AZT誘発ミトコンドリア機能障害に対する分子治療方法の開発

文献情報

文献番号
200830026A
報告書区分
総括
研究課題名
AZT誘発ミトコンドリア機能障害に対する分子治療方法の開発
課題番号
H19-エイズ・一般-004
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 岳哉(東北大学大学院医学系研究科生体機能学講座分子薬理学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 柳澤 輝行(東北大学 大学院医学系研究科生体機能学講座分子薬理学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
2,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
抗HIV薬アジドチミジン(AZT)の代謝物誘発ミトコンドリア機能障害の詳細な分子機構の詳細な解析から、この原因となる責任分子(群)すなわちAZT代謝物が標的とする分子(群)を同定する。さらにこの研究成果から、副作用の無い薬物、あるいは副作用を防ぐ薬物を発見し、HAARTにおけるAZT誘発ミトコンドリア機能障害を防ぐ分子標的薬の開発を目指す。
研究方法
チミジル酸キナーゼ(Tmpk)の野生型あるいは変異型cDNAを発現するラット心筋由来細胞H9c2を用いた。これらの細胞を種々濃度のAZT存在下4日間培養後、ATP量を定量した。1 mM AZTがミトコンドリア機能に与える影響を、ミトコンドリア内膜膜電位を測定し検討した。AZT処置によるアポトーシス誘導効果を検討した。
結果と考察
AZT処置後の細胞内ATP量を測定した。Tmpk変異体遺伝子発現細胞では、AZT処理によりATP量の顕著な低下が観察されたが、対照群ではそれがみられなかった。AZT処置後の細胞のミトコンドリア内膜電位を測定した。Tmpk変異型遺伝子発現細胞においては、AZT処置により顕著なミトコンドリア内膜の膜電位低下が認められたが、対照群ではそれが認められなかった。これはTmpk変異体発現細胞では、AZTが活性化体AZT三リン酸 (AZTTP)へ変換され、ミトコンドリア機能障害を誘発したためであり、また対照群の細胞内に生じたAZT中間代謝物AZT一リン酸(AZTMP)よりもミトコンドリア機能障害を強く誘導することを示すものである。さらにAZT処置後のアポトーシス亢進について検討した。Tmpk変異型遺伝子発現細胞では、AZT処置により顕著なアポトーシス亢進が認められたが、対照群ではそれが認められなかった。これらの結果から、AZT誘発ミトコンドリア機能障害の分子機構として、AZTTPがAZTMPよりも強くそれを誘導するということが明らかになった。従来AZT誘発ミトコンドリア機能障害の原因は、AZTMPであると考えられていたが、今回の検討結果は、それとは異なる結果を示唆する。
結論
今回確立した細胞系は、AZT代謝物誘発ミトコンドリア機能障害の分子機構を詳細に検討するために有用であり、今後、これを用いてAZTなどのNRTIにより誘発される心筋ミオパチーの詳細な分子機構の検討および、その研究成果に基づく分子標的予防方法についての開発を進めていく。

公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
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