験症例数と手術アウトカムとの関係を解析した。2年目は、診療報酬上の手術分類を考えるにあたり重要となるKコードと外保連試案の基幹コード(STEM7)の関係を評価した。
研究方法
初年度には、具体的に実証可能な施設因子と指標の関係を検討する一例として、National Clinical Database(NCD)の消化器外科手術データベースに記録された情報を用いて、ロボット手術を対象とした医療の質の評価と、施設要件と臨床アウトカムとの関連を評価した【消化器外科領域のロボット手術における術者経験症例数とアウトカムの関連】。2018年に保険償還を受けたロボット手術については、胃癌症例・直腸癌症例で10例、食道癌症例で5例という、術者経験症例数の基準が、実施施設の要件として設けられている。NCDに登録された2018年1月~2019年12月までに全国で実施されたロボット手術のデータを用いて、手術の成績、術者の経験症例数、それらの関連、そして術者の経験とともに患者選択がどのように拡大していくものか、評価を行った。
2年度には、DPCデータベースを用いて、診療報酬上の手術分類と外保連手術試案の手術基幹コード(STEM7)がどのような対応で登録されているか、そして各組み合わせの麻酔時間の分布を評価することで各術式にかかる人的リソースの一面を評価した【Kコード×STEM7の組み合わせと手術麻酔時間の関係の検討】。2019年度(2019年4月~2020年3月)のDPCデータを対象に、事前に選択した手術術式(Kコード)が登録された入院症例のデータを抽出した。対象術式は、複数のKコード×STEM7の組み合わせが予測される整形外科・心臓血管外科・消化器外科領域のものを選択した。対象症例より、Kコード×STEM7の各組み合わせの頻度を算出し、同一KコードだがSTEM7の異なる手術間で、DPCデータEファイルの全身麻酔実施コードの「使用量」情報を用いて手術当日の総麻酔時間を集計、組み合わせごとに麻酔時間のヒストグラムを作成した。
結果と考察
ロボット支援手術における評価にあたっては、2018-19年に胃癌・直腸癌・食道癌に対して実施されNational Clinical Databaseに登録されたロボット手術症例を対象に、術者の経験症例数ごとに患者背景や腫瘍因子との関係を評価した。患者年齢やASA-PSといった背景因子については、経験症例数との明確な関連はない一方、胃癌・直腸癌の症例については経験症例数が少ない時期においてはより難易度のより高くない術式の割合が多く、また腫瘍径が小さく、リンパ節転移のない症例の割合が多かった。Clavien Dindo 3a以上の術後合併症を主要な評価指標とした所、いずれの癌腫に対する手技についても、患者・腫瘍因子を調整する前の発生頻度では、経験症例数が基準値に満たない群のそれは基準値を超える群に比較して有意に上昇していること示されなかった。術者のロボット手術開始早期の症例が適切な患者選択などを通して、一定の安全性のもと実施されていることが示唆された。
KコードとSTEM7の評価からは、組み合わせのパターン分類が明らかにされ、また麻酔時間の分布からKコードの細分化もしくは合理化が可能と思われる術式が示された。例えば人工関節置換術においては、肩・股・膝関節が同一のKコードでまとめられているが、麻酔時間の分布は異なっていた(中央値:肩関節(180‐199分)、膝関節(160-179分)、股関節(140-159分))。今回対象とした術式の中には麻酔時間が540分以上の症例が多く存在し、今回の評価手法では適切な評価が困難な術式もあった。
結論
本研究の結果は、現在のロボット手術の施設要件による手術の安全性への寄与を議論する上で重要なエビデンスを提供した。DPCデータを用いたKコード×STEM7の組み合わせと手術麻酔時間の関係の検討からは、今回限定的に評価を行った対象術式群における、分類の精緻化や合理化が可能と思われる術式の存在が示された。また、術式選択や手術時間のカットオフ値の検討など、今後対象を拡大し検討を継続するにあたっての課題が示された。

公開日・更新日

公開日
2023-04-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-04-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202101007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
2018-19年に胃癌・直腸癌・食道癌に対して実施されたロボット手術症例において、術者の経験症例数ごとの術後合併症発生は、経験症例数が基準値に満たない群のそれは基準値を超える群に比較して有意に上昇していることは示されなかった。
 KコードとSTEM7の評価からは、組み合わせのパターン分類が明らかにされ、また麻酔時間の分布からKコードの細分化もしくは合理化が可能と思われる術式が示された。
臨床的観点からの成果
検討が行われた胃・食道・直腸の手術については、ロボット手術における施設要件(在籍術者の経験症例数の要件)が削除された。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
ロボット手術の術者経験症例数をアウトカムの関連に関する検討、Kコード×STEM7の組み合わせと手術麻酔時間の関係の検討の2つの評価は、ともに令和4年1月18日に開催された診療報酬調査専門組織(医療技術評価分科会)にて、資料での結果提示および報告が行われた。
その他のインパクト
結果については関連する学会と共有をし、関係者間での協議を行った。報告書は公開されている。術者要件の削除については複数のウェブメディアに取り上げられている。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
32件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
診療報酬調査専門組織(医療技術評価分科会)への資料提出2件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
岩中 督、隈丸 拓
診療報酬の観点からみたロボット支援手術―上部消化管(胃癌・食道癌)領域を中心に
手術 , 76 , 1385-1391  (2022)
原著論文2
岩中 督、隈丸 拓
ロボット支援手術と診療報酬
小児外科 , 55 (5) , 486-489  (2022)

公開日・更新日

公開日
2022-06-10
更新日
2023-06-30

収支報告書

文献番号
202101007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,275,000円
(2)補助金確定額
7,275,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,359,068円
人件費・謝金 4,081,002円
旅費 78,410円
その他 78,520円
間接経費 1,678,000円
合計 7,275,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2023-03-01
更新日
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