エイズ感染細胞での配列特異的遺伝子組換えによる効率的なHIV遺伝子除去法の開発

文献情報

文献番号
200830050A
報告書区分
総括
研究課題名
エイズ感染細胞での配列特異的遺伝子組換えによる効率的なHIV遺伝子除去法の開発
課題番号
H20-エイズ・若手-016
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
野村 渉(東京医科歯科大学 生体材料工学研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
エイズ治療において、より効果的な治療を行うために、新たな概念をもった治療法の開発、確立が求められる。本研究においては、亜鉛フィンガータンパク質(ZFP)の特性を生かした特定の遺伝子配列にのみ働くDNA組換え酵素を用いることで感染患者の細胞内に組み込まれたHIV遺伝子の除去を行う新規な治療法の開発に取り組む。
研究方法
保存度の高いgag遺伝子配列から標的候補配列を選択し、それらの配列に対して特異的に結合するZFPをデザインした。これらをマルトース結合タンパク質融合体として発現し、アフィニティー精製により得られたZFPのDNA結合活性を定量的ELISA法で定量した。構築したZFPを融合したDNA組換え酵素を用いて酵素活性の検討を行った。この結果を基に、さらに反応効率の良い組換え酵素ドメインを見出すために標的配列での反応の最適化を分子進化法によって行った。
結果と考察
標的配列に対してデザインした亜鉛フィンガータンパク質(ZFP)はドメイン数が5および6の場合にDNA結合親和性として10?400nMという値を得た。これらのZFPを用いて、標的配列を蛍光タンパク質遺伝子の両端に置いたモデル配列をもつプラスミド遺伝子を作製し、それに対する組換え反応を検討し、50%程度の反応効率を示すことが明かになった。この結果を受けて、哺乳細胞における反応効率を評価するための哺乳細胞内発現系の構築と標的となる蛍光タンパク質をレポーターとする標的配列を有する細胞株の構築を行った。より反応効率の高い組換え酵素創製のために酵素ドメインのアミノ酸配列をランダム化したライブラリーを作製し、プラスミド上での反応を指標にしたセレクション方法を構築した。
結論
標的配列として、5種のHIV株で相同性の高い配列を用いた。構築したZFPの高い結合親和性、融合型のDNA組換え酵素の反応効率を考慮するとZFP融合型酵素を用いた能動的な組換えにより、確実なプロウイルス遺伝子のノックアウトが可能であると考えられる。また、ZFPの高い標的配列選択性により細胞への毒性も低く抑えられると期待できる。今後はさらに高活性な酵素を用いて、感染細胞からのプロウイルス遺伝子の除去について検討していくことで、ZFP融合型DNA組換え酵素を用いた新たなHIV遺伝子治療法の確立が期待できる。得られた知見は、HIVの遺伝子治療における更なる発展に貢献すると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
-