肝炎ウイルス感染防御を目指したワクチン接種の基盤構築

文献情報

文献番号
200831010A
報告書区分
総括
研究課題名
肝炎ウイルス感染防御を目指したワクチン接種の基盤構築
課題番号
H19-肝炎・一般-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
水落 利明(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 憲一(新潟大学教育研究院医歯学系 産婦人科学)
  • 片山 惠子(広島大学大学院医歯薬学総合研究科 疫学・疾病制御学)
  • 小方 則夫(独立行政法人労働者健康福祉機構 燕労災病院 )
  • 岡部 信彦(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 多屋 馨子(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 菅内 文中(公立大学法人名古屋市立大学大学院医学研究科 肝臓病学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
17,444,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では今後増大が懸念される性感染を中心とした水平感染防御を視野に入れての新たな施策、つまりHBVキャリアの新生児や医療従事者のみならず、広く若年層へのHBワクチン投与(universal vaccination)の必要性についての科学的考察を基盤として、行政に向けた提言を作成することを目的とする。
研究方法
①小児科におけるHB母子感染防止対策の現状をアンケート調査
②日本で使用されてきたHBワクチン接種者における血清HBs抗体評価について、各ワクチン種別に実施したPHA法とWHO基準国際単位(IU/mL)表示法との整合性を検討
③感染症法のもとに報告されたB型肝炎の届け出内容について検討しHBVの感染経路を検証
④保育施設の実態と保育担当者におけるB型肝炎に対する意識および水平感染のリスクについての調査を実施
⑤ヒト肝細胞移植キメラマウスを用い、HBIgの受動免疫によるHBV感染防御成立の有無を検討する実験系を構築
⑥我が国における急性B型肝炎患者におけるHBV escape mutant発生頻度の調査、およびそれら変異クローンの作成とin vitroでの感染防御実験の実施

結果と考察
①HBワクチンおよびHBIGの適切な投与が脱落している例があり、母子感染予防に対する医療従事者へのさらなる啓蒙が必要であることが示唆された
②HBs抗体測定法はWHO基準国際単位表示法(IU/mL)に統一することが望ましいと結論された
③HBV感染は母子感染経路よりも、大都市圏の比較的若年層を中心に性感染(水平感染)経路への移行が明らかになった
④保育関係者へのHBV水平(施設内)感染に対する教育啓発が必要であると結論した
⑤HBV感染阻止に必要なHBs抗体価を決定するべく動物モデルによる実験を継続している
⑥本邦の急性B型肝炎患者全46例中7例(15%)にHBs抗原のa領域に変異を認めた。またHBVの145R変異株では、野生株と比較してウイルス複製能のおよび培養上清中のHBsAg値の低下を認めた

結論
近年増加している性感染経路による海外型(genotype A, Ba)のHBV感染、保育施設等での、また父子間での感染といったHBVの水平感染の防御が、これまでの母子感染(垂直感染)防御に代わり重要な課題となっていることはさらに明白となった。

公開日・更新日

公開日
2009-03-16
更新日
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