HIV感染とエイズ発症の阻止及び治療に関わる基礎研究

文献情報

文献番号
200830010A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染とエイズ発症の阻止及び治療に関わる基礎研究
課題番号
H18-エイズ・一般-011
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
佐多 徹太郎(国立感染症研究所 感染病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 横田 恭子(国立感染症研究所  免疫部)
  • 田中 勇悦(琉球大学 医学部)
  • 宮澤 正顯(近畿大学 医学部)
  • 神奈木 真理(東京医科歯科大学  医歯(薬)学総合研究科)
  • 有吉 紅也(長崎大学 熱帯医学研究所)
  • 塩田 達雄(大阪大学 微生物病研究所)
  • 石坂 幸人(国立国際医療センター(研究所) 難治性疾患研究部)
  • 徳永 研三(国立感染症研究所 感染病理部)
  • 高橋 秀宗(国立感染症研究所 感染病理部)
  • 立川 愛(東京大学 医科学研究所  )
  • 小柳 義夫(京都大学 ウイルス研究所)
  • 梁 明秀(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
61,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染病態の基礎的な解析に焦点をあて、そこから得られる情報をもとに、感染防御免疫の増強、そして抗HIV薬剤やワクチンの開発に役立てることを目的とし、HIV感染免疫防御機構、HIV感染に関わる自然免疫等の宿主因子の解析、HIV感染病態の解明を3本の柱として、HIV感染やエイズ発症の阻止や治療に繋がる基礎的研究を行う。
研究方法
分担研究者の詳細な研究方法は分担研究者の報告書に譲る。
結果と考察
樹状細胞(DC)からCD4陽性T細胞へのHIV-1感染伝播を阻害した。Poly I:C によるDCへの分化培養法を見出した。HIV-1曝露非感染者に集積する遺伝子多型を見出すことに成功した。共生細菌にTLR3、4の刺激によるHIV-1複製抑制類似の効果を見出した。CRF01_AEにおいて報告されていない8箇所のCTLエピトープ領域を同定した。中和抗体誘導抗原の候補が得られた。HIV-2カプシドタンパク質の変異はヒトTRIM5alpha感受性を変化さることでウイルス増殖に影響した。ヒトTRIM5alphaの遺伝子多型に抗HIV-1活性を減弱させるもの、増強させると考えられるものを見出した。ゲノムDNA二重鎖切断はインテグレーション過程をエンハンスしていた。サブタイプCのVif蛋白は結合親和性により抗APOBEC3G活性を規定した。粒子形成に関与する新規の宿主因子BCA2/ Rabring7を同定した。感染者ではMIP-1alpha, MIP-1beta;, RANTES産生以外に、免疫機能が質的に大きく異なっていた。HIV-1感染マクロファージが誘導する特異的神経細胞障害過程を明かとした。SIV感染では神経・グリア細胞培養系で持続的にERKが活性化し、リン酸化p53が蓄積していた。
結論
DCからCD4陽性T細胞への効率よいHIV感染伝播の阻害法、DCの分化誘導法、自然感染抵抗性を示す遺伝要因、TLR3、4の刺激によるHIV-1防御法、CTLとウイルスの相関関係、中和抗体誘導法について知見が得られた。HIV感染感受性を決定する宿主因子、ゲノムDNAの二重鎖切断の役割、抗APOBEC3G活性を説明する分子機構について説明がなされた。粒子形成に関与する宿主因子を同定した。HIV感染による中枢神経組織破壊機構の理解が進んだ。

