重篤な日和見感染症の早期発見と最適治療に関する研究

文献情報

文献番号
200830007A
報告書区分
総括
研究課題名
重篤な日和見感染症の早期発見と最適治療に関する研究
課題番号
H18-エイズ・一般-008
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
安岡 彰(長崎大学 医学部・歯学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 照屋 勝治(国立国際医療センター戸山病院)
  • 片野 晴隆(国立感染症研究所)
  • 竹内 勤(慶応大学医学部)
  • 古西 満(奈良県立医科大学)
  • 山崎 善隆(信州大学医学部附属病院)
  • 永井 英明(国立病院機構東京病院)
  • 堀場 昌英(国立病院機構東埼玉病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
21,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日和見感染症の動向を継続して調査するとともに、重要な日和見感染症の早期発見の方法を確立し、免疫再構築症候群を考慮に入れた適切な治療を確立し、その情報発信も最終目標とした。
研究方法
以下の点を中心に検討した。
1)日和見感染症(エイズ指標疾患)の動向と頻度の調査
2)HIV合併日和見感染症の早期発見 a)結核 b)進行性多巣性白質脳症(PML) c)悪性リンパ腫 d)原虫症
3)日和見感染症の治療法・免疫再構築症候群への対処に関する研究:
 a)免疫再構築症候群 b)ニューモシスチス肺炎(PCP) c)非結核抗酸菌症 d)サイトメガロウイルス(CMV)感染症 e)原虫症
4)成果の公表
結果と考察
1)日和見合併症の動向と頻度の調査: ニューモシスチス肺炎(PCP)が最多で、エイズ指標悪性腫瘍の増加が続いていた。非指標悪性腫瘍の発生数は年々増加し、2007年の年齢調整罹患率は790/10万となった。
2)HIV合併日和見感染症の早期発見:
 a)結核:QFTはHIV感染者でも結核の診断に使用できることが確認された。抗結核薬治療では初回レジメンの忍容性は低かった。
 b)進行性多巣性白質脳症(PML):プレドニゾロン投与により神経機能の悪化を来さず治療できた症例を経験した。
 c)悪性リンパ腫: 悪性リンパ腫組織からEBVが90%で検出され、HIVも30%で検出された。HIVインテグレーションが見られたリンパ腫の1例が発見された。
 d)原虫症: クリプトスポリジウムのリアルタイムPCR法を確立した。
3)日和見感染症の治療法・免疫再構築症候群への対処に関する研究:
 a)免疫再構築症候群:多変量解析で、CD4数50 /μL未満とウイルス量1.0×105コピー以上が有意な発症リスクであった。
 b)ニューモシスチス肺炎(PCP):死亡例では血清アルブミン及びPaO2の低値、KL-6とCRPが有意に高値で、高齢者の傾向が認められた。
 c)非結核抗酸菌症:マクロライド系抗菌薬は比較的低濃度でもMACによる免疫再構築症候群発症を抑制する可能性が示唆された。
 d)サイトメガロウイルス感染症:予防的CMV治療が発症予防となっている可能性が示唆された。
 e)原虫症: トキソプラズマの治療ターゲットとしてのNTPaseの構造解析を行った。
4)成果の公開: エイズ予防財団の成果発表事業により研究成果の発表を行った。
結論
重篤な日和見感染症の早期発見と最適治療に関して、現在問題となっている疾患や症候群に対する病態の解析や対処法について明らかにし、その成果を公開した

