HIV感染症に合併する各種疾病に関する研究

文献情報

文献番号
200830006A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症に合併する各種疾病に関する研究
課題番号
H18-エイズ・一般-007
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
小池 和彦(東京大学 東京大学医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 高松純樹(名古屋大学医学部附属病院)
  • 菅原寧彦(東京大学医学部附属病院)
  • 四柳 宏(東京大学医学部附属病院)
  • 菊池 嘉(国立国際医療センター)
  • 茶山一彰(広島大学医歯薬学総合研究科)
  • 髭 修平(北海道大学病院)
  • 正木尚彦(国立国際医療センター)
  • 加藤道夫(国立病院機構)
  • 服部俊夫(東北大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
30,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染者の死因は大きく変化してきている。HIV感染患者の死亡のうち約半数が非AIDS関連死で、その多くがウイルス性肝疾患による死である。HIV感染者に合併した慢性HCV、HBV感染症への対策が急務である。
研究方法
HIV・HBV重複感染症の実態を把握するためのデータベース作成、リバビリン併用ペグ・インターフェロン(PegIFN)治療時代のHIV・HCV重複感染のコントロール法の確立、HIV感染合併B型肝炎患者の治療法と薬剤耐性に関する研究、等を行なった。
結果と考察
HIV・HBV重複感染例は、全国拠点病院のうち首都圏、大都市の一部病院に集中する傾向が顕著であり、これらの病院におけるHIV感染症診療医と肝臓疾患診療医との連携を強めて行くことが極めて重要と思われた。ただし、以前の研究班で行なわれたHIV・HCV重複感染症の調査に比べると、大都市への集中は若干少ない様に思われた。また、班員の7施設における共同研究によって、HIV・HBV重複感染症における肝疾患の実態が明らかとなった。HIV感染症に重複感染しているHBVによる肝疾患にいついては、感染からの年数がまだ短いためか、進行肝硬変、肝癌へ進行している例は、現在のところまだ少数であった。しかしながら、肝発癌例も認められてきており、今後は進行肝疾患が増加してよくことが懸念される。
 HIV感染症に合併する急性B型肝炎は遷延化しやすいことが明らかとなった。HIV感染症におけるHBV重複感染率の高さは、この事実によって説明されると考えられた。
 HIV・HBV重複感染症における抗HIV感染薬の使用法についての検討で、症例数は充分ではないものの、HBV量が多い例ではHAART開始時に抗HBV作用をもつ抗HIV薬を2剤(テノホビル+3TC or FTC)使用する方が肝疾患の予後が良好であった。抗HBV作用をもたない抗HIV薬のみでHAARTを開始した場合には、肝炎の悪化が見られた。しかしながら、抗HBV作用をもつ抗HIV薬の耐性HBV誘導性に関するデータは少なく、長期にわたるHAARTにおける耐性HBV出現の問題は未解決である。また、抗HIV薬に比して抗HBV薬の選択肢が少ないことも足枷である。HBV感染合併HIV感染症の治療ガイドラインが作成された。

結論
HIV感染症に合併するB型肝炎とC型肝炎について、疫学調査、肝疾患進行度調査、ガイドライン作成、等を行なった。今後のHIV・HBV・HCV重複感染症例の診療に大きな成果を上げることが期待される。


