ウイルス肝炎による肝がんの再発防止メカニズムの解明に関する研究

文献情報

文献番号
200831013A
報告書区分
総括
研究課題名
ウイルス肝炎による肝がんの再発防止メカニズムの解明に関する研究
課題番号
H19-肝炎・一般-008
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
小俣 政男(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 石橋 大海(国立病院機構長崎医療センター 臨床研究センター)
  • 正木 尚彦(国立国際医療センター戸山病院 第二消化器科 )
  • 古瀬 純司(杏林大学医学部 内科学腫瘍科)
  • 金井 文彦(千葉大学医学部附属病院 消化器内科)
  • 吉田 晴彦(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
  • 椎名 秀一朗(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
  • 建石 良介(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
25,990,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
年率15?20%に及ぶ再発が肝癌の予後改善を阻んでいる。本研究では最新の手技を用いて遺伝素因および癌結節遺伝子異常を解し、最適化した再発防止戦略の構築を目指す。
研究方法
1.癌結節遺伝子異常
癌部遺伝子異常を調べて再発肝癌のクロナリティを解析した。切除肝癌6症例17結節を用いて11領域22サイトについてTaqman SNPジェノタイピングアッセイを行った。LOHの不可逆性に注目し、初発癌でみられたLOHが再発癌にない場合は異クローンとした。プロフィールに矛盾がない場合は、偶然に生じる確率を計算した。

2.一塩基多型(SNP)解析
90万のSNPを解析するマイクロアレイを用いて解析を行った。C型肝細胞癌症例で、男性、飲酒量50g/日未満で、発症年齢が若い順に49症例を解析対象とした。白血球DNAをアフィメトリックスSNP6.0により解析し、健常者コントロール184例と比較した。
結果と考察
1.癌結節遺伝子異常
LOH解析により、単発肝癌切除後6.5年を経て同一クローンが再発した症例がある一方、同時多発肝癌癌結節が異なるクローンである症例もみられた。従来、再発癌が初発癌よりも低分化である場合に微小肝内転移が疑われてきたが、このような分類は必ずしも正確でないことが判明した。新規発癌と微小残存癌では有効な対策が異なり、前者は抗ウイルス療法が有効と考えられるが、後者には抗腫瘍療法が必要であろう。今後各再発様式についてリスクを解析しそれに応じた再発抑止療法を構築することが重要である。

2.肝癌に関与するSNP
コールレートが良好でHardy-Weinberg平衡検定が0.1%以上、マイナーアレル頻度が1%以であるサイトは415,320あった。アレル頻度解析でp値が10-4以下となる55サイトのうち、優劣性解析、ジェノタイプ解析の両者で10-4以下となるサイトが12あり、肝癌に関連する可能性が示唆された。このうちTaqman SNPジェノタイピングアッセイが可能な7について、別コホートでの検証を開始した。
結論
癌結節LOH解析によりクロナリティの解析が可能なことを示した。今後リスク要因の解明と再発防止策有効性の実証が課題である。SNPについては別コホートにおける検証が必要である。

公開日・更新日

公開日
2009-05-08
更新日
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