C型肝炎の状況・長期予後の疫学像の解明に関する研究

文献情報

文献番号
200831003A
報告書区分
総括
研究課題名
C型肝炎の状況・長期予後の疫学像の解明に関する研究
課題番号
H18-肝炎・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
井上 真奈美(国立がんセンターがん予防・検診研究センター 予防研究部 予防疫学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 若井 建志(名古屋大学大学院)
  • 田中 英夫(愛知県がんセンター研究所)
  • 田中 恵太郎(佐賀大学医学部)
  • 廣田 良夫(大阪市立大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
30,135,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国における肝がんの発症にはC型肝炎ウイルス(HCV)の持続感染が重要な役割を果たしているが、感染者における肝がん等への進展・防御要因の疫学的解明は進んでいない。本研究は、既存集団等を用いて、HCV感染者における肝がん等への進展・防御要因を、環境・宿主・ウイルス関連要因、遺伝子・環境交互作用などの側面から疫学的に検討し、HCV感染者におけるHCV関連疾患の発症予防対策に資することを目的とする。
研究方法
研究対象集団におけるHCV感染状況を特定した上、HCV感染者におけるいくつかの環境・宿主・ウイルス関連要因と肝がんや肝硬変との関連について検討した。また、コーヒー摂取による肝がん予防介入研究を実施した。
結果と考察
多目的コホート集団の追跡研究により、HCV感染者において、カロテノイド摂取及びコーヒー摂取がその後の肝がん発症リスクを低下させる一方、高血糖及び肥満などメタボリック症候群関連要因及びその集積、ビタミンC摂取、緑茶摂取及び女性のイソフラボン摂取は逆に感染後の肝がん罹患リスクを増加させる可能性が示唆された。またJACC Studyの解析から、HCV陽性者に分析対象者を限定した場合、肝臓がんリスクはBMI 25以上の肥満とは正の関連、ナトリウム、ナイアシンの摂取量とは負の関連を示した。記述疫学資料を用いた検討では、大阪府における最近の肝がん罹患率は急激に減少しており、その原因はHCV関連肝がん罹患率が急激に減少していることによった。全国の死亡統計との比較により、大阪府で見られたこの傾向は、全国にも当てはまるものと考えられた。佐賀の地域集団における検討では、肝炎ウイルス感染を考慮してもコーヒー飲用が肝機能検査値の低下と関連していた。大学病院受診者集団における前向きの検討では、カフェイン含有飲料でALT上昇が抑制される可能性が示唆された。野菜・果物摂取や抗酸化ビタミン摂取とALT上昇については、明らかな関連がみられなかった。コーヒーによる慢性肝炎患者の肝がん予防介入研究を、国内3病院において実施中である。
結論
複数集団を用いて、HCV感染者におけるイソフラボンやカロテノイド摂取、コーヒー・お茶摂取、栄養素摂取及びメタボリック症候群関連要因と肝がんや肝硬変への進展との関連について検証した他、記述疫学資料を用いてわが国のHCV関連肝がんの推移と今後の展望を分析した。慢性肝炎患者を対象としたコーヒー摂取介入研究を実施した。

公開日・更新日

公開日
2009-04-06
更新日
-

文献情報

文献番号
200831003B
報告書区分
総合
研究課題名
C型肝炎の状況・長期予後の疫学像の解明に関する研究
課題番号
H18-肝炎・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
井上 真奈美(国立がんセンターがん予防・検診研究センター 予防研究部 予防疫学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 若井 建志(名古屋大学大学院)
  • 田中 英夫(愛知県がんセンター研究所)
  • 田中 恵太郎(佐賀大学医学部)
  • 廣田 良夫(大阪市立大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国における肝がんの発症にはC型肝炎ウイルス(HCV)の持続感染が重要な役割を果たしているが、感染者における肝がん等への進展・防御要因の疫学的解明は進んでいない。本研究は、既存集団等を用いて、HCV感染者における肝がん等への進展・防御要因を、環境・宿主・ウイルス関連要因、遺伝子・環境交互作用などの側面から疫学的に検討し、HCV感染者におけるHCV関連疾患の発症予防対策に資することを目的とする。
研究方法
研究対象集団におけるHCV感染状況を特定した上、HCV感染者におけるいくつかの環境・宿主・ウイルス関連要因と肝がんや肝硬変との関連について検討した。また、コーヒー摂取による肝がん予防介入研究を実施した。
結果と考察
肝がんリスクは肝炎ウイルス感染の有無にかかわらずALT値は独立した重要な肝がん発症予測マーカーとなり、またコーヒー摂取が肝機能検査値の低下と関連していた。HCV感染者においてカロテノイド摂取及びコーヒー摂取がその後の肝がん発症リスクを低下させる一方、高血糖及び肥満などメタボリック症候群関連要因及びその集積、ビタミンC摂取、緑茶摂取及び女性のイソフラボン摂取は感染後の肝がん罹患リスクを増加させる可能性が示唆された。また、慢性肝疾患患者においてより最近の喫煙が肝がんリスクを上昇させ、慢性肝疾患患者においても禁煙を勧奨することが重要と考えられた。喫煙と関連するCYP1A2多型が現在喫煙者あるいは多飲者において肝がんリスクを大きく修飾していた。肝硬変リスクは、炭水化物高摂取によりリスクは増加する一方、内因性エストロゲン及び緑茶・コーヒー摂取、高水分摂取により低下していた。さらに、肝がん年次推移の記述疫学的検討により、最近の肝がん罹患率は急激に減少しており、これはHCV関連肝がん罹患率が急激に減少していることによるものと考えられた。コーヒーによる慢性肝炎患者の肝がん予防介入研究を、国内3病院において実施中である。
結論
複数集団を用いて、HCV感染者における喫煙、イソフラボンやカロテノイド摂取、コーヒー・お茶摂取、栄養素摂取及びメタボリック症候群関連要因と肝がんや肝硬変への進展との関連について検証した他、記述疫学資料を用いてわが国のHCV関連肝がんの推移と今後の展望を分析した。慢性肝炎患者を対象としたコーヒー摂取介入研究を実施した。

