テーラーメイド治療を目指した肝炎ウイルスデータベース構築に関する研究

文献情報

文献番号
200831018A
報告書区分
総括
研究課題名
テーラーメイド治療を目指した肝炎ウイルスデータベース構築に関する研究
課題番号
H19-肝炎・一般-013
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
田中 靖人(名古屋市立大学大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 徳永 勝士(東京大学大学院医学系研究科)
  • 五條堀 孝(国立遺伝学研究所 生命情報・DDBJ研究センター)
  • 溝上 雅史(国立国際医療センター国府台病院 肝炎・免疫研究センター)
  • 本多 政夫(金沢大学大学院医学系研究科)
  • 黒崎 雅之(武蔵野赤十字病院)
  • 長尾 由実子(久留米大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
45,864,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦における慢性肝疾患の原因ウイルスであるHBV感染者は約150万人、HCV感染者は約200万人と推定され、その一部は慢性肝炎から肝硬変・肝細胞癌へ移行するがその機序は不明である。また、HCVにはPegIFN・リバビリン併用療法が導入され、一定の効果はあるが完治率は50%以下で副作用発現率は高率である。本研究では肝炎ウイルス感染に対する応答性の個人差に関わるヒトSNPとウイルス側の遺伝子要因も明らかにし、両者を網羅的に収集し、統合的にデータベース化することで肝炎テーラーメイド治療の確立を目指す。
研究方法
1)SNP Array 6.0を用いた90万SNPタイピング、2)HBV遺伝子配列の決定、3)統合型データベースの設計、4)DNAマイクロアレイ、5)データマイニングの導入、6)肝外病変の検討。
結果と考察
1)検体及び付帯情報の収集:ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針に従い、全国15施設より慢性ウイルス性肝疾患患者から合計685検体を得た(平成21年3月5日現在)。2)ヒトSNPs解析:健常対照者200検体及び肝疾患群406検体について90万種のSNPタイピングを終了し、各SNPのアリル頻度、遺伝子型頻度等について健常者群、患者群、肝炎亜型患者群の間でゲノムワイド関連分析を行った結果、ゲノムワイド有意水準(p値 ≤ 5×10-7)に達する3か所の遺伝子領域を検出した。3)肝炎ウイルス統合データベースの構築:患者SNPs情報を、その臨床的背景情報とともに管理、解析するデータベースを構築し、収集したデータの登録を行った。併せて、同データベースを利用/遂行するインターフェースのプロトタイプを構築した。4)肝炎テーラーメイド治療を目指した各種要因の解明:a) ペグインターフェロン・リバビリン(PEG-IFN/RBV)併用療法の治療抵抗性因子の解明。b) HBV関連肝癌進展に寄与する因子。c) HBV・HCV感染に伴う肝外病変に寄与する因子を検討した。

結論
今年度までに明らかとされたウイルス遺伝子情報、SNP情報、臨床情報はすでに統合され、肝炎ウイルス統合データベースのプロトタイプは完成した。将来的には、このデータベースを活用することにより、適切な治療法の選択および新たな治療法の開発で患者の予後を改善するのみならず、肝硬変・肝癌という高度な医療が必要な患者数を減らすことにより、医療費の低減に繋がり、社会の福祉に寄与することができる。

公開日・更新日

公開日
2009-05-08
更新日
-