癌胎児性抗原を利用した肝がんの超早期診断法と発症予防ワクチンの開発

文献情報

文献番号
200831020A
報告書区分
総括
研究課題名
癌胎児性抗原を利用した肝がんの超早期診断法と発症予防ワクチンの開発
課題番号
H20-肝炎・一般-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
中面 哲也(国立がんセンター東病院 臨床開発センター がん治療開発部 機能再生室)
研究分担者(所属機関)
  • 木下 平(国立がんセンター東病院 上腹部外科)
  • 池田 公史(国立がんセンター東病院 肝胆膵内科)
  • 古瀬 純司(杏林大学医学部 腫瘍内科)
  • 千住 覚(熊本大学大学院医学薬学研究部 免疫識別学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
24,696,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
癌胎児性抗原Glypican-3(GPC3)由来ペプチドを用いて、ワクチンや免疫細胞療法などの新規治療法、再発予防法、予防法の開発を目指すとともに肝細胞癌の超早期診断法を開発する。
研究方法
1.進行肝細胞癌患者を対象としたGPC3を標的とするペプチドワクチンの臨床第1相試験の実施
2.肝細胞癌の超早期診断法の開発
3.GPC3染色性と予後および臨床病理学的項目の相関の検討
4.GPC3ペプチド特異的CTL療法の開発
5.ES細胞由来の樹状細胞を用いた細胞ワクチンの開発
結果と考察
肝細胞癌のワクチン開発では、臨床第1相試験は当初3mg投与までで完了する予定であったが、ワクチン効果に投与量依存性が示唆されたため、さらに投与量を増やし、10mg投与3例、30mg投与3例の計6例を追加実施した。そのため第2相試験の実施が遅れたものの、30mgの1例で著明な効果が出現した。またスーパー特区に採択され、本GPC3ペプチドワクチンも最優先課題の一つとなり、今後は進行肝細胞癌を対象とするものだけでなく、根治的治療後の再発予防を目的とした第2相試験を実施して一気に有効性の証明を目指す。
肝細胞癌の超早期診断法の開発においては、一部の慢性肝炎・肝硬変患者の末梢血中にGPC3ペプチド特異的CTLの存在や、GPC3蛋白、抗GPC3-IgG抗体、β2ミクログロブリンを検出した。またGPC3の発現が肝細胞癌の予後予測因子になりうる可能性が示唆された。今後は多くの肝硬変患者をもつ施設を加え、超早期診断法の有効性を検証する臨床疫学研究も計画、実施する。
GPC3ペプチド特異的CTL療法の開発については、効率の良い培養法を見出しつつあり、引き続き実施し完成を目指す。
ES細胞由来樹状細胞ワクチン及び細胞療法の開発については、β2ミクログロブリンあるいはTAP1の遺伝子改変により、任意のMHCハプロタイプのレシピエントに対して細胞ワクチンとして使用可能な樹状細胞を作製できることを明らかにしただけでなく、マウスのiPS細胞から機能的な樹状細胞とマクロファージを作製できることを確認した。今後はヒトiPS細胞由来の樹状細胞を用いた免疫療法の開発に重点を置く。
結論
GPC3由来ペプチドワクチンの安全性と免疫学的有効性を確認し、臨床的効果も見出すことができた。今後は第2相試験を実施する。肝細胞癌の超早期診断法については、GPC3ペプチド特異的CTLの存在や、GPC3蛋白などの検出が有効であるかを検証する。また、マウスのiPS細胞から機能的な樹状細胞が作製でき、今後はヒトiPS細胞由来の樹状細胞を用いた免疫療法の開発も目指す。

公開日・更新日

公開日
2009-04-06
更新日
-