公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-12-01
更新日
-

文献情報

文献番号
200830006B
報告書区分
総合
研究課題名
HIV感染症に合併する各種疾病に関する研究
課題番号
H18-エイズ・一般-007
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
小池 和彦(東京大学 東京大学医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 高松純樹(名古屋大学医学部附属病院)
  • 菅原寧彦(東京大学医学部附属病院)
  • 四柳宏(東京大学医学部附属病院)
  • 菊池 嘉(国立国際医療センター )
  • 茶山一彰(広島大学医歯薬学総合研究科)
  • 髭修平(北海道大学病院)
  • 正木尚彦(国立国際医療センター )
  • 加藤道夫(国立病院機構)
  • 服部俊夫(東北大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染者の死因は大きく変化してきている。HIV感染患者の死亡のうち約半数が非AIDS関連死で、その多くがウイルス性肝疾患による死である。HIV感染者に合併した慢性HCV・HBV感染症への対策が必須である。
研究方法
HIV・HBV重複感染症の実態を把握するためのデータベース作成、リバビリン併用ペグ・インターフェロン(PegIFN)治療時代のHIV・HCV重複感染のコントロール法の確立、HIV感染合併B型肝炎患者の治療法と薬剤耐性に関する研究、等を行なった。
結果と考察
HAARTによってHIV感染者の予後は改善してきているが、HIV感染患者の死因のうち非AIDS関連死が約半数、そして、その約90%が肝疾患関連であり、多くはC型肝炎ウイルス(HCV)あるいはB型肝炎ウイルス(HBV)による持続感染症に関連した死となっている。したがって、HIV感染者に合併したC型慢性肝炎、B型慢性肝炎の治療法を確立することが重要である。全国拠点病院に対してHIV・HBV重複感染症に関するアンケート調査を行なったところ、全体では5988例中377例(6.4%)においてHBs抗原が陽性であった。HIV感染症に合併する慢性肝疾患について、当班員の施設におけるHIV・HBV重複感染例での肝疾患の実態について詳細な共同研究を行った。感染からの年数がまだ短いためか、進行肝硬変、肝癌へ進行している例は、まだ少数であるが、診療上の大きな問題となっていることが明らかになった。HIV感染例に合併するB型急性肝炎とその経過について詳細な検討が行われ、HIV感染症に合併したB型急性肝炎は高率に持続感染化すること、HIV非感染例に比して遺伝子型AのHBVによる感染が多いことが明らかになった。新規のB型肝炎合併を防ぐため、HBワクチン投与を推進して行くことも推奨された。HBV感染症に対するHAARTの影響の検討の結果、テノホビル+3TC or FTC投与例においては合併するB型肝炎の経過は、短期間の観察ではあるが、良好であることが明らかとなった。HBV感染合併HIV感染症の治療ガイドラインが作成された。抗HCV療法に関してはペグ・インターフェロン長期投与治療への参加数の増大、などが今後進めて行くべき課題と考えられる。
結論
HIV感染症に合併するB型肝炎とC型肝炎について、疫学調査、肝疾患進行度調査、ガイドライン作成、等を行なった。今後のHIV・HBV・HCV重複感染症例の診療に大きな成果を上げることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-12-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200830006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
HIV感染症に合併したB型慢性肝炎でのHBV subgenotype を解析した。B型慢性肝炎における分布はCeとBjであり6%にAeが存在していた。B型急性肝炎では、Ae、B2、B3、C1などの海外型が約40%を占めていた。HIV感染症に合併するB型慢性肝炎ではAeであった。CHB、AHB、CHB+HIVの3グループにsubgenotype Aeが存在していた。CHB+HIVは、AHBとMSMのCHBとウイルス学的に相同性を認めたが、HIV重感染による特定の変異は、確認できなかった。
臨床的観点からの成果
HIV感染症に合併するウイルス肝炎の実態を把握するため、全国HIV拠点病院に対してHIV・HBV重複感染症に関するアンケート調査を行なった結果、全体では、5988例中377例(6.4%)においてHBs抗原が陽性であった。急性感染後のB型肝炎慢性化が高率に認められた点がHBV単独感染と大きく異なっていた。成果はHepatol Res等の雑誌に掲載され、国内外から大きな反響があった。
ガイドライン等の開発
HIV・HBV重複感染時の診療ガイドライ(2009年度版)を作成、出版した。
その他行政的観点からの成果
HIV感染者の多くにHCV感染症、HBV感染症が合併し、慢性肝炎、肝硬変、肝癌へと到る連鎖に苦しめられている。過去の輸血行政にも大きな関連性がある。HIV感染症に合併する肝疾患について、B型肝炎とC型肝炎に重点をおいて、疫学、診療体制の組織強化、抗ウイルス療法の実行等を行なった。重複感染症の実態把握がなされ、治療法の改良も進行してきており、予後、QOLの改善が期待され、行政的な意義も大きいと考えられる。
その他のインパクト
平成19年第21回日本エイズ学会においてシンポジウム「HIV・HBV/HCV重複感染の本邦における実態」を開催した。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
124件
その他論文(和文)
92件
その他論文(英文等)
10件
学会発表(国内学会)
25件
学会発表(国際学会等)
115件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
95件
講演会における講演

