若年者等におけるHIV感染症の性感染予防に関する学際的研究

文献情報

文献番号
200830014A
報告書区分
総括
研究課題名
若年者等におけるHIV感染症の性感染予防に関する学際的研究
課題番号
H18-エイズ・一般-015
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
木原 雅子(京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻国際保健学講座社会疫学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 井上 洋士(放送大学教養学部)
  • 藤原 良次(りょうちゃんず)
  • サマン ザマニ(京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻国際保健学講座社会疫学分野 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
25,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
社会疫学的手法(質的・量的方法、ソーシャルマーケティング、行動理論、社会実験法等を統合した手法)を用いて、社会文化背景に適した若者及びHIV感染者のための科学的予防介入モデルの開発・普及を行う。
研究方法
(1)日本人若者の研究
①就学生徒対象の研究:集団予防介入モデル(WYSHモデル)の多様化を図り、また文部科学省と連携した2段階(指導者研修→地域伝達講習)の全国普及を開始した。本年度は42都道府県の小中高196校(生徒数2.5万人)を対象に指導者研修を実施した。授業の効果は、事前・事後調査による比較群付き前後比較試験で評価し、教師への質問票調査によるプロセス評価も実施した。
③非就学生徒対象の研究:質・量的調査に基づき改善した若者用携帯Webサイトの知識・意識・行動変容効果を街頭でリクルートした若者503名を対象にランダム化比較試験で評価した。
(2)滞日外国人若者の研究
全国20のブラジル人学校で、複数の予防介入(A型[パンフ、813名]、B型[A+ワークショップ保護者会・Webサイト、255名]の、知識・自己効力感・行動変容効果を評価した。
(3)HIV感染者の研究
感染者の性行動変容を目的に、①医療従事者の意識変容を目指す介入(研修会)と、②感染者個人への面接介入を実施し、効果を質的・量的に評価した。
結果と考察
(1)日本人の就学生徒対象の研究では、中学生で、HIV/STD知識が50-60%、HIV/STDリスク認知が20-30%、コンドーム使用率が約10%上昇し、性行動容認率は約10%低下するなど有意の効果を認め、高校生でも同じ傾向を確認した。伝達講習は48校で行われ、全国普及体制が始動した。非就学生徒対象の研究では、Webサイト曝露により、知識が10-20%、STDリスク認知が11%有意に上昇した。
(2)滞日外国人若者の研究では、パンフ群(A)では知識と自己効力感が10-20%増加したが、ワークショップを含む群(B群)では、コンドーム使用率も上昇した。
(3)HIV感染者の研究では、医療従事者の自己効力感や積極性の上昇を認め、感染者個人への面接介入ではライフヒストリー聴取の有用性を認めた。
結論
予定通り研究を推進し、WYSH予防教育モデルの多様化と文部科学省と連携した全国普及体制を構築するとともに、滞日外国人やHIV感染者の予防対策の開発などで具体的な成果をあげた。

公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
-

文献情報

文献番号
200830014B
報告書区分
総合
研究課題名
若年者等におけるHIV感染症の性感染予防に関する学際的研究
課題番号
H18-エイズ・一般-015
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
木原 雅子(京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻国際保健学講座社会疫学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 井上 洋士(放送大学教養学部)
  • 藤原 良次(りょうちゃんず)
  • サマン ザマニ(京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻国際保健学講座社会疫学分野 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
社会疫学的手法(質的・量的方法、ソーシャルマーケティング、行動理論、社会実験法等を統合した手法)を用いて、社会文化背景に適した若者及びHIV感染者のための科学的予防介入モデルの開発・普及を行う。
研究方法
(1)日本人若者の研究
①就学生徒対象の研究:初年度に複数の大規模調査(小中高生3.5万人、保護者1.3万人)を行い、その情報に基づき集団予防介入モデル(WYSHモデル)の開発と多様化を図り、文科省と連携して伝達講習を含めた全国普及を行った。毎年指導者研修を実施し、授業効果は準実験的に評価した。
③非就学生徒対象の研究:2年度までに質・量的調査に基づき若者用携帯Webサイトを開発し、最終年度にその知識・意識・行動変容効果をランダム化比較試験で評価した(n=503名)。
(2)滞日外国人若者の研究
2年度までに実施した若者や教育関係者対象の質的・量的調査の情報に基づき、最終年度に20のブラジル人学校で、2種類の予防介入(パンフ配布[813名]、パンフ配布+ワークショップ[255名])の知識・意識・行動変容効果を評価した。
(3)HIV感染者の研究
感染者の性行動変容を目的に、①医療従事者の意識変容を目指す介入(研修会)と、②感染者への面接介入を毎年実施・改良し、効果を質的・量的に評価した。
結果と考察
(1)日本人の就学生徒対象の研究では、参加都道府県数/学校数/生徒数(万人)は、初年度26/140/1.6、2年度39/104/1.7、最終年度42/196/2.5と増加した。例年、中学生で、HIV/STD知識が50-60%、リスク認知が20-30%、コンドーム使用率が10-20%上昇、性行動容認率は約10%低下し、高校生でも同じ傾向を認めた。非就学生徒対象の研究では、Webサイト曝露により、知識が10-20%、STDリスク認知が11%上昇した。
(2)滞日外国人若者の研究では、パンフ群では知識と自己効力感が10-20%増加したが、ワークショップを含む群では、コンドーム使用率も上昇した。
(3)HIV感染者の研究では、医療従事者の自己効力感や積極性の上昇を認め、感染者への面接介入では2年度以降ライフヒストリー聴取の有効性を確認した。
結論
予定通り、WYSHモデルの多様化と文科省と連携した全国普及を推進し、滞日外国人やHIV感染者の予防対策の開発などで具体的な成果をあげた。

