多剤耐性HIVにおける将来的な変異・構造予測と新規抗HIV薬開発

文献情報

文献番号
200830033A
報告書区分
総括
研究課題名
多剤耐性HIVにおける将来的な変異・構造予測と新規抗HIV薬開発
課題番号
H19-エイズ・若手-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
川下 理日人(大阪大学 大学院薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 岡本 晃典(大阪大学 大学院薬学研究科)
  • 中村 昇太(大阪大学 微生物病研究所)
  • 後藤 直久(大阪大学 微生物病研究所)
  • U C デシルワ(大阪大学 微生物病研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
3,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 HIVは変異速度がきわめて速いため、薬剤耐性の問題に対処すべく、既存の抗HIV薬の改変や新しい作用機序を有する抗HIV薬の開発が急務となっている。
 そこで、これらの耐性変異が生じる位置・構造変化を前もって予測することができれば、耐性ウイルス出現時にも速やかに新規阻害剤を設計することが可能となる。また、その耐性を計算科学的に速やかに評価することにより、HAARTにおける薬剤選択にも有用となる。
研究方法
<プロテアーゼ阻害剤・系統解析>
HIV-1 CRF01_AEプロテアーゼ配列のうち、日本とタイ由来の株に着目し、アライメント、系統樹作成を行った。次に、この系統樹上に薬剤耐性データを対応させた。
<プロテアーゼ阻害剤・定量的構造活性相関(QSAR)>
10種のプロテアーゼにおける実験データと、阻害剤9種の分子パラメータを用いてQSAR式を構築した。
<膜融合阻害剤>
分子動力学法により得たN-HR/C-HR間の相互作用エネルギーが高いペプチドを中心に10個選択し、これらのペプチドとT-20を用いて、8種のウイルス株に対し、実験的な評価を行った。
結果と考察
<プロテアーゼ阻害剤・系統解析>
 系統解析の結果、薬剤耐性を持つ株は3つのクラスターに分類された。タイではプロテアーゼの利用が少ないにも関わらず、未使用の阻害剤に対する耐性傾向が観測された。このことは、薬剤耐性ウイルスが国外からもたらされたのではないかと示唆される。
<プロテアーゼ阻害剤・定量的構造活性相関(QSAR)>
 計算されたQSAR式の相関を見たところ、ダルナビルを除いた阻害剤では、全ウイルス株に対して良好なQSAR式が得られた。また、分子の形状や正電荷に関係する分子パラメータが重要であった。
<膜融合阻害剤>
 10種類のうち、4種にT-20と同程度の活性がみられた。すなわち、より強い相互作用を持つものでは、内側ヘリックスとの相互作用の際に構造が崩れず、より強い活性をもたらすものと考えている。
結論
 今回我々は、系統解析・構造活性相関など、計算機を用いた手法を利用して、薬剤耐性プロテアーゼに関する情報、およびT-20と同等程度の活性を持つ膜融合阻害剤を得ることができた。今後も本結果を活用し、薬剤耐性を有するウイルスの情報提供、薬剤耐性を有するウイルスに対抗できる阻害剤の開発を目指す予定である。

公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
-