日本の性娯楽施設・産業に係わる人々への支援・予防対策の開発に関する学際的研究

文献情報

文献番号
200830013A
報告書区分
総括
研究課題名
日本の性娯楽施設・産業に係わる人々への支援・予防対策の開発に関する学際的研究
課題番号
H18-エイズ・一般-014
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
東 優子(大阪府立大学 人間社会学部)
研究分担者(所属機関)
  • 徐淑子(新潟県立看護大学)
  • 榎本てる子(関西学院大学神学部)
  • 野坂祐子(大阪教育大学学校危機メンタルサポートセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
5,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
A. 「性娯楽施設・産業に係わる人々」への健康教育介入に向けて、コミュニティ参加を促進する立案・実施・評価ガイドラインを検討する、B. SWの保健行動の阻害要因を把握し、介入プログラムの開発につなげる(前年度の継続調査)、C. 「ボーダレス」な女性SWの実態を把握する(前年度の継続調査)、D. 「性風俗にかかわる人々」にとっての「コミュニティ開発」に有効な手段を検討する。
研究方法
A. 諸外国のガイドラインと本研究班の成果を整理・検討した。B.外国人SW(N=7)の保健行動の阻害要因を把握するための半構造化面接調査を実施した。C.高収入アルバイト情報誌サイト及び同誌のメルマガ登録会員(約1,600名)を対象としたWEB調査を行った。D.キーパーソンへの面接調査を通じて、諸外国のSWコミュニティ開発に関するフレームワークとの比較を行いつつ、コミュニティ開発の試策として、職際・学際性豊かなポータルサイトを立ち上げ、その有効性をモニタリングした。
結果と考察
A.ガイドラインの策定においては、多様な背景を持つであろうプログラム参画者の共通言語を提供すること、健康教育介入の実践に必要な客観性と実証性を担保しながら実践のレベルまで掘り下げること、プログラムの「対象」「受益者」とされる人たちが「状況の定義」に影響する仕組みを提供することなどが、必要な用件となる。B.日本人SWと類似する問題(基本的知識の欠如、低調なピア・ネットワークの実態、売防法・風営法などの壁)、固有の問題(言語の壁、管理システム、在留資格問題、外国人コミュニティの実態など)、今後の介入手法の開発において勘案すべき事項などが明らかになった。C.回収票170票のうち、昨年度調査と同じ年齢群である68名(平均年齢22.91±3.55歳)に絞って分析をおこなったところ、前年度調査(N=2,264)を追認する結果が多く得られた。D.コミュニケーション・プラットフォームとして立ち上げたwebサイトの効果評価には時間を要するため今後に委ねたいが、ネットワークを活かしつつ、各種予防啓発イベントと連動させるなど、今後の活用可能性を検討しているところである。
結論
「性娯楽施設・産業に係る人々」、主として接客女性および顧客、ボーダーレス・ワーカーを対象とした健康教育介入のよりよい実践に資するための調査研究を実施し、情報を集積してきた。ガイドラインの検討を踏まえ、コミュニティ(当事者)参加型プログラムの展開を図ってゆきたい。