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yotsuyanagi H, Kikuchi Y, Tsukada K, et al.
Chronic hepatitis C in patients coinfected with human immunodeficiency virus in Japan: a retrospective multicenter analysis.
Hepatol Res , 39  (2009)
原著論文2
Yanagimoto S, Tatsuno K, Okugawa S, et al.
A single amino acid of toll-like receptor 4 that is pivotal for its signaltransduction and subcellular localization.
J Biol Chem , 284 , 3513-3520  (2009)
原著論文3
Koike K.
Steatosis, Liver Injury and Hepatocarcinogenesis in Hepatitis C Viral Infection.
J Gastroenterol , 45 , 82-88  (2009)
原著論文4
Tanaka N, Moriya K, Kiyosawa K, et al.
PPAR-a is essential for severe hepatic steatosis and hepatocellular carcinoma induced by HCV core protein.
J Clin Invest , 118 , 683-694  (2008)
原著論文5
Koike K, Kikuchi Y, Kato M, et al.
Prevalence of hepatitis B virus infection in patients with human immunodeficiency virus in Japan.
Hepatol Res , 38 , 310-314  (2008)
原著論文6
Koike K, Tsutsumi T, Miyoshi H, et al.
Molecular Basis for the Synergy between Alcohol and Hepatitis C Virus in Hepatocarcinogenesis.
J Gastroenterol Hepatol , 23 , 587-591  (2008)
原著論文7
Moriishi K, Mochizuki R, Moriya K, et al.
Critical role of PA28γ in hepatitis C virus-associated steatogenesis and hepatocarcinogenesis.
Proc Natl Acad Sci USA , 104 , 1661-1666  (2007)
原著論文8
Koike K, Tsukada K, Yotsuyanagi H, et al.
Prevalence of Coinfection with Human Immunodeficiency Virus and Hepatitis C Virus in Japan.
Hepatol Res , 37 , 2-5  (2007)
原著論文9
Bi X, Gatanaga H, Koike K, et al.
Reversal periods and patterns from drug resistant to wild-type HIV-1 after cessation of anti-HIV therapy
AIDS Res Hum Retro , 23 , 43-50  (2007)
原著論文10
Yotsuyanagi H, Koike K.
Mechanisms underlying drug resistance in antiviral treatment for infections with hepatitis B and C viruses.
J Gastroenterol , 42 , 329-335  (2007)
原著論文11
Aono J, Yotsuyanagi H, Miyoshi H, et al.
Amino acid substitutions in S region of hepatitis B virus in the sera from patients with acute hepatitis.
Hepatol Res , 37 , 731-739  (2007)
原著論文12
Kitazawa T, Fukushima A, Okugawa S, et al.
Chlamydophilal antigens induce foam cell formation via c-Jun NH2-terminal kinase.
Microbes Infect , 9 , 1410-1414  (2007)
原著論文13
Matsuoka-Aizawa S, Gatanaga H, Sato H, et al.
Gag substitutions responsible for nelfinavir-dependent enhancement of precursor cleavage and human immunodeficiency virus type-1 replication.
Antiviral Res , 70 , 51-59  (2006)
原著論文14
Yamamoto K, Honda T, Matsushita T, et al.
Anti-HCV agent, ribavirin, elevates the activity of clotting factor VII in patients with hemophilia: a possible mechanism of decreased events of bleeding in patients with hemophilia by ribavirin.
J Thromb Haemost , 4 , 469-470  (2006)
原著論文15
Honda T, Katano Y, Toyoda H, et al.
Effect of Ribavirin, Combination with Interferon in Patients with Hepatitis C, on the Bleeding Risk Associated With Selective Serotonin Reuptake Inhibitors.
J Clin Psych , 69 , 679-680  (2008)
原著論文16
Sugawara Y, Makuuchi M.
Living donor liver transplantation to patients with hepatitis C virus cirrhosis.
World J Gastroenterol , 12 , 4461-4465  (2009)
原著論文17
Sugawara Y, Kaneko J, Makuuchi M.
Cyclosporin a for treatment of hepatitis C virus after liver transplantation.
Transplantation , 82 , 579-580  (2006)
原著論文18
Kimura T, Imamura M, Hiraga N, et al.
Establishment of an infectious genotype 1b hepatitis C virus clone in human hepatocyte chimeric mice.
J Gen Virol , 89 , 2108-2113  (2008)
原著論文19
Hatakeyama T, Noguchi C, Hiraga N, et al.
Serum HBV RNA is a predictor of early emergence of the YMDD mutant in patients treated with lamivudine.
Hepatology , 45 , 1179-1186  (2007)
原著論文20
Masaki N, Imamura M, Kikuchi Y, et al.
Useful¬ness of elastometry in evaluating the extents of liver fibrosis in hemophiliacs coinfected with hepatitis C virus and human immunodeficiency virus.
Hepatol Res , 35 , 135-139  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-