薬剤耐性HIVの発生機序とその制御方法に関する研究

文献情報

文献番号
200830023A
報告書区分
総括
研究課題名
薬剤耐性HIVの発生機序とその制御方法に関する研究
課題番号
H19-エイズ・一般-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 裕徳(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 潟永 博之(国立国際医療センター エイズ治療・研究開発センター)
  • 遊佐 敬介(熊本大学大学院医学薬学研究部 先端生命医療科学部門)
  • 上野 貴将(熊本大学 エイズ学研究センター)
  • 村上 努(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 西澤 雅子(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 増田 貴夫(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科  )
  • 岡本 尚(名古屋市立大学医学研究科 生体機能分子医学講座)
  • 高折 晃史(京都大学大学院医学研究科 内科学講座血液・腫瘍内科学)
  • 足立 昭夫(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 プロテオミクス医科学部門生体制御医学講座)
  • 間 陽子(理化学研究所 分子ウイルス学研究ユニット)
  • 森川 裕子(北里大学北里生命科学研究所 大学院感染制御科学府)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
49,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬剤耐性HIVの発生と蔓延は、世界が共有する重要課題となっている。本研究では、薬剤耐性HIVの発生と制御に関わるウイルス学研究を実施し、HIV感染症の監視と制御の科学的基盤をつくる。
研究方法
2つの研究の柱を設定し、12名で分担する。柱1では、耐性誘導実験等により、薬剤存在下で発生する変異の情報を収集する。変異導入解析、立体構造解析などにより、耐性HIVの発生機序を明らかにする(潟永、西澤、村上、遊佐、上野)。柱2では、HIV複製の素過程を解析する。抗HIV薬開発とHIV/AIDS動物モデル構築を進める(足立、増田、岡本、高折、間、森川)。研究代表者は、ゲノム科学と計算科学の解析技術の応用法(蛋白質立体構造解析、準種解析)を研究し、分担研究を支援する。
結果と考察
HIVは、体内で自然発生する多型を組み合わせてEfavirenz耐性を獲得することを示した(潟永)。Amprenavir, Lopinavir, Atazanavir、Darunavir4剤耐性株を分離した(西澤)。CXCR4阻害剤KRH-3955とその誘導体の耐性ウイルスを分離した(村上)。HIV準種から、プロテアーゼ耐性ウイルスを選択する系をつくった(遊佐)。慢性感染期には、主要なCTLは抗原変異に対して優れた寛容性を示すことが分かった(上野)。柱2:カニクイザルCD8(-)PBMCでSIVmac239と同レベルで増殖するサル指向性HIV-1をつくった(足立)。リン酸化APOBEC3G(A3G)は、Vif中和抵抗性になることを見出した(高折)。逆転写促進因子Gemin2との結合に重要なインテグラーゼのアミノ酸残基を同定した(増田)。Tat-TAR-CyclinT1の複合体の立体構造を予測し、薬剤開発のための標的構造を推定した(岡本)。Efavirenzは、Gag/Gag-Pol前駆体蛋白質processingを促進し、粒子産生を低下させることを見出した(森川)。Vpr機能阻害剤スクリーニング系をつくり、合計16種類の候補化合物を選定した(間)。
結論
新種の耐性変異の同定、新種のHIV複製制御機構の同定、サル指向性HIV-1の構築、in silico構造解析系の樹立、などに成果を得た。薬剤耐性HIVの監視、抗HIVの開発、薬剤・ワクチン評価系サル動物モデルの開発などを行なう科学的基盤が強化された。

公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
-