医師の専門性を考慮した勤務実態を踏まえた需給等に関する研究

文献情報

文献番号
202101003A
報告書区分
総括
研究課題名
医師の専門性を考慮した勤務実態を踏まえた需給等に関する研究
課題番号
19AA2002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
小池 創一(自治医科大学 地域医療学センター地域医療政策部門)
研究分担者(所属機関)
  • 松田 晋哉(産業医科大学 公衆衛生学教室)
  • 松本 正俊(広島大学大学院 医系科学研究科)
  • 今中 雄一(京都大学大学院 医学研究科)
  • 康永 秀生(東京大学大学院 医学系研究科)
  • 鈴木 達也(香川大学 創造工学部)
  • 谷川 武(順天堂大学 大学院 医学研究科公衆衛生学講座)
  • 堀口 裕正(独立行政法人国立病院機構 本部 総合研究センター 診療情報分析部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
14,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 医師の働き方改革と専門医制度はともに医療提供体制を維持する上で極めて重要な事柄であり、相互に関連しあうものである。また、医師の質の一層の向上及び医師の偏在是正が社会的に大きな課題とされる中、専門医制度についても大きな注目が集まっている。
 このため本研究班では、医師の働き方改革に関連して、医師の専門性を考慮した勤務実態を踏まえた需給等に関する研究として、令和元年度に実施した医師の勤務実態の調査結果について、教育に焦点を当てた分析を行った他、ニーズに基づいた専門医の養成に係る研究として、新型コロナが医師のキャリアに与えた影響の検討、集中治療室(ICU)病床等の効率利用に関する分析、医師数と医師配置の評価に関する研究、診療情報集積基盤(NCDA)における医師診療実績に関する研究等、医師専門性を考慮した需給に関する諸課題を明らかにすることを目的とした研究を行った。
研究方法
 3年計画の3年目となる令和3年度は、令和元年度に実施した全国の医療機関に勤務する医師約10万人程度を対象とした大規模調査について、教育に焦点を当て、その特徴を明らかにするための分析、長時間労働の医師の追加的健康確保措置に係る研究として、米国及び欧州(英国とドイツ)について調査、厚生労働科学研究(厚生労働科学特別研究事業)「新型コロナウイルス感染症等の健康危機管理への備えと対応を踏まえた医療提供体制のための研究」で行った病院勤務医師を対象とした調査データの追加分析を行った。また、厚生労働科学研究DPCデータ研究班データベースに含まれるICU / HCU入院患者のデータを用いた集中治療室病床等の効率利用に関する分析や、地理情報システム(GIS)、2SFCAモデルを用いた医師数と医師配置の評価に関する研究、診療情報集積基盤(NCDA)における医師診療実績に関する研究として、NCDAデータを活用し登録されているレコード別に実施した医師の専門医取得の有無を調査した。
結果と考察
 医師の専門性を考慮した勤務実態を踏まえた需給等に関する研究では、教育に費やす時間は、大学病院で長いこと、研究と教育時間が長いと診療が短く、この傾向は歳を重ねると強くなることがわかった。長時間労働の医師の追加的健康確保措置に係る研究では、米国及び欧州(英国とドイツ)についての実態を明らかにした。
 ニーズに基づいた専門医の養成に係る研究では、新型コロナの流行が医師需給に与える影響については限定的なものとなっている可能性を示唆する結果が得られたが、調査時点以降の新型コロナの流行の状況が与えた影響については十分に評価が出来ていない点を踏まえ、引き続きの検討が必要であると考えられた。
 集中治療室病床等の効率利用に関する分析では、待機的手術の術後にICUに入院させることが在院死亡の低下と関連していたのは、心臓大血管手術のみであり、他の待機的手術の術後管理をICUで行うことは、在院死亡低下に関して言えば有効性を認めなかった。心血管手術以外の待機手術後のICU入室はアウトカムに影響を与えないこと、また呼吸器管理を要さない心不全患者は必ずしもICU入院が必要でないことが示唆された。ICU病床数そのものの適正化や、ICU利用の効率化の必要性が示唆される結果を得た。
 医師数と医師配置の評価に関する研究では、量的に必要な医師数を見積もることは低いカバー率を前提とする際には有効であるが、前提とするカバー率を高く設定した時、地理的な偏在が必要医師数に大きく影響することを示唆する所見を得た。
