HIVに対する粘膜ワクチンの最適化に適う安全性・有効性に優れた粘膜ワクチンアジュバントの開発

文献情報

文献番号
200830031A
報告書区分
総括
研究課題名
HIVに対する粘膜ワクチンの最適化に適う安全性・有効性に優れた粘膜ワクチンアジュバントの開発
課題番号
H19-エイズ・若手-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
吉岡 靖雄(大阪大学臨床医工学融合研究教育センター 大阪大学薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 鎌田 春彦(独立行政法人医薬基盤研究所 創薬プロテオミクスプロジェクト)
  • 形山 和史(財団法人東京都医学研究機構東京都臨床医学総合研究所花粉症プロジェクト)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
3,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
経粘膜接種によるワクチン(粘膜ワクチン)は、抗原投与部位の粘膜面のみならず、遠隔の粘膜面、更には脾臓などの全身系免疫組織にも抗原特異的免疫応答が誘導可能なため、HIV感染制御の点で理想的な方法として期待されている。現在、HIVに対する粘膜ワクチンの最適化に向け、種々検討が行われているが、未だ良好な成果は得られていない。本研究は、安全性・有効性に優れた経粘膜投与型サイトカインを創製した上で、粘膜ワクチンアジュバントへ適用することで、HIVに対する効果的な粘膜ワクチンシステム構築を図るものである。
研究方法
1)昨年度、これまで創製してきた腫瘍壊死因子(TNF)変異体mTNF-K90R(プロテアーゼ抵抗性を有し、in vitroにおける比活性が野生型の6倍向上したTNF変異体)が、野生型と比較して優れた粘膜免疫誘導能を有することを明らかとした。本年度は、HIV由来gp120を抗原として用い、mTNF-K90Rの粘膜免疫誘導能を検討すると共に安全性を評価した。2)TNFスーパーファミリーの中から、粘膜免疫誘導能に優れたサイトカインをスクリーニングした。また、その免疫誘導特性を評価した。3)IL-1からIL-33までのサイトカインの中から、粘膜免疫誘導能に優れたサイトカインをスクリーニングした。
結果と考察
1)mTNF-K90Rは抗原単独投与と比較して、全身面、粘膜面のいずれにおいても、有意に高いgp120特異的IgG、IgA産生を誘導した。また、mTNF-K90Rの経鼻投与時における安全性を評価した結果、十分な抗体産生を誘導可能な1 ugの25倍にあたる25 ugの大量投与においても全く鼻腔での傷害性を示さず、また立毛や発熱等の全身的な副作用も観察されなかった。2)16種類のTNFスーパーファミリーサイトカインの中でも、TNFalpha、TL1Aが粘膜ワクチンアジュバントとして有望であることを明らかとした。また、これらは強いTh2型サイトカインの産生を誘導することで、粘膜免疫を活性化することが見出された。3)4種類のサイトカインが抗体産生誘導のみならず、細胞傷害性T細胞をも誘導可能な優れた粘膜ワクチンアジュバントになり得る可能性を示した。
結論
HIVに対する粘膜ワクチンの最適化に向け、安全かつ有効なサイトカインアジュバントを数種類見出した。来年度は、HIVに対する中和活性などより詳細な検討を進める予定である。

公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
-