データマイニング手法を用いた効果的なC型肝炎治療法に関する研究

文献情報

文献番号
200831024A
報告書区分
総括
研究課題名
データマイニング手法を用いた効果的なC型肝炎治療法に関する研究
課題番号
H20-肝炎・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
泉 並木(武蔵野赤十字病院 消化器科)
研究分担者(所属機関)
  • 黒崎 雅之(武蔵野赤十字病院 消化器科)
  • 坂本 直哉(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 坂本 穣(山梨大学大学院 医学工学総合研究部)
  • 鈴木 義之(虎ノ門病院 肝臓センター)
  • 菅内 文中(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
  • 平松 直樹(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 岩崎 学(成蹊大学理工学部 情報科学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
22,314,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ペグインターフェロン・リバビリン併用療法において、ウイルス側要因、宿主側要因、治療要因を網羅的に解析し、これらを統合的に組み入れた治療効果予測、および個別化治療アルゴリズムを確立することを目的とした。
研究方法
班員施設からペグインターフェロン・リバビリン併用療法を行なったC型慢性肝炎患者のデータを収集し、すべての臨床データを説明変数とし、ウイルス学的著効(SVR)などの治療効果を目的変数としてデータマイニング解析を行ない、判別アルゴリズムを構築した。
結果と考察
治療前のSVR予測アルゴリズムでは、血小板、年齢、HCVRNA量、性別、AFP、GGT、NS5A-ISDR変異数、Core70変異、年齢、LDL-CholがSVR規定因子として選択された。

治療反応性を含めたSVR予測アルゴリズムでは、HCV陰性化時期、HCV2log低下時期、年齢、薬剤投与量、治療期間が有意な説明因子として抽出された。12週時にHCVが陽性でも100分の1に低下し、ペグインターフェロン投与量が平均1.3ug/kg以上であればSVRが40%であった。48週までのペグインターフェロン投与量が平均1.3ug/kg未満でも48週超の延長治療を行なうことによりSVRは16%から35%に向上した。
12週以内にHCVが陰性化しない症例では、Core70野生型では22%、Core70変異型でもCore91 野生型であれば25%がSVRとなり、さらに48週超の延長治療によりCore91 野生型のSVRは41%に向上した。

本解析により、従来は注目されなかったAFP、GGT、LDL-Cholesterolが治療効果と密接に関連することが明らかとなり、さらにHCV遺伝子解析を加味することにより、より精密な予測が可能となることを示した。さらに、薬剤投与量、投与期間が治療効果に密接に関連することを示し、ウイルス陰性化が遅れた場合でも薬剤投与量が十分であれば30-40%でウイルス学的著効が得られ、また48週時点での薬剤投与量が少ない症例でも延長治療により著効率が20ポイント上昇することを示した。

結論
データマイニング解析により、治療開始前に効果を予測すること可能である。HCV陰性化時期とHCV遺伝子解析を加味することにより、さらに精密な予測が可能である。これらの知見はEBMに基づく治療効果予測と、それに基づく治療計画において重要な情報を示し、肝臓非専門医ならびに専門医向けの適切な治療アルゴリズムの基盤となる。

公開日・更新日

公開日
2009-04-15
更新日
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