 診療情報集積基盤(NCDA)における医師診療実績に関する研究では、入院については1入院を単位としてその主治医を1名データから確定、外来については1回の外来受診ごとに担当した医師を1名特定し、その医師がどのような属性を持っているかについて調査分析を行うことを目的としてデータセットを作成するとともにデータ作成システムの構築を行うことができた。また、各診療行為別で専門医の有無についてのデータを作成することができた。しかしながら、データの確からしさについての評価については課題が残った。
結論
 本年度の研究を通じて、医師の専門性を考慮した勤務実態を踏まえた需給等を明らかにするために必要となる諸課題として重要な、医師の勤務実態のうち教育の側面の分析、新型コロナが医師のキャリアに与えた影響、集中治療室(ICU)病床等の効率利用に関する分析、医師数と医師配置の評価に関する研究、診療情報集積基盤(NCDA)における医師診療実績に関する研究等を行ない、その実態を明らかにするとともに、今後の検討に必要な情報を得ることができたものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2023-04-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-04-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202101003B
報告書区分
総合
研究課題名
医師の専門性を考慮した勤務実態を踏まえた需給等に関する研究
課題番号
19AA2002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
小池 創一(自治医科大学 地域医療学センター地域医療政策部門)
研究分担者(所属機関)
  • 松田 晋哉(産業医科大学 医学部・公衆衛生学)
  • 松本 正俊(広島大学医学部)
  • 今中 雄一(京都大学 医学研究科)
  • 康永 秀生(国立大学法人東京大学 大学院医学系研究科公共健康医学専攻臨床疫学・経済学)
  • 鈴木 達也(香川大学 創造工学部)
  • 谷川 武(順天堂大学 大学院 医学研究科公衆衛生学講座)
  • 堀口 裕正(独立行政法人国立病院機構 本部 総合研究センター 診療情報分析部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医師の働き方改革と専門医制度はともに医療提供体制を維持する上で重要な課題であり、相互に関連しあうものである。このため、本研究班では、医師の専門性を考慮した勤務実態を踏まえた需給等に関する研究として、医師の勤務実態を明らかにするための調査実施及び長時間労働の医師への健康確保措置に関するマニュアル作成を行った他、ニーズに基づいた専門医の養成に係る研究、集中治療室(ICU)病床等の効率利用に関する分析、医師数と医師配置の評価に関する研究、診療情報集積基盤(NCDA)における医師診療実績に関する研究等を行い、医師の専門性を考慮した需給に関する諸課題を明らかにすることを目的とした研究を行った。
研究方法
医師の専門性を考慮した勤務実態を踏まえた需給等に関する研究では、医師の勤務実態把握に関しては、全国の医療機関に勤務する医師約10万人程度に本研究参加を呼びかけ、令和元年9月に医師の働き方に関する大規模調査を実施した。また「長時間労働の医師への健康確保措置に関するマニュアル」を作成した。
 ニーズに基づいた専門医の養成に係る研究では、診療科ごとの将来必要な医師数の見通しの改善方法について検討を行なった。また、診療科別医師の勤務時間、新型コロナの流行が今後の医師のキャリアの見通しに与えた影響について、分析を行った。
 ICU病床等の効率利用に関する分析では、新聞記事と論文データベースを用いて、医療に関する新聞報道件数及び学術報告件数の推移に関する検討を行った他、厚生労働科学研究DPCデータ研究班データベースに含まれるICU / HCU入院患者のデータの解析を行った。
 医師数と医師配置の評価に関する研究では、居住地から診療科ごとの専門医が勤務している医療施設までのアクセスを地理情報システム(GIS)を用いて計測、専門医の必要数の推計のための基礎的な検討、集計単位の違いによる必要医師数推計の差、医療資源量と立地を加味した必要医師数の推計を行った。
 NCDAにおける医師診療実績に関する研究では、診療科別医師の診療行為の実態把握を行うための手法の検討等を行い、数病院でのフィージビリティーテスト及びデータ作成システムの構築を行った。
結果と考察
医師の勤務実態を明らかにするとともに、「長時間労働の医師への健康確保措置に関するマニュアル」を作成することできた。以上の結果は、2024年度からの医師の時間外労働の上限規制以降の働き方についての参考となると考えられた。
