C型肝炎ウイルスキャリア成立の分子基盤と新規治療薬開発のための基礎的研究

文献情報

文献番号
200831029A
報告書区分
総括
研究課題名
C型肝炎ウイルスキャリア成立の分子基盤と新規治療薬開発のための基礎的研究
課題番号
H20-肝炎・一般-011
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 哲朗(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 下遠野 邦忠(千葉工業大学 附属総合研究センター)
  • 小池 和彦(東京大学 医学部)
  • 小原 道法(東京都医学研究機構 東京都臨床医学総合研究所)
  • 加藤 宣之(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 堀田 博(神戸大学大学院 医学系研究科)
  • 松浦 善治(大阪大学 微生物病研究所)
  • 瀬谷 司(北海道大学大学院 医学研究科)
  • 深澤 秀輔(国立感染症研究所 生物活性物質部)
  • 深澤 征義(国立感染症研究所 細胞化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
135,240,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HCVの生活環におけるゲノム複製と粒子形成過程の分子機構を解明することによりC型肝炎治療薬開発のための新たな標的を見出す。阻害剤スクリーニングを行い、創薬候補化合物を同定する。さらに、HCV感染に伴う肝発癌、脂質代謝異常などの病態、また持続感染の成立に関与する分子機構を明らかにし、得られる知見を基に発症予防などHCVキャリア対策に資する提案を行うことを目的とする。
研究方法
主として培養細胞でのHCV感染増殖、遺伝子複製系を利用した。
結果と考察
(1)HCV複製増殖機構の解析:
1)ATP産生酵素CKBがHCV NS4Aと会合し複製複合体へ運ばれエネルギー供給に働くことを示した。
2)小胞輸送関連分子VAP-BのバリアントVAP-CがHCV産生を負に調節することを明らかにした。
3)VLDL産生に必要なMTPの機能、またアポEの産生がHCV粒子産生に重要であることを示した。
4)ビメンチンがHCVコア蛋白の翻訳後修飾に介入しウイルス産生を制御することを見出した。
(2)HCV病原性発現機構の解析
1)HCV感染初期における細胞内中性脂肪量の減少とウイルス増殖に伴う脂質量及び1価不飽和脂肪酸の増加を明らかにした。
2)HCV感染により糖輸送体GLUT2発現と糖取り込みの低下を見出し、GLUT2発現低下に関わる転写調節機構を明らかにした。
(3)持続感染機構の解析
RNA認識複合体にDDX3 helicaseと ring-finger protein, Riplet が含まれることを明らかにした。
(4)新規HCV実験系の開発
新規ヒト肝癌細胞株Li23を樹立し、HCVレプリコン、全長HCV RNA複製細胞およびそのレポーターアッセイシステム、さらにHCV持続感染システムの開発に至った。
(5)抗HCV薬の探索
1)HCV感染キメラマウスモデルでリポソーム製剤NS9が抗ウイルス活性を示すことを見出した。
2)HCV全生活環を標的とする抗HCV薬スクリーニング系で約2000化合物を評価し、活性物質数種類を得た。感染初期過程を選択的に阻害する化合物などを取得した。

結論
HCVの生活環の分子機構、持続感染機構、また病原性発現機構に関与する種々のウイルス側及び宿主側因子を明らかにした。
新規実験モデル系(感染性ウイルス産生細胞、レプリコンシステム)の開発に成功し、抗HCV薬の探索に進展が見られた。

公開日・更新日

公開日
2009-04-06
更新日
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