末梢CD4陽性Tリンパ球中の残存プロウイルス量とその活動指数は治療中断の指標となりうるかを明らかにする研究

文献情報

文献番号
200830009A
報告書区分
総括
研究課題名
末梢CD4陽性Tリンパ球中の残存プロウイルス量とその活動指数は治療中断の指標となりうるかを明らかにする研究
課題番号
H18-エイズ・一般-010
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
金田 次弘(独立行政法人国立病院機構 名古屋医療センター 臨床研究センター 血液免疫研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 濱口 元洋(独立行政法人国立病院機構 名古屋医療センター)
  • 鈴木 康弘(東北大学大学院 医学系研究科)
  • 白阪 琢磨(独立行政法人国立病院機構 大阪医療センター)
  • 南  留美(独立行政法人国立病院機構 九州医療センター)
  • 伊藤 俊広(独立行政法人国立病院機構 仙台医療センター)
  • 立川 夏夫(横浜市立市民病院 感染症部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、HAART著効患者を対象にして末梢CD4陽性Tリンパ球中に残存しているプロウイルスコピー数と全長HIV-1 mRNAを定量し、1コピー当りのプロウイルスのHIV-1 mRNA転写能(活動指数)を算出し、活動指数と残存プロウイルス量がHAART中断のエビデンスになるかを検討することである。
研究方法
DNAとRNAの抽出および精製: DNAはEDTA加末梢血より精製したCD4陽性Tリンパ球を用い、キアゲンBlood mini kitにて抽出・精製した。RNAはトリゾールにて抽出した。リアルタイムPCR 法による定量:主任研究者らにより開発された高感度リアルタイムPCR法により、HIV-1プロウイルスコピー数と全長HIV-1 mRNAのコピー数を定量し、プロウイルスの活動度を活動指数(全長HIV-1 mRNAコピー数/プロウイルスコピー数)で表現した。
結果と考察
1. プロウイルス量と全長HIV-1 mRNAの定量:3年度に入り、57症例、136検体の追加ができ、現在までに180症例282検体について、定量を行なうことができた。その結果、転写活性が低値(mRNA量が検出感度以下)を示す症例は83例、かつ残存プロウイルス量が100コピー/10の6乗細胞以下の症例を64例抽出することができた。
2. 治療中断臨床試験:長期にわたりHAARTが奏功し残存プロウイルス量が微少(<100コピー/10の6乗細胞)で、かつプロウイルスの活動指数が低値(<2.0)を示し、CD4リンパ球数が500/μl以上を確保できている名古屋医療センターの3症例に対して患者の同意の下に治療を中断した。3例ともに治療中断後21日目から54日目の期間内に血中HIV-1ウイルスのリバウンドが観察され、治療再開の経緯をたどった。この結果はSMART研究の結果からある程度の予測はできたとはいえ残念な結果であった。今回の研究はHIV-1 感染マクロファージリザバーを考慮していなかったがこの点を考慮に入れた再検討などが重要と思われる。

結論
10年以上HAARTにより効果的に治療を継続していた症例であっても治療中断後にウイルスのリバウンドを見たことから末梢血CD4陽性Tリンパ球中のプロウイルス量とその活動度だけでは治療中断の指標たりえないとの結論を得た。

