抗HIV薬の適正使用と効果・毒性に関する基礎的研究

文献情報

文献番号
200830036A
報告書区分
総括
研究課題名
抗HIV薬の適正使用と効果・毒性に関する基礎的研究
課題番号
H20-エイズ・一般-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
潟永 博之(国立国際医療センター エイズ治療・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 杉浦 亙(国立感染症研究所 エイズ研究センター第2グループ)
  • 太田 康男(帝京大学 医学部内科学講座)
  • 児玉 栄一(京都大学 ウイルス研究所感染免疫研究領域)
  • 吉村 和久(熊本大学 エイズ学研究センター病態制御分野)
  • 鈴木 康弘(東北大学大学院 医学系研究科内科病態学講座感染病態学分野)
  • 横幕 能行((独)国立病院機構名古屋医療センター 感染症科・臨床研究センター)
  • コウ 康博(熊本大学大学院 医学薬学研究部血液内科学・感染免疫診療部)
  • 蜂谷 敦子(国立国際医療センター エイズ治療・研究開発センター)
  • 塚田 訓久(国立国際医療センター エイズ治療・研究開発センター)
  • 本田 元人(国立国際医療センター エイズ治療・研究開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新規抗HIV薬の適正な使用をガイドするために、臨床と基礎の両面から新薬による治療指針のもとになるデータを提供することを目指す。また、治療に伴う毒性や他剤との相互作用、治療による有害事象を回避する方法を探索する。
研究方法
多剤耐性症例よりHIVを分離培養し、薬剤感受性を測定する。maraviroc (MVC)耐性HIVの選択については、PM1/CCR5細胞を用いて継代培養を行う。多剤耐性HIVに有効な新規薬剤の開発を試みる。抗HIV療法導入前後の免疫再構築症候群(IRIS)の発症メカニズムを探索し、臨床的な回避を試みる。ワーファリン併用時の適切な抗HIV療法を検討する。
結果と考察
5例の多剤耐性患者よりHIVを分離培養し、薬剤感受性を測定した。3例はdarunavir (DRV)に耐性であったが、うち2例ではHIVをコントロールできていた。治療失敗の1例は、enfuvirtide(ENF)のみが有効であったが、投与中にENFに対する耐性変異が生じていた。etravirine (ETR)の効果は有望で、efavirenz(EFV)やnevirapineに100倍以上の高度耐性となった株に対しても効果を有していた。Q151M-complexにK70Q変異が加わるとtenofovir (TDF)に対し高度耐性となることを見いだした。またin vitroの培養によって、MVCに対する耐性HIVの誘導に成功した。gp41とより強力に結合する新規の有望な融合阻害薬を同定した。
CD4数が低いHIV感染者ではregulatory T細胞の割合が高く、抗HIV療法導入後は、その割合が減少することを見いだした。進行性多巣性白質脳症(PML)合併症例の抗HIV療法導入時にステロイドを併用することによりIRISを予防できる可能性を示した。Ritonavir (RTV)でboostしないfosamprenavir (FPV)を使うことでワーファリン併用も可能になることを示した。PI投与後の徐脈性不整脈はlopinavirによるものが多かったが、2例でDRV投与可能であった。
結論
新規薬剤の適正な使用をガイドするため、耐性HIVに対する有効性、治療に伴う毒性・他剤との好ましくない相互作用の回避法探索など、多岐に渡る課題について研究に取り組んでおり、初年度の計画は概ね達成している。

公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
-