HIV感染モデルマウスの樹立およびHIV特異的細胞傷害性T細胞によるエイズ発症遅延機序の解析

文献情報

文献番号
200830048A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染モデルマウスの樹立およびHIV特異的細胞傷害性T細胞によるエイズ発症遅延機序の解析
課題番号
H20-エイズ・若手-014
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 義則(国立大学法人 熊本大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は小動物における長期HIV感染実験系の構築を目指し、新たに作製した免疫不全マウス(NOD/SCID/Jak3ノックアウトマウス(以下NOKマウス))にヒトCD34陽性細胞を移植したヒト免疫構築マウスを樹立し、マウス体内で発生したヒトT細胞の分化・機能および免疫細胞のレパートリーについて解析し、ヒト化マウスの有用性を検討した。
研究方法
ヒトCD34陽性細胞をNOKマウスの新生仔の肝臓へ移植し、12週間後より経時的に血液中のT細胞の生着を確認し、20週間後に血液・脾臓を採取し、HIV-1の標的細胞であるCD4 T細胞や細胞傷害性T細胞であるCD8T細胞を含む免疫細胞の分化・成熟および機能について、CD抗原、リンパ球の分化マーカー、サイトカイン等に特異的な抗体をもちいてフローサイトメーターにて解析した。
結果と考察
ヒトCD34陽性細胞をNOKマウスに移植後、12週からT細胞が顕著に増加した。発生したCD8T細胞およびCD4T細胞の両者において、CD45RA+CCR7+CD27+CD28+のナイーブ表現型を示す郡(Tn群)と、CD45RA-CCR7-CD27+CD28+のエフェクターメモリー表現型を示す郡(Tem群)の2群に分かれた。しかしながら、いずれもエフェクター表現型を示した細胞は認められなかった。また、PMA/Ionomycin刺激によるCD8T細胞のサイトカイン産生能(TNF-alfa, IFN-gamma, IL-2)は、Tem郡のCD8 T細胞でその産生能を示し、Tn郡のCD8 T細胞では示さなかった。ウイルス感染細胞の破壊因子となるパーフォリンとグランザイムの各酵素郡はいずれのマウスのCD8T細胞においても産生は示さなかった。以上の結果から、ヒト免疫構築NOKマウスではヒトT細胞を長期間生着できることから長期HIV感染実験系の確立に有用であること、しかし発生したT細胞は未分化であることから、より分化したT細胞の発生を解析する必要があることが明らかとなり、現在、検討中である。
結論
小動物を用いたHIV感染実験系は、長期HIV感染における免疫応答および病態の解析を可能とし、高額の飼育費がかかるサルやチンパンジーにかわる代替動物として期待される。NOKマウスを用いたヒト免疫構築マウスでは長期HIV感染実験系の構築が可能で、今までの感染動物モデルより有用なモデルとなり得る可能性が考えられる。

公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
-