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-

文献情報

文献番号
200830009B
報告書区分
総合
研究課題名
末梢CD4陽性Tリンパ球中の残存プロウイルス量とその活動指数は治療中断の指標となりうるかを明らかにする研究
課題番号
H18-エイズ・一般-010
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
金田 次弘(独立行政法人国立病院機構 名古屋医療センター 臨床研究センター 血液免疫研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 濱口 元洋(独立行政法人国立病院機構 名古屋医療センター)
  • 鈴木 康弘(東北大学大学院 医学系研究科)
  • 白阪 琢磨(独立行政法人国立病院機構 大阪医療センター)
  • 南  留美(独立行政法人国立病院機構 九州医療センター)
  • 伊藤 俊広(独立行政法人国立病院機構 仙台医療センター)
  • 立川 夏夫(横浜市立市民病院 感染症部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、HAART著効患者を対象にして末梢CD4陽性Tリンパ球中に残存しているプロウイルスコピー数と全長HIV-1 mRNAを定量し、1コピー当りのプロウイルスのHIV-1 mRNA転写能(活動指数)を算出し、活動指数と残存プロウイルス量がHAART中断のエビデンスになるかを検討することである。
研究方法
1. DNAとRNAの抽出および精製:EDTA加末梢血よりStemSep14052を用いCD4陽性細胞を精製した。DNAはキアゲンBlood mini kitを用いて抽出・精製した。RNAはトリゾールにて抽出した。
2. 末梢CD4陽性Tリンパ球中に残存しているHIV-1プロウイルスコピー数と全長HIV-1 mRNAのコピー数は主任研究者らにより開発された高感度リアルタイムPCR法を用いた。検出限界は2コピー/ 10の6乗細胞である。
3. プロウイルスの活動度:残存プロウイルス1コピー当りのHIV-1 mRNA転写活性を活動指数(全長HIV-1 mRNAコピー数/プロウイルスコピー数)で表現した。
4. 治療中断臨床試験:長期にわたり(3年以上)HAARTが奏功し残存プロウイルス量が微少(<100コピー/10の6乗細胞)で、かつプロウイルスの活動指数が低値(<2.0)を示し、CD4リンパ球数が500/μl以上を確保できている症例に対して患者の同意の下に治療を中断した。
結果と考察
1. プロウイルス量と全長HIV-1 mRNAの定量:3年間で180症例282検体について、プロウイルス量と全長HIV-1 mRNAの定量を行なうことができた。このうち転写活性が低値(mRNA量が検出感度以下)を示す症例は83例存在し、かつ残存プロウイルス量が100コピー/10の6乗細胞以下の症例は64例存在した。
2. 治療中断臨床試験:名古屋医療センターで実施できた3例ともに治療中断後21日目から54日目の期間内に血中HIV-1ウイルスのリバウンドが観察され、治療再開の経緯をたどった。
結論
10年以上HAARTにより効果的に治療を継続していた、プロウイルス量が100コピー/10の6乗細胞以下、細胞内HIV-1 mRNAが検出感度以下という症例であってもリバウンドを見たことから末梢血CD4陽性Tリンパ球中のプロウイルス量とその活動度だけでは治療中断の指標たりえないとの結論を得た。