公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
-

文献情報

文献番号
200830013B
報告書区分
総合
研究課題名
日本の性娯楽施設・産業に係わる人々への支援・予防対策の開発に関する学際的研究
課題番号
H18-エイズ・一般-014
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
東 優子(大阪府立大学 人間社会学部)
研究分担者(所属機関)
  • 徐淑子(新潟県立看護大学)
  • 野坂祐子(大阪教育大学学校危機メンタルサポートセンター)
  • 榎本てる子(関西学院大学 神学部)
  • 生島嗣(ぷれいす東京)
  • 池上千寿子(ぷれいす東京)
  • 澁谷知美(東京経済大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「性娯楽施設・産業に係る人々」のwell-beingとHIV/AIDS対策事業に貢献すべく、男性顧客、セックスワーカー(SW)、素人/玄人のボーダレス化に注目した「一般女性」を対象とする調査を実施し、当該集団の感染脆弱性・予防対策ニーズを評価し、予防啓発活動のための基礎情報を得ること、セクシュアル・ヘルスを促進するための「しかけ」の開発と実践を行うことを目的とする。
研究方法
「男性顧客」について、1年目に男性週刊誌とタイアップした募集法調査(N=1,999)を実施、2年目はその継続調査への協力を許諾した1400名を対象とする郵送調査により785名から有効回答を得た。「SW」については、2年目と3年目に半構造化面接調査(N=17)を実施した。「一般女性」については、2年目に携帯電話アンケート会社に登録する女性2600名にURLを配信した調査実施し、2,264名から有効回答を得た。3年目には高収入アルバイト情報誌サイト及び同誌のメルマガ登録会員を対象としたWEB調査を実施し、170名から有効回答を得た。また、当該集団への健康教育介入に向けてコミュニティ参加を促進する立案・実施・評価ガイドラインを検討した他、コミュニティ開発の試策として、職際・学際性豊かなポータルサイトを立ち上げ、その有効性をモニタリングした。
結果と考察
従来、「男性顧客」「SW」「非SW」と一括されてきた集団の特性を明らかにすることにより、介入やニーズ把握の糸口をつかむことを可能とした。今後の展開には、多様な背景を持つであろうプログラム参画者の共通言語を提供すること、健康教育介入の実践に必要な客観性と実証性を担保しながら実践のレベルまで掘り下げること、プログラムの「対象」「受益者」とされる人たちが「状況の定義」に影響する仕組みを提供することなどが必要な用件となる。
結論
「性娯楽施設・産業に係る人々」、主として接客女性および顧客、ボーダーレス・ワーカーを対象とした健康教育介入のよりよい実践に資するための調査研究を実施し、情報を集積した。接近困難層である当該集団における当事者参加型プログラムの展開を図ってゆくためには、有効かつ倫理的な健康教育介入に向けたガイドラインの策定、ウェブを利用したコミュニティ開発などアクセサビリティの向上を多角的に検討していくことが重要である。

公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200830013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究が提出するデータは、HIV/STD予防の教育や有効な施策に役立つ有益な基礎情報を提供するものである。
臨床的観点からの成果
本研究が重視する「コミュニティ参加型アプローチ」は、「個別施策層」あるいは「接近困難層」の人権や社会的背景に考慮した研究モデルを示すものである。とくに、高収入アルバイト情報誌との協働による調査の実施は国際的にも報告事例が確認されず、性風俗産業等への参入に関心を寄せる女性および関係者(顧客・経営者など)に当研究班の運営する情報サイトの閲覧を促すことで、彼らの準備性に寄与する情報が発信できる点は、接近困難層を対象とするコミュニティ開発の新規モデルとして注目に値する。
ガイドライン等の開発
当事者参加と職際・学際性のもとでの実践に資することのできる健康教育プログラム立案・実施・評価のガイドラインを着想し、その目的と機能、構成・内容について検討した。より具体的には、EUROPAP/TAMPEP 発行のHustling for Health 、ニュージーランド政府発行のセックスワークと健康ガイドラインを邦訳し、平成18年度から20年度までの研究成果を生かしながら、独自のガイドライン策定に向けて準備中である。
その他行政的観点からの成果
ニュージーランド政府発行の健康教育介入の実践のためのガイドラインの邦訳とその検討をはじめとして、多様なバックグラウンドをもつ参与者間の意見の集約と調整、関係調整が大きな鍵を握る「コミュニティ(当事者)参加型アプローチ」のモデルを示した。
その他のインパクト
『週刊ポスト』(2006年11月17日と12月22日号)、朝日新聞(2007年2月8日全国版・朝刊)、産経新聞社の『Sankei Express』(2008年2月1日)で研究活動が取り上げられた。エイズ予防財団主催の成果発表会を2年連続で合計4回開催。日本性科学連合主催『第10回性科学セミナー』(2008年10月4日)、関西性教育研修セミナー(2008年7月27日)、その他民間組織が主催するイベントで広く一般国民に「セックスワークとHIV/AIDS」に関する予防啓発を行った。



発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
12件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
日本エイズ学会、日本質的心理学会
学会発表(国際学会等)
1件
Asia-Oceania Conference for Sexology
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
8件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-