薬剤耐性HIVの動向把握のための調査体制確立及びその対策に関する研究

文献情報

文献番号
200830029A
報告書区分
総括
研究課題名
薬剤耐性HIVの動向把握のための調査体制確立及びその対策に関する研究
課題番号
H19-エイズ・一般-007
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
杉浦 亙(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 桑原 健(独立行政法人国立病院機構南京都病院)
  • 小池 隆夫(北海道大学大学院医学研究科病態内科学講座)
  • 加藤 真吾(慶応義塾大学医学部微生物学・免疫学教室)
  • 巽 正志(国立感染症研究所 エイズ研究センター )
  • 貞升 健志(東京都健康安全研究センター微生物部)
  • 石ヶ坪 良明(横浜市立大学大学院医学研究科病態免疫制御内科学)
  • 藤井 毅(東京大学医科学研究所先端医療研究センター感染症分野)
  • 白阪 琢磨(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター免疫感染症科)
  • 松下 修三(熊本大学エイズ学研究センター)
  • 田邊 嘉也(新潟大学医学歯学総合病院 第二内科)
  • 仲宗根 正(国立感染症研究所 エイズ研究センター )
  • 伊藤 俊広(独立行政法人国立病院機構仙台医療センター 血液内科)
  • 金田 次弘(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター)
  • 潟永 博之(国立国際医療センター エイズ治療・研究開発センター)
  • 南 留美(独立行政法人国立病院機構九州医療センター 免疫感染症科)
  • 近藤 真規子(神奈川県衛生研究所 微生物部)
  • 福武 勝幸(東京医科大学医学部 臨床検査医学科)
  • 森 治代(大阪府立公衆衛生研究所)
  • 健山 正男(琉球大学大学院医学研究科感染病態制御学講座)
  • 原 孝(茨城県衛生研究所 遺伝子科学部)
  • 上田 幹夫(石川県立中央病院)
  • 佐藤 武幸(千葉大学医学部附属病院 感染症管理治療部)
  • 木村 昭郎(広島大学原爆放射線医科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
100,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国における薬剤耐性HIVの発生動向の把握とその増加を抑制するために必要な対応を明確にすることを目的とする。
研究方法
以下4項目の研究を実施する 
(1)薬剤耐性調査研究:新規診断症例の捕捉とその薬剤耐性検査およびサブタイピングを実施する。治療を受けている症例の薬剤耐性に関してはアンケート調査を行い、その現状を明らかにする。HPによる研究班の情報提供を行う。
(2)薬剤耐性HIV発生機序の解析研究: BEDアッセイによる感染時期の推測を行った。定量PCRあるいはLC/MSを応用した潜在する薬剤耐性ウイルスの検出法を開発する。
(3)薬剤耐性検査の質的管理:プロテアーゼ、逆転写酵素領域の研究班推奨基準測定法を決定する。
(4)薬剤血中濃度測定研究:HPを介しての検査受付と情報発信を行う。
尚、本体研究は国立感染症研究所の倫理委員会の承認を得ている。
結果と考察
以下の成果を挙げた。
(1) 薬剤耐性調査研究:平成20年上半期で新規感染症例371例を捕捉し、内29例(7.8%)の耐性症例が観察された。薬剤耐性症例の観察頻度はこの5年間で倍増している。本年度も昨年度9.8%よりは低いものの依然7.8%と高い頻度を示しており、診断時に薬剤耐性検査を実施することが重要である。アンケートによる治療症例の薬剤耐性の現状調査を実施し、新規薬剤を使用する必要のある多剤耐性症例の頻度が約2%であることを明らかにした。研究班のHPを公開した。
(2)薬剤耐性HIV発生機序の解析研究: 74%の症例に対してBEDアッセイを実施した。実施検体の30%前後の症例がBED陽性と判定された。次年度からは改良版であるavidity assayを取り入れる予定である。潜在する薬剤耐性ウイルスを検出するために定量PCR等とLC-MSを応用した微小集団の検出法を開発した。いずれも0.1~1%程度の微小集団の検出に成功した。
(3)薬剤耐性検査の質的管理:研究班推奨基準測定操作法を決定した。
(4)薬剤血中濃度測定研究: 7648件のHPへのアクセスがあり、638件の検査が行われた。血中濃度測定の有効性を確認した。
結論
平成20年の新規HIV/AIDS診断症例における薬剤耐性変異に獲得症例の頻度は7.8%であることを明らかにした。薬剤耐性HIVがHIV/AIDSの予後を左右する大きな因子であることが改めて確認された。

公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
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