公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
-

文献情報

文献番号
200830010B
報告書区分
総合
研究課題名
HIV感染とエイズ発症の阻止及び治療に関わる基礎研究
課題番号
H18-エイズ・一般-011
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
佐多 徹太郎(国立感染症研究所 感染病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 横田 恭子(国立感染症研究所 免疫部)
  • 田中 勇悦(琉球大学 医学部)
  • 宮澤 正顯(近畿大学 医学部)
  • 神奈木 真理(東京医科歯科大学  医歯(薬)学総合研究科)
  • 有吉 紅也(長崎大学 熱帯医学研究所)
  • 塩田 達雄(大阪大学 微生物病研究所)
  • 石坂 幸人(国立国際医療センター 難治性疾患研究部)
  • 徳永 研三(国立感染症研究所 感染病理部)
  • 高橋 秀宗(国立感染症研究所 感染病理部)
  • 立川 愛(東京大学 医科学研究所)
  • 小柳 義夫(京都大学 ウイルス研究所)
  • 梁 明秀(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染病態の基礎的な解析に焦点をあて、そこから得られる情報をもとに、感染防御免疫の増強、そして抗HIV薬剤やワクチンの開発に役立てることを目的とし、HIV感染免疫防御機構、HIV感染に関わる自然免疫等の宿主因子の解析、HIV感染病態の解明を3本の柱として、HIV感染やエイズ発症の阻止や治療に繋がる基礎的研究を行う。
研究方法
分担研究者の詳細な研究方法は分担研究者の報告書に譲る。
結果と考察
Gag特異的CD4+T細胞増殖応答を回復させ、樹状細胞(DC)からCD4陽性T細胞へのHIV-1感染伝播を阻害した。DCへの分化培養法を見出した。HIV-1曝露非感染者に集積する遺伝子多型をGene1イントロンまたはRac2イントロンの遺伝子多型の集積として同定した。HIV-1による自然免疫応答の抑制機構を見出し、ウイルスの複製阻害を誘導した。CRF01_AEにおいてCTLエピトープ領域を同定した。マウスにおいて中和抗体を誘導した。TRIM5alpha;感受性に対応したウイルス変化はウイルス増殖にも影響した。Vpr蛋白はDNA二重鎖切断を通じてインテグレーションに関与した。Vif蛋白のA3Gへの結合能はサブタイプによって異なり、抗A3G活性を決定していた。粒子形成に関与する新規の宿主因子BCA2/ Rabring7を同定した。感染者ではMIP-1alpha;, MIP-1beta;, RANTES産生が低下するとともに質的な免疫機能低下が認められた。ラット脳海馬スライス培養系を用いてHIV-1感染による神経細胞障害過程を明かとした。SIV感染によってグリア細胞ではウイルスが持続感染し、ミクログリア細胞へのウイルス供給源となることがわかった。
結論
HIV感染免疫防御機構におけるGag特異的CD4+T細胞の役割、DCからT細胞へのHIV感染伝播の阻害法、DCの分化誘導法、自然感染抵抗性を示す遺伝要因、自然免疫を抑制するHIV-1因子とその利用法、感染患者におけるCTL免疫とウイルスの関係、中和抗体の誘導抗原について知見が得られた。HIVの感染感受性を決定し、ウイルスの変異をもたらす宿主因子、Vpr蛋白の複製への関与、Vif蛋白の活性分子機構について説明がなされた。粒子形成に関与する宿主因子を同定した。HIV感染病態の解明では、種々のサイトカインの発現や、エイズ脳症の発症に関わる病態が明らかにされた。

公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200830010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
HIV感染免疫防御機構におけるGag特異的CD4+T細胞の役割、DCの分化誘導法、自然感染抵抗性を示す遺伝要因、自然免疫を抑制するHIV-1因子とその利用法、感染患者におけるCTL免疫とウイルスの関係、中和抗体の誘導抗原について知見が得られた。HIVの感染感受性を決定し、ウイルスの変異をもたらす宿主因子、Vpr蛋白の複製への関与、Vif蛋白の活性分子機構について説明がなされた。粒子形成に関与する宿主因子を同定した。HIV感染病態の解明では、エイズ脳症の発症に関わる病態が明らかにされた。

臨床的観点からの成果
HIV感染者血漿中のIP-10が血中HIV量と相関することを見出した。血中ウイルス量の高い群でIL-2R, MIP-1alpha , MIP-1beta, RANTESの産生能が有意に低かった。感染者ではMIP-1alpha , MIP-1beta, RANTES産生以外に、免疫機能が質的に大きく異なっていた。ラット脳海馬スライス培養系を用いて、HIV-1感染マクロファージが誘導する特異的神経細胞障害過程を明かとし、エイズ患者の神経細胞分化抑制の過程の詳細なメカニズムを明らかにしつつある。

ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
HIV曝露非感染者の持つ染色体の遺伝的特徴等が明かとなりつつあり、より広範囲のデータ解析が必要となる可能性がある。

