標準的治療法の確立を目指した急性HIV感染症の病態解析

文献情報

文献番号
200830049A
報告書区分
総括
研究課題名
標準的治療法の確立を目指した急性HIV感染症の病態解析
課題番号
H20-エイズ・若手-015
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
渡邊 大(独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター 臨床研究センター エイズ先端医療研究部 HIV感染制御研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 白阪 琢磨(独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター  臨床研究センター  エイズ先端医療研究部)
  • 上平 朝子(独立行政法人 国立病院機構大阪医療センター  免疫感染症科)
  • 濱口 元洋(独立行政法人 国立病院機構 名古屋医療センター 総括診療部 エイズ・感染症診療部)
  • 金田 次弘(独立行政法人 国立病院機構 名古屋医療センター 臨床研究センター 血液免疫研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
抗HIV薬の多剤併用療法(HAART)をもってしても、HIVを体内から駆逐できないため、長期間の内服の継続が必要とされる。これらの負担を軽減する方法として、我々は標準的な治療法が存在しない急性感染に注目した。新規治療法の開発のためにも、まず急性HIV感染症の病態を、免疫学的およびウイルス学的な視点から解析を行う。
研究方法
急性HIV感染症で入院した症例を対象に診療録から臨床情報を収集し、その特徴を抽出した。文書で同意が得られた20歳以上のHIV感染患者より血清を採取し、サイトカイン値をELISA法にて測定した。急性期にHAARTを導入し血漿HIV-RNA量が感度未満で維持されている症例に対しては、末梢血CD4陽性リンパ球中の細胞内HIV-DNA量(プロウイルス量)の測定を行った。
結果と考察
大阪医療センターに急性HIV感染症で入院した症例は19症例であり、今年度は2008年12月31日時点で5例の入院があった。9例で入院中に抗HIV療法が導入され、7例が現在も継続中であった。いずれもスクリーニング検査陽性で診断されており、髄膜炎や血球貪食症候群など多彩な症状を呈していた。当院で急性期から抗HIV療法を継続している8例でプロウイルス量の測定を実施した。8症例中5症例においてプロウイルス量は感度未満となり、残りの3症例においても低値であった。慢性期で治療を開始した63例と比較したところ、急性期で導入した群において有意にプロウイルス量は低下していた。血清サイトカイン値の測定を11症例に対して行った。急性期症状が緩和された後、Interferon-γが単独で高値となった2症例とInterleukin(IL)-18が高値となった9症例に分類可能であった。IL-18は経過とともに有意に低下し、Interferon-γは高値が持続した。測定を行ったサイトカインのうち、Interferon-γとIL-18が感染早期に関わるサイトカインと考えられた。
結論
急性HIV感染症について当院の症例についてレビューを行い、血清サイトカイン値と抗HIV療法を継続している症例に関しては末梢血CD4陽性リンパ球中のプロウイルス量を測定した。急性期で治療開始した症例の半数以上においてプロウイルス量は感度未満であり、プロウイルス量は低レベルに抑えられていた。

公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
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