公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
-

文献情報

文献番号
200830007B
報告書区分
総合
研究課題名
重篤な日和見感染症の早期発見と最適治療に関する研究
課題番号
H18-エイズ・一般-008
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
安岡 彰(長崎大学 医学部・歯学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 照屋 勝治(国立国際医療センター戸山病院)
  • 片野 晴隆(国立感染症研究所感染病理部)
  • 中村 哲也(東京大学医科学研究所)
  • 竹内 勤(慶応大学医学部)
  • 古西 満(奈良県立医科大学)
  • 塚田 弘樹(新潟大学医歯学総合病院)
  • 山崎 善隆(信州大学医学部附属病院)
  • 永井 英明(国立病院機構東京病院)
  • 堀場 昌英(国立病院機構東埼玉病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 HAART時代における日和見合併症に対する早期診断・最適治療について現在の問題点に焦点を当てて検討した。
研究方法
本研究では次の点を中心に検討した。
1)日和見感染症(エイズ指標疾患)の動向と頻度の調査:
2)HIV合併日和見感染症の早期発見
3)日和見感染症の治療法・免疫再構築症候群への対処に関する研究
4)成果の公表
倫理面への配慮:倫理指針に則り、必要に応じて倫理審査に諮り、承認を得て研究を行った。
結果と考察
1)日和見合併症の動向と頻度の調査: AIDS指標疾患の報告数は年々増加しており、悪性腫瘍の増加が認められた。非指標悪性腫瘍は年々増加していた。
2)HIV合併日和見感染症の早期発見:
 a)結核:QFTはHIV感染者の結核でも有用性が高かった。
 抗結核薬治療では初回レジメンの忍容性は低かった。
 b)進行性多巣性白質脳症(PML):プレドニゾロン投与により神経機能の悪化を来さず治療できた症例を経験した。
c)非結核抗酸菌症(MAC):HAART後には免疫再構築症候群症例の割合が増加してきていた。アジスロマイシンによる発症予防投薬で免疫再構築症候群の発症は有意に低下した。
 d)悪性リンパ腫:悪性リンパ腫組織からEBVが90%で検出され、HIVも30%で検出された。今回新たにHIVのインテグレーションが見られたリンパ腫の1例が発見された。
 e)原虫症:クリプトスポリジウムのリアルタイムPCR法を確立した。
3)日和見感染症の治療法・免疫再構築症候群への対処に関する研究:
 a)免疫再構築症候群:免疫再構築症候群発症例では多変量解析で、CD4数50 /μL未満と高ウイルス量が有意な発症リスクであった。
 b)ニューモシスチス肺炎(PCP):間質性肺炎の中からPCPを診断する手がかりとしては、血中β-D-グルカンが有用であった。
 c)非結核抗酸菌症:比較的低濃度のクラリスロマイシンによってサイトカイン・ケモカインの産生が抑制され、好中球あるいは単球の遊走能も抑制された。
 d)サイトメガロウイルス感染症:予防的治療が、CMV疾患の発症予防となっている可能性が示唆された。
 e)原虫症: トキソプラズマのNTPase等の構造解析を行った。
4)成果の公開: エイズ予防財団の成果発表事業により研究成果の発表を行った。
結論
日和見感染症の動向が明らかになるとともに、疾患様相が年々変化していることも明らかとなり、HIV患者の発癌についても初めてのデータが得られた。また日和見合併症の診断や治療、免疫再構築症候群の予防や予測・診断に関する貴重な成績が得られた。

公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-12-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200830007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
日和見感染症が増加傾向にあることや疾患様相が年々変化していることも明らかとなり、我が国唯一の疫学データとして貴重な成果が得られた。またHIV患者の発癌についても初めてのデータが得られた。診断では結核症に対する新しいマーカであるQFTが日本のHIV感染者にも用いることができることが明らかとなり、また悪性リンパ腫発症に様々なウイルスが関与する可能性が示唆されるなど貴重な成績が得られた。
臨床的観点からの成果
日和見感染症の動向や、悪性腫瘍の増加、免疫再構築症候群の予防と対処法の方向性の提示、結核症診断のマーカーや、非結核抗酸菌症、進行性多巣性白質脳症の治療の可能性など、臨床上有益な成果が多数得られた。
ガイドライン等の開発
免疫再構築症候群の診断の手引きを作成し全国診療拠点病院に配布するとともにWeb上で公開した。
その他行政的観点からの成果
日和見感染症の動向や、悪性腫瘍が増加している点など、今後のHIV行政でのポイントを明らかにするデータを提供することができた。
その他のインパクト
エイズ予防財団の成果発表事業を活用し、大阪、東京、沖縄で研究成果の発表会を開催した。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
11件
その他論文(和文)
14件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-