公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200830014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
HIV流行に長期的に対処するためには、若者に対する予防教育の徹底が戦略的に不可欠であるが、既存の予防教育は欧米モデルの模倣でわが国での効果評価を伴うものは存在しなかった。本研究は、社会疫学という集学的方法論(質的・量的方法、ソーシャルマーケティング、行動理論等を統合)により、25万件以上に上る膨大な質的・量的調査結果を踏まえて予防介入モデルを開発し、その効果を実験的に立証したものであり、わが国の社会文化基盤とエビデンスに立脚した科学的予防教育モデルを初めて開発した意義は大きい。
臨床的観点からの成果
臨床的研究ではないので該当しない。
ガイドライン等の開発
本研究の中核となる予防教育モデルであるWYSH教育は、2006年に新エイズ予防指針の具体化のために「地方自治体の青少年エイズ対策/教育ガイドライン」として全国に配布され、(財)エイズ予防財団のWebサイトでも公開されている。その後、改良進歩したWYSHモデルの視聴覚教材や授業実施マニュアルは、文科省の性教育推進事業の指導者研修会や伝達講習会の教材として使用されている。また、HIV感染者に関する研究から、医療従事者に有用な「HIV陽性者のセクシュアルヘルス向上にためのケース集」を作成した。

その他行政的観点からの成果
本研究で開発したWYSHモデルは、科学的に立証された初めての予防教育モデルとして、2004年に厚労省の公式支援を獲得し、2007年には、文科省の「性教育推進事業」のモデル教育として、同省主催の中央研修会やブロック研修会等で全国的に普及されるとともに、専用Webサイトで公開され、全国的な予防教育の推進に貢献している。また、日系ブラジル人の研究では、若者の情報疎外の実態解明と有効な予防対策の開発など行政的な移民対策上有用な成果をあげた。
その他のインパクト
研究成果は、主要な教科書(「性感染症」南山堂、放送大学教科書「感染症と生体制御」)や学校教員向け雑誌を含め、3年間で、30編の和文総説論文で発表された。また、主任研究者は、3年間に教育関係者、PTA、保健医療関係者、市民団体等から多数の講演依頼を受け(受諾した講演数103件、聴講者数約5万人)、研究成果を教育関係者や保護者に広く普及した。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
17件
その他論文(和文)
39件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
厚労省の青少年エイズ対策事業、文科省の性教育推進事業
その他成果(普及・啓発活動)
135件
文科省、地方教育委員会、PTA、市民団体からの依頼講演

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Takayuki Homma, Masako Ono-Kihara, Saman Zamani et al.
Demographic and behavioural characteristics of male sexually transmitted disease patients in Japan: a nationwide case-control study
Sexually transmitted Diseases , 35 (12) , 990-996  (2008)
原著論文2
Yoji Inoue, Yoshihiko Yamazaki, Masahiro kihara et al.
The intent and practice of condom use among HIV-positive men who have sex with men in Japan
AIDS Patient Care and STDs , 20 (11) , 792-802  (2006)
原著論文3
吉嶺敏子、木原雅子、市川誠一他
性行動に関する質問票の信頼性に関する研究
日本エイズ学会誌 , 8 (2) , 115-122  (2006)
原著論文4
Ono-Kihara M, Sato T, Kato H, Suguimoto-Watanabe SP et al.
Demographic and behavioral characteristics of non-sex worker females attending sexually transmitted disease clinics in Japan: a nationwide case-control study
BMC Public Health , 10 , 106-  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-