その他のインパクト
マスコミには特に取り上げられていない。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
145件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
163件
学会発表(国際学会等)
57件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計7件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Iwata N, Yoshida H, Sata T, Nakajima N.et al.
Simian fetal brain progenitor cells for studying viral neuropathogenesis.
J Neurovirol , 13 , 11-22  (2007)
原著論文2
Kubo M,Nishitsuji H,Kannagi M.et al
Suppression of human immunodeficiency virus type 1 replication by arginine deiminase of Mycoplasma arginini.
J Gen Virol , 87 , 1589-1593  (2006)
原著論文3
Wichukchinda N, Kitamura Y, Rojanawiwat A,Ariyoshi K. et al.
The polymorphisms in DC-SIGNR affect susceptibility to HIV type 1 infection.
AIDS Res Hum Retroviruses , 23 , 686-692  (2007)
原著論文4
Kinomoto M, Kanno T,Tokunaga K.et al.
All APOBEC3 family proteins differentially inhibit LINE-1 retrotransposition.
Nucleic Acids Res , 35 , 2955-2964  (2007)
原著論文5
Hoshino S, Sun B, Konishi M,Ishizaka Y.et al.
Vpr in plasma of HIV type 1-positive patients is correlated with the HIV type 1 RNA titers .
AIDS Res Hum Retroviruses , 23 , 391-397  (2007)
原著論文6
Takahashi Y, Tanaka R, Yamamoto N, Tanaka Y
Enhancement of OX40-induced apoptosis by TNF co-activation in OX40-expressing T cell lines in vitro leading to decreased targets for HIV-1 production.
AIDS Res Hum Retroviruses , 24 , 423-435  (2008)
原著論文7
Takeda E, Tsuji-Kawahara S, Sakamoto M, Miyazawa M. et al.
Mouse APOBEC3 restricts friend leukemia virus infection and pathogenesis in vivo.
J Virol , 82 , 10998-11008  (2008)
原著論文8
Kono K, Song H,Shioda T.et al
Comparison of anti-viral activity of rhesus monkey and cynomolgus monkey TRIM5alphas against human immunodeficiency virus type 2 infection.
Virology , 373 , 447-456  (2008)
原著論文9
Kitayama H, Miura Y, Ando Y, Hoshino S,Koyanagi Y. et al.
Human immunodeficiency virus type 1 Vpr inhibits axonal outgrowth through induction of mitochondrial dysfunction.
J Virol , 82 , 252-2542  (2008)
原著論文10
Mizukoshi F, Yamamoto T, Mitsuki YY, Tsunetsugu-Yokota Y. et al.
Activation of HIV-1 Gag-specific CD8(+) T cells by yeast-derived VLP-pulsed dendritic cells is influenced by the level of mannose on the VLP antigen.
Microbes Infect  (2009)
原著論文11
Miyazaki E, Kawana-Tachikawa A, Iwamoto A. et al.
Highly restricted TCR repertoire in the CD8+ T-cell response against an HIV-1 epitope with a stereotypic amino acid substitution.
AIDS  (2009)
原著論文12
Takahashi H, Kitagawa Y, Maeda-Satoh M,Sata T
Monoclonal Antibody and siRNAs for Topoisomerase ISuppress Telomerase Activity.
Hybridoma (Larchmt)  (2009)
原著論文13
Yamamoto T, Isogai M,Tsunetsugu-Yokota Y. et al.
High and inducible expression of human immunodeficiency virus type 1 (HIV-1) Nef by adenovirus vector does not disturb potent antigen presentation by monocyte-derived dendritic cells.
Microbes Infect , 8 , 2522-2530  (2006)
原著論文14
Song H, Nakayama EE, Shioda T.
Effects of human interleukin 7 on HIV-1 replication in monocyte-derived human macrophages.
AIDS , 20 , 937-939  (2006)
原著論文15
Fujii T, Nakamura T, Iwamoto A.
Pneumocystis pneumonia in patients with HIV infection: clinical manifestations, laboratory findings, and radiological features.
J Infect Chemother , 13 , 1-7  (2007)
原著論文16
Koyanagi Y, Tanaka Y, Ito M, Yamamoto N.
Humanized mice for human retrovirus infection.
Curr Top Microbiol Immunol , 324 , 133-148  (2008)
原著論文17
Yamamoto T, Miyoshi H,Tsunetsugu-Yokota Y. et al.
Lentivirus vectors expressing short hairpin RNAs against the U3-overlapping region of HIV nef inhibit HIV replication and infectivity in primary macrophages.
Blood , 108 , 3305-3312  (2006)
原著論文18
Hamamoto S, Nishitsuji H,Kannagi M, Masuda T.
Identification of a novel human immunodeficiency virus type 1 integrase interactor, Gemin2, that facilitates efficient viral cDNA synthesis in vivo.
J Virol , 80 , 5670-5677  (2006)
原著論文19
Nishitsuji H, Kohara M, Kannagi M, Masuda T.
Effective suppression of human immunodeficiency virus type 1 through a combination of short- or long-hairpin RNAs targeting essential sequences for retroviral integration.
J Virol , 80 , 7658-7666  (2006)
原著論文20
Sakuragi S, Sakuragi J, Morikawa Y, Shioda T.
Development of a rapid and convenient method for the quantification of HIV-1 budding.
Microbes Infect , 8 , 1875-1881  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-