HIV-1感染のヒトーラット種間バリアーの解明

文献情報

文献番号
200830034A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV-1感染のヒトーラット種間バリアーの解明
課題番号
H19-エイズ・若手-004
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
張 険峰(北海道大学 遺伝子病制御研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
2,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的はウイルス粒子の感染性と侵入過程に関与しているウイルス性、細胞性因子を同定し、ラット感染モデルの作製に資するを目的にした。昨年、ラットT細胞由来のHIV-1 粒子のEnvの機能が低い、もしくは 取り 込まれたEnvの蛋白質量が少いことを見出した。本年度は、①ラットT細胞におけるHIV-1 Env の発現及び 粒子内に取り込まれたEnvの性質の解析、②ラットT細胞株、マクロファージ及びprimary T 細胞における 各種のHIV-1株粒子の感染性の調査, ③ 侵入過程で働く ラット因子のクローニングを試みた。

研究方法
1. HIV-1粒子をWestern blottingによって EnvとGag 蛋白質 を定量した。2. HIVの感染価をindicator細胞(TZM-bl) を用いて、測定した。3. 蛋白質の安定性を測定するため、細胞を蛋白質合成阻害剤で処理し、経時的に生産されたウイルス及び細胞蛋白質を定量した。4. ラットprimary細胞へHIV-1を導入するため、hCRM1と CycT1を発現するTgラットからprimary T細胞とマクロファージを精製した。 5. 侵入効率に関して両極をなすラットT細胞からTotal RNAを精製し、 ラットT細胞発現 profile microarayを入手し、GeneSpringGXおよびGenMAPPのソフトウエアで解析した。
結果と考察
本年度,ラットT細胞株由来のNL4-3 粒子の感染性の低い原因が、細胞内でEnv蛋白質が不安定で、粒子内に取り込まれる量が少ない事にある事を明らかにした。しかし、このことは、T細胞指向性または両指向性HIV-1株に限られ、マクロファージ指向性HIV-1 株はヒト細胞で作られたHIV-1 株と同等の感染性 を持っていた。さらに、ラット primary T 細胞 とマクロファージではいずれの HIV-1 株も感染性 を有することから、ラットでは,HIV-1 感染の後期過程において種間バリアーが存在しないと考えられる。また、ラットマクロファージにおいては侵入過程においても効率が高く、阻害因子が存在しないことが示唆された。
また、 侵入効率に関して両極をなすラットT細胞の発現プロファイルをマイクロアレイにより比較し、候補遺伝子をしぼったので、ノックダウンすることにより感染効率への影響の分析を進めている。

結論
結局、ラッT細胞、マクロファージ共に感染性ウイルス粒子を生産するとの結論に行き着いた。また、ラットマクロファージにはHIV-1感染の阻害因子がないことが分かった。

公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-12-01
更新日
-