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200830009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
Nested real-time PCR法を確立することにより、HIV-1感染者のCD4陽性細胞中に潜伏しているHIV-1プロウイルスを高感度で定量できるようになり、従来に増してHIV-1感染実態が的確に把握できるようになった。また、HIV-1 mRNAを同時定量することによりプロウイルスの平均転写活性能を測定できるようになり、残存プロウイルスの“生き”を数値化できた。
臨床的観点からの成果
10年以上HAARTにより効果的に治療を継続していた、プロウイルス量が100コピー/10の6乗細胞以下、細胞内HIV-1 mRNAが検出感度以下という症例であっても治療を中断すると血中ウイルスのリバウンドを見たことから、HIV-1の潜伏感染リザバーは頑強で転写活性は保持されていた。抗HIV薬の服用はまさに、一生継続しなければならないと言う従来の定説を支持した結果が得られた。抗HIV薬服用アドヒアランスの重要性の再認識と強調に活用できると思われる。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
13件
原著論文(英文等)
19件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
77件
学会発表(国際学会等)
14件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Bi X, Suzuki Y, Gatanaga H, et al.
High frequency and proliferation of CD4+FOXP3+ regulatory T cells in HIV-1 infected patients with low CD4 count.
Eur. J. Immunol. , 39 , 301-309  (2009)
原著論文2
Fujisaki S, Ibe S, Hattori J, et al.
An 11-Year Surveillance of HIV Type 1 Subtypes in Nagoya, Japan.
AIDS Res. Hum. Retroviruses , 25 , 15-21  (2009)
原著論文3
Minami R, Yamamoto M, Takahama S, et al.
Human herpesvirus 8 DNA load in the leukocytes correlates with the platelet counts in HIV type 1-infected individuals.
AIDS Res. Hum. Retroviruses , 25 , 1-8  (2009)
原著論文4
Theo A, Masebe T, Suzuki Y, et al.
Peltophorum africanum, a traditional South African medicinal plant, contains an anti HIV-1 constituent, betulinic acid.
Tohoku J. Exp. Med. , 217 , 93-99  (2009)
原著論文5
Ibe S, Hattori J, Fujisaki S, et al.
Trend of drug-resistant HIV type 1 emergence among therapy-naive patients in Nagoya, Japan: an 8-year surveillance from 1999 to 2006.
AIDS Res. Hum. Retroviruses , 24 , 7-14  (2008)
原著論文6
Takahashi M, Kudaka Y, Okumura N, et al.
Pharmacokinetic parameters of lopinavir determined by moment analysis in Japanese HIV type 1-infected patients.
AIDS Res. Hum. Retroviruses , 24 , 114-115  (2008)
原著論文7
Ibe S, Shigemi U, Sawaki K, et al.
Analysis of near full-length genomic sequences of drug-resistant HIV-1 spreading among therapy-na&iuml;ve individuals in Nagoya, Japan: amino acid mutations associated with viral replication activity.
AIDS Res. Hum. Retroviruses , 24 , 1121-1125  (2008)
原著論文8
Takahashi M, Konishi M, Kudaka Y, et al.
A conventional LC-MS method developed for the determination of plasma raltegravir concentrations.
Biol. Pharm. Bull. , 31 , 1601-1604  (2008)
原著論文9
Xiao P, Usami O, Suzuki Y, et al.
Characterization of a CD4-independent clinical HIV-1 that can efficiently infect human hepatocytes through chemokine (C-X-C motif) receptor 4.
AIDS , 22 , 1749-1757  (2008)
原著論文10
Takahashi M, Ibe S, Kudaka Y, et al.
No observable correlation between central nervous system side effects and EFV plasma concentration in Japanese HIV-1 infected patients treated with EFV containing HAART.
AIDS Res. Hum. Retroviruses , 23 , 983-987  (2007)
原著論文11
Takahashi M, Kudaka Y, Okumura N, et al.
Determination of plasma tenofovir concentrations using a conventional LC-MS method.
Biol. Pharm. Bull. , 30 , 1784-1786  (2007)
原著論文12
Takahashi M, Kudaka Y, Okumura N, et al.
The validation of plasma darunavir concentrations determined by the HPLC method for protease inhibitors.
Biol. Pharm. Bull. , 30 , 1947-1949  (2007)
原著論文13
Gatanaga H, Hayashida T, Tsuchiya K, et al.
Successful efavirenz dose reduction in HIV type 1-infected individuals with cytochrome P450 2B6 *6 and *26
Clin. Infect. Dis. , 45 , 1230-1237  (2007)
原著論文14
Fujisaki S, Fujisaki S, Ibe S, et al.
Performance and quality assurance of genotypic drug-resistance testing for human immunodeficiency virus type 1 in Japan.
Jpn. J. Infect. Dis. , 60 , 113-117  (2007)
原著論文15
Gatanaga H, Ibe S, Matsuda M, et al.
Drug-resistant HIV-1 prevalence in patients newly diagnosed with HIV/AIDS in Japan.
Antiviral Res. , 75 , 75-82  (2007)
原著論文16
Ibe S, Fujisaki S, Fujisaki S, et al.
Quantitative SNP-Detection Method for Estimating HIV-1 Replicative Fitness: Application to Protease Inhibitor-Resistant Viruses.
Microbiol. Immunol. , 50 , 765-772  (2006)
原著論文17
Gatanaga H, Das D, Suzuki Y, et al.
Altered HIV-1 Gag protein interactions with cyclophilin A(CypA) on the accuisition of H219Q and H219P substitutions in the CypA binding loop.
J. Biol. Chem. , 281 , 1241-1250  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-