エイズ多剤併用療法中のリザーバーの特定および選択的障害に関する研究

文献情報

文献番号
200830037A
報告書区分
総括
研究課題名
エイズ多剤併用療法中のリザーバーの特定および選択的障害に関する研究
課題番号
H20-エイズ・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
五十嵐 樹彦(京都大学ウイルス研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究計画では多剤併用療法中に温存されるリザーバーを特定、そのリザーバーを選択的に傷害する方法の開発を最終目的とする。今年度はSIVmac/アカゲザル実験系における多剤併用療法の確立を目標として薬剤の選択および投与方法を検討した。
研究方法
 多剤併用療法として抗SIV効果が知られているジドブジン、ラミブジン、テノフォビルを逆転写酵素阻害剤として選択した。プロテアーゼ阻害剤であるサキナビル、ロピナビル、アタザナビルに関して抗SIV効果を検索した。投薬は経口で行った。SIVを3頭のアカゲザルに接種し、1頭は非治療対照、2頭に多剤併用療法を感染8週後から10週間適用した。肺胞洗浄液中のリンパ球サブセット、血漿中ウイルスRNA量を検索した。
結果と考察
研究結果
 検索したプロテアーゼ阻害剤三剤はそれぞれ異なるEC50でSIVの複製を抑制した。 EC50とヒトにおけるそれぞれの薬剤の血中半減期を勘案し、ロピナビル/リトナビルを選択した。SIV感染サルの血中ウイルス量は多剤併用療法を開始した接種8週後は105 RNAコピー/mlだったが、投薬開始後4週間以内に治療群2頭で検出限界以下に低下し、以後投薬期間中抑制された。肺胞洗浄液中のCD4陽性リンパ球はウイルス接種後4週以内に45%から5%程度に著減し、その後漸増し、治療群2頭で治療期間中にウイルス接種前のレベルに戻ったが、非治療のサルでは接種前の70%程度に留まった。投薬中止後、治療群の血中ウイルス量は2週間以内に上昇、非治療サルと同じレベルになり、回復した肺胞洗浄液中のCD4陽性リンパ球は投薬中止3週後から減少した。

考察
 以下の理由から今年度目標としたサルエイズモデルにおける多剤併用療法を確立したと考える。1)サルに安定して投薬可能である、
2)感染者と同レベルの血中ウイルス量を4週間以内に検出限界以下に抑制した、
3)投薬中は血中ウイルス量を安定して検出限界以下に抑制した。また、今回の結果からSIV感染においても多剤併用療法の中止によって血中ウイルス量が速やかに上昇し、一端回復したCD4陽性リンパ球が再び減少する事が確認された事から、療法中のリザーバーの検索にSIV/アカゲザルモデルが利用可能と考えられた。来年度以降は今回確立した療法を用いてリザーバーの検索に進みたい。
結論
 HIV-1感染者で行われているのと同等のウイルス抑制効果のある多剤併用療法をサルエイズモデルにおいて確立した。

公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
-