新しいチーム医療等における医療・介護従事者の適切な役割分担についての研究

文献情報

文献番号
202101004A
報告書区分
総括
研究課題名
新しいチーム医療等における医療・介護従事者の適切な役割分担についての研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
19AA2003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 岡本 左和子(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
  • 小野 孝二(東京医療保健大学 看護学部 大学院看護学研究科)
  • 内藤 祐介(奈良県立医科大学 医学部)
  • 秋山 智弥(岩手医科大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
10,961,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
R3年度は、医師の働き方改革に向け、2020年に取りまとめられた「現行制度上実施可能な業務」の内「特に推進する44業務」に基づいて、医療機関の先進事例の収集と多職種が関わる面分業できる取り組みを調査し、整理、推奨することを目的とした。また、タスクシフト・シェア後の医療安全の検証も実施した。
研究方法
1) 聞き取り調査:医療の職能団体から良好な取り組みを紹介いただき、訪問視察またはオンライン視察を実施した。2) 医療安全の検証:周術期において、臨床工学技士麻酔アシスタント(Clinical Engineer Anesthesia Assistant; CEAA)が麻酔科医とともに担当した症例について、連続する5日間において前向き観察研究を実施した。その事象を放置した場合、患者の合併症に発展する可能性がある事象の中で臨床工学技士がその手術室で最も早く検知したイベントを抽出し、統計的考察を行った。3) 文献調査および米国カリフォルニア州看護協会会長へのインタビュー。
結果と考察
医療の職能団体からの推薦に基づく先進事例の視察では、「特に推進する44業務」の内9業務、その他の現行制度上実施可能な業務の内2業務について視察を行った。医師の時短には確実に貢献できていた。また、法改正によって、技術的にはさらなるタスク・シフト/シェアが可能であるという現場の声がある一方で、医師の労働時間短縮につながることは理解しながらも、専門性を必要としない業務をこれ以上受け入れる余力はないといった現場の実態も確認することができた。
救急外来において、医師から看護師への包括的指示やプロトコールに基づく採血・検査の実施に取り組んでいる3病院にインタビューを実施した。医師の時短については貢献し、プロトコールの概要と作成・活用、包括的指示の活用に向けた組織の取り組み方、その効果・影響、タスクシフト・シェアに取り組む上での工夫や成功要因が明確になった。同時に課題等も明らかになった。
また、これまでの線分業だけではなく面分業への移行を睨み、医師事務作業補助者を対象に視察を行った。医師事務作業補助者が担うべき業務と医師以外の医療従事者が担うべき業務を同時に整理し、Information and Communication Technology (ICT)も活用して業務手順に組み込むことによって、事務分野と医療従事者間との面分業が推進されることが明らかになった。
在宅医療について、特別養護老人ホームの視察では、医師の時短に介護士が直接関わることはなかった。しかし、在宅医療・介護分野においても医師と看護師、看護師と介護士の連携と情報共有が密であり、在宅医療チームや施設の対応プロトコールが的確で全体で共有できているほど、委託医の不要な訪問や看取りが削減されていた。さらに、看取りに対する看護師の見立ての確かさと、そのためには介護士からの患者についての情報が十分に共有できているところほど、救急搬送を制限できており、それによって救急救命士の出動や受け入れ先の病院の医師や他の医療従事者の時間が短縮されていた。
医療安全に関する研究では、周術期において連続5日間の調査期間で合計116件のアラートが存在し、1症例あたり1.6件と比較的高頻度でアラートが発出されていた。CEAAがいない場合、これらの業務は一人の麻酔科医により遂行されるが、マルチタスクは認知制御能力の低下、パフォーマンスの低下を引き起こし、エラーの回数を増加させる。そのため、本来、複数人でこれらの業務を負担することが重要である。それをCEAAが担うことで、調査を行った医療機関の現行システムにおいて、医療安全の向上が確認できた。
米国における医師と看護師・介護士の連携については、メールでの質問状と文献調査を実施した。米国における介護施設入居者への医師の診療の状況や、外来においては医師以外の職種に委任していることが多く、その方がケアの質が向上するとするケースも報告されていた。米国では、病院や診療所以外で高齢者の診療を行う医師の数があまりにも少なく、様々な資格を持つコメディカルと介護士によって補われている分野も多いため、タスク・シフト/シェアがどの程度医師の労働時間の短縮や負荷の軽減につながっているのかは明らかではなかった。
結論
医療の職能団体からの好事例を中心にタスクシフト・シェアが促進されている状況が確認できた。まだ多くはないが必然的に多職種連携ができている医療機関も認められ、タスクシフト・シェアの流れには前向きに取り組まれていた。医療安全上も慎重に進められていた。在宅医療・介護分野においても間接的に医師や医療従事者の時短には貢献できていた。全体的に、本年度の目的は達成され、この後の手順やプロトコールの充実に貢献できる結果を示すことができた。