公開日・更新日

公開日
2009-04-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200831003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
わが国の肝がんの発症にはHCVの持続感染が重要な役割を果たしているが、HCV感染者における肝がんなどHCV関連疾患への進展促進・防御要因の疫学的解明は進んでいない。HCV感染状況の確認できる疫学集団を用いてHCV感染者における肝がん等の発症促進・防御要因を、環境、宿主、HCV関連要因、環境宿主交互作用などの側面から疫学的に探索し、専門誌に掲載することにより、国際的にも不足している科学的証拠を補完することができた。
臨床的観点からの成果
HCV感染者に対してインターフェロン療法等肝がん進展に対する治療的予防以外の方法によるHCV関連疾患への進展予防の可能性及びその選択肢について提示できた。本研究において解明された疫学的知見が強固なものとなり、具体的に実施されれば、HCV感染者が、肝がん等HCV関連疾患に進展するのを未然に防止できるものと期待される。
ガイドライン等の開発
本研究において実施した研究は、疫学的知見として貴重であり、また日本人に適用できる。従って、今後、現在進められている肝炎・肝臓がん検診ガイドライン等の作成のために必須な基礎資料となる。
その他行政的観点からの成果
本研究において、HCV感染者における生活習慣・生化学指標、遺伝子多型を含めた宿主要因と環境要因の交互作用とHCV関連疾患との関連について集中的に分析したことにより、HCV感染率が高率でHCV持続感染者の多い世代が50-70歳代に達しているわが国において、肝炎治療以外の方法による今後のHCV関連疾患予防対策に有用な科学的証拠を提示できた。
その他のインパクト
現時点では、科学的証拠を提示したにとどまっているが、今後、さらに知見を強固なものとし、国民への積極的な情報還元を図っていく。既に結果のいくつかについては、複数のメディアに取り上げられ、またがん検診ガイドライン作成の基礎資料としても利用されている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
17件
その他論文(和文)
7件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ishiguro S, Inoue M, Tanaka Y, et al.
Serum aminotransferase level and the risk of hepatocellular carcinoma: a population-based cohort study in Japan
Eur J Cancer Prev , 18 (1) , 26-32  (2009)
原著論文2
Kurahashi N, Inoue M, Iwasaki M, et al.
Isoflavone consumption and subsequent risk of hepatocellular carcinoma in a population-based prospective cohort of Japanese men and women
Int J Cancer , 124 , 1644-1649  (2009)
原著論文3
Kurahashi N, Inoue M, Iwasaki M, et al.
Vegetable, fruit and antioxidant nutrient consumption and subsequent risk of hepatocellular carcinoma: a prospective cohort study in Japan
Br J Cancer , 100 (1) , 181-184  (2009)
原著論文4
Inoue M, Kurahashi N, Iwasaki M, et al.
Metabolic factors and subsequent risk of hepatocellular carcinoma by hepatitis virus infection status: a large-scale population-based cohort study of Japanese men and women (JPHC Study Cohort II). Cancer Causes Control
Cancer Causes Control (in press)  (2009)
原著論文5
Inoue M, Kurahashi N, Iwasaki M, et al.
Effect of coffee and green tea consumption on the risk of liver cancer: Cohort analysis by hepatitis virus infection status
Cancer Epidemiol Biomarkers Prev (in press)  (2009)
原著論文6
Wakai K, Kurozawa Y, Shibata A, et al.
Liver cancer risk, coffee and hepatitis C virus infection: a nested case-control study in Japan
Br J Cancer , 97 (3) , 426-428  (2007)
原著論文7
Tanaka H, Imai Y, Hiramatsu N, et al.
Declining incidence of hepatocellular carcinoma in Osaka, Japan, from 1990 to 2003
Ann Intern Med , 148 , 820-826  (2008)
原著論文8
Sakamoto T, Higaki Y, Hara M,et al.
hOGG1 Ser326Cys polymorphism and risk of hepatocellular carcinoma among Japanese
J Epidemiol , 16 (6) , 233-239  (2006)
原著論文9
Tanaka K, Hara M, Sakamoto T, et al.
Inverse association between coffee drinking and the risk of hepatocellular carcinoma: a case-control study in Japan.
Cancer Sci , 98 (2) , 214-218  (2007)
原著論文10
Hara M, Tanaka K, Sakamoto T, et al.
Case-control study on cigarette smoking and the risk of hepatocellular carcinoma among Japanese
Cancer Sci , 99 (1) , 93-97  (2008)
原著論文11
Sakamoto T, Higaki Y, Hara M, et al.
Interaction between interleukin-1β -31T/C gene polymorphism and drinking and smoking habits on the risk of hepatocellular carcinoma among Japanese
Cancer Lett , 271 , 98-104  (2008)
原著論文12
Ohfuji S, Fukushima W, Tanaka T, et al.
Does late evening meal reduce the risk of hepatocellular carcinoma among patients with chronic hepatitis C? 
Hepatol Res , 38 , 860-868  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-