 ニーズに基づいた専門医の養成に係る研究では、診療科ごとの将来必要な医師数の見通しを把握するためには、常に最新のデータを活用するとともに、診療実態をより正確に把握する情報が得られた場合、順次それらを活用することが有益であり、推計方法の限界を踏まえた定期的な見直しが必要であることを示した。また、今後の専門医の需給を考えるうえで重要となる性・年齢階級別・診療科群別勤務時間や新型コロナの流行と今後の医師のキャリアの見通しについての最新の情報を得ることができた。
ICU病床等の効率利用に関する分析では、医療に関連するトピックについては、メディアの関心と医療現場における認識や関心との間には解離があることを示唆する所見が得られた他、ICU病床の占有率および効率利用に関する分析結果から、日本の集中治療の予備力の実態や、心血管手術以外の待機手術後のICU入室はアウトカムに影響を与えないこと等を示唆する所見が得られた。
 医師数と医師配置の評価に関する研究では、量的に必要な医師数を見積もることは、集計単位が十分に小さい場合や、低いカバー率を前提とする際には簡便に推計できるため有効であるが、前提とするカバー率を高く設定した時、地理的な偏在が必要医師数に大きく影響することを示唆する所見を得ることができた。
 NCDAにおける医師診療実績に関する研究では、調査手法及びデータセット作成手法のさらなるブラッシュアップを実施、データ抽出の処理速度向上に向けた取組等を行うことができた。だたし、新型コロナウイルスの流行とともに、患者数および診療行為数の大幅な減少といった不連続な変化が把握され、現時点で今回作成したデータベースを用いて診療行為の実態把握を行う上では課題が残ることも明らかとなった。
結論
本研究班を通じ、直近の医師の勤務実態が明らかになるとともに、医師への健康確保措置に関するマニュアルが作成でき、ニーズに基づいた専門医の養成に係る研究、ICU病床等の効率利用に関する分析、医師数と医師配置の評価に関する研究、NCDAにおける医師の診療実績に関する研究を行うことができた。これらの研究を通じ、医師の専門性を考慮した勤務実態を踏まえた需給等に関して新たな知見を得ることができたものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2023-04-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-04-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202101003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
令和元年時点の医師の勤務実態について明らかにするとともに、「長時間労働の医師への健康確保措置に関するマニュアル」を作成した。また、診療科別必要医師数の推計方法についてのブラッシュアップを行うとともに、推計に必要な基礎データが得られた他、新型コロナの流行が医師需給に与える影響等について検討することができた。
臨床的観点からの成果
本研究は社会医学分野の研究のため、該当なし。
ガイドライン等の開発
令和元年度における医師の勤務実態については、令和2年8月28日第8回医師の働き方改革の推進に関する検討会他で紹介され、医師の時間外労働の上限規制のための具体的な時間数の議論に貢献した。
また、令和2年9月30日 第9回医師の働き方改革の推進に関する検討会で「長時間労働の医師へ健康措置確保に向けたマニュアル」が紹介され、長時間労働の医師への健康確保に向けた議論の基礎資料となった。
その他行政的観点からの成果
長時間労働の医師に対する健康確保措置は、有効な休息・睡眠の取得であることを共通のコンセンサスとし、雇用者の健康確保措置が単に長時間労働規制ならびに勤務間インターバルの取得にとどまらない活用が今後期待される。
その他のインパクト
診療科別必要医師数の推計方法の改善やブラッシュアップに必要な資料収集、さらに新型コロナの流行が医師需給に与える影響等について検討を行った結果は、今後の医師需給をめぐる検討の上で基礎資料となることが期待される。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-06-10
更新日
2023-06-09

収支報告書

文献番号
202101003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
18,400,000円
(2)補助金確定額
18,064,000円
差引額 [(1)-(2)]
336,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,635,379円
人件費・謝金 4,049,888円
旅費 21,870円
その他 8,111,774円
間接経費 4,246,000円
合計 18,064,911円

備考

備考
自己資金で補充したため。

公開日・更新日

公開日
2023-03-01
更新日
-