公開日・更新日

公開日
2023-04-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-04-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202101004B
報告書区分
総合
研究課題名
新しいチーム医療等における医療・介護従事者の適切な役割分担についての研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
19AA2003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 岡本 左和子(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
  • 内藤 祐介(奈良県立医科大学 医学部)
  • 小野 孝二(東京医療保健大学 看護学部 大学院看護学研究科)
  • 秋山 智弥(岩手医科大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、働き方改革に伴う医師の時間外労働の上限規制の適用開始(2024年4月1日)に向け、1) 現行法内ですでに進められている医師からのタスクシフト・シェアの実態と医師の労働時間の短縮(時短)への効果を明確化、2) タスクシフト・シェアを横展開と面分業できる好事例の抽出と整理、3)医師の時短効果や医療安全に関する検証、4) 海外のタスクシフト・シェアの実情を調査・確認である。
研究方法
1)アンケート調査: 現行法内でのタスクシフト・シェアの取り組み項目、内容、医師の時短数等について、医療機関と医療の職能団体にアンケート調査を実施。2)聞き取り調査:横展開と面分業できる良好事例の収集と実態把握のための視察。3)タスクシフト・シェアの効果と医療安全の検証:初年度は、臨床工学技士麻酔アシスタント(CEAA)が1ヶ月間毎日、麻酔科医の代わりに実施した業務内容とその時間を業務日報に記録。麻酔科医の勤務状況の指標は出退勤簿より総活動時間と麻酔時間を抽出。タスクシフト率は、(タスクシフト時間)/(タスクシフト時間+総活動時間)及び(タスクシフト時間)/(タスクシフト時間+麻酔時間)で評価。2年目は、医師が当直中に看護師から連絡を受けた内容、回数、医師の当直前後での唾液アミラーゼ値を約2ヶ月間収集。特定行為看護師の配置時の特定行為の実施内容を記録し、特定行為看護師の配置日と非配置日で二群に分類し統計学的に検討した。3年目は、連続する5日間で、放置した場合患者の合併症に発展する可能性がある事象の中で、CEAAがその手術室で最も早く検知した事象を抽出した。4) 海外視察および文献調査。
結果と考察
初年度のアンケート調査の結果、医師の指示と指導の下、タスクシフト・シェアに取り組んでいる医療機関は多く、良好事例や医療機関内で教育プログラムを構築している先進的な取り組み等も抽出できた。この調査結果は、働き方改革検討会の資料や現行制度上実施可能な業務」の内「特に推進する44業務」の発出資料の一部として活用された。また、法改正が必要なタスクシフト・シェアの内容に関する検討の一助にもなった。
視察は、タスクシフト・シェアの実際を現場で確認し、多職種連携のルールやきめ細かな工夫、タスクシフト・シェアへのモチベーションの高さが確認できた。
その中でも、医師事務作業補助者は多くの医師から必要とされ、医師の指示の下、予診の補助等で医師の時短や作業低減だけでなく、救急救命室でも搬送された患者の情報作成等で医師だけでなく多職種の時短と潤滑な連携に貢献していた。
在宅医療における医看連携でカルテ情報開示の申請や在宅医療者と介護職とのやりとり等の時短には、ICTの整備で医師の時間を6分の1に削除した事例があった。また介護施設では、常に患者に関する情報を介護士と看護師で共有することで、看護師の的確な判断をサポートでき、委託医の無駄な往診や救急搬送が削減されていた。
検証研究は、初年度の結果、CEAAの出勤は平均7.2人/日で、タスクシフト時間は合計544時間。計算式に従いタスクシフト時間は、総活動時間を分母とした場合20.1%、麻酔時間を分母とした場合23.1%であった。麻酔科医の働き方の効率化と時短が示唆された。
2年目は、重症COVID-19病床で、特定行為看護師が不在時の医師の呼び出し回数は中央値2.2回で、勤務時には1.2回と有意に低くかった (p=0.02)。よって、医師の時短効果が示唆された。
3年目は、CEAAが麻酔補助をした症例は合計71症例で、これらに対して116件のアラートが存在した(1.6アラート/症例)。CEAAによって症例の問題点を早期に発見でき、医療安全への貢献が示唆された。
海外視察は、1年目、放射線科医アシスタント (RA)に関して、米国ジョンズ・ホプキンス病院、カリフォルニア大学デービス校及びサンフランシスコ校を視察した。RAは、比較的近年、放射線科医の労働量低減と時短を睨んで、医師の要望で誕生した修士課程教育を要する職種で、RA導入によって医師は15%程時短ができていた。2〜3年目は、在宅医療での好事例の視察予定が、コロナ禍により実施できなかった。文献調査やメールでの質問への回答で、米国でも在宅医療でのタスクシフト・シェアの実態が不明確で、課題があることが確認できた。
結論
現行法内においてタスクシフト・シェアを実施している医療機関は多かった。本研究の成果が、働き方改革検討会の資料の一部となり、「現行制度上実施可能な業務」の内「特に推進する44業務」の成立に一助となった。さらに今後、タスクシフト・シェアの手順や管理などの検討資料の一部となり得ると考える。当初の研究班の目的は達成し、タスクシフト・シェアで必要な資料を提供でき良好な結果を得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2023-04-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-04-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202101004C

収支報告書

文献番号
202101004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,580,000円
(2)補助金確定額
13,580,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,079,800円
人件費・謝金 2,498,090円
旅費 1,248,185円
その他 5,134,925円
間接経費 2,619,000円
合計 13,580,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-03-01
更新日
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