服薬アドヒアランスの向上・維持に関する研究

文献情報

文献番号
200830001A
報告書区分
総括
研究課題名
服薬アドヒアランスの向上・維持に関する研究
課題番号
H18-エイズ・一般-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
白阪 琢磨(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター HIV/AIDS先端医療開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 和子(国立国際医療センター戸山病院 エイズ治療・研究開発センター)
  • 桑原 健(独立行政法人国立病院機構南京都病院)
  • 廣常 秀人(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター)
  • 山中 京子(大阪府立大学人間社会学部)
  • 西澤 雅子(国立感染症研究所エイズ研究センター)
  • 小田原 隆(東京大学医科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
治療の進歩によってHIV感染症は慢性疾患になったが、抗HIV薬の服薬アドヒアランスの向上・維持が重要である。本研究の目的は継続的服薬に伴う服薬者の精神・心理的、身体的、社会・経済負担を明らかにし、その軽減のための支援方法の開発である。今年度が最終年度であるので最終の目的として今後も継続が必要な研究課題を提案する。
研究方法
服薬者の精神・心理的、身体的、社会経済的負担と施設側負担の検討のため次の研究を実施した。1)患者のセルフケア評価ツールの開発、2)精神・心理的負担に関する研究、3)薬剤耐性情報の把握、4)HIV診療におけるヘルスケアチームに関する研究、5)拠点病院における抗HIV薬剤の調査、6)忘れちゃだメールの改良、7)服薬ホームページの充実、8)抗HIV治療ガイドラインの改訂。
結果と考察
1)HIV感染症患者にアンケート調査依頼し332部回収。HIV/AIDS患者のセルフマネジメント支援への有用な知見を得ることができた。2)協力を得られた施設に精神科等の保健行動を調査。精神科の受診群には保健行動に困難がある割合が高いことが明らかとなった。3)調査を行った25医療施設のうち過半数の施設で保険収載が薬剤耐性検査の実施率に大きな影響を与えていないことが明らかになった。NRTI、NNRTI及びPIの3クラス耐性を持つ患者(14%)の中で耐性検査実施は43%にとどまった。4)ブロック拠点病院のチーム構成員に調査実施しチームメンバーとしての実際的な関わりはHIV診療の経験が長いほどプラスに働く傾向があった。5)回収数は235(回収率63%)。回答施設の総在庫金額は3億7千5百万円、昨年1年間の総廃棄金額は薬価ベースで約950万円。1施設あたりの在庫リスクは約160万円であった。6)長期的な利用を確認できた。携帯システムの改善を行った。7)副作用を早期発見できる支援ツールシステムのホームページ掲載。8)抗HIV治療ガイドラインを改訂。
結論
服薬アドヒアランスの向上及び維持についての研究を実施し、次の成果を得た。患者側には精神・心理的、身体的、社会経済的負担があり、阻害因子と促進因子がある事が明らかになった。施設側にも負担因子があった。本研究により上記の詳細につき解明が進んだ。服薬支援ツールの開発、チーム医療マニュアルおよび抗HIV治療ガイドラインの改訂作業を順調に行うことが出来た。

公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
-

文献情報

文献番号
200830001B
報告書区分
総合
研究課題名
服薬アドヒアランスの向上・維持に関する研究
課題番号
H18-エイズ・一般-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
白阪 琢磨(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター HIV/AIDS先端医療開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 和子(国立国際医療センター戸山病院 エイズ治療・研究開発センター)
  • 桑原 健(独立行政法人国立病院機構南京都病院 薬剤科)
  • 廣常 秀人(独立行政法人国立病院機構大坂医療センター 精神神経科)
  • 山中 京子(大阪府立大学 人間社会学部)
  • 小西 加保留(関西学院大学 社会学部社会福祉学科)
  • 西澤 雅子(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 中村 哲也(東京大学 医科学研究所)
  • 小田原 隆(東京大学 医科学研究所 先端医療研究センター感染症分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
治療の進歩によってHIV感染症は慢性疾患になったが、治癒はなく、抗HIV薬の服薬アドヒアランスの向上・維持が重要である。本研究の目的は継続的服薬に伴う服薬者の精神・心理的、身体的、社会・経済的負担を明らかにし、その軽減のための支援方法の開発である。さらに本研究の遂行のためにチーム医療マニュアルの周知と改訂、抗HIV療法の最新知見に基づき治療ガイドラインの改訂、副作用等薬剤関連情報のホームページの充実、携帯による服薬支援システム忘れちゃだメールの構築と改良を目的とした。最後に今後も継続が必要な研究課題を示す事とした。
研究方法
本研究では、後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針見直し検討会報告書(平成17年6月13日)を踏まえ、先行する厚生労働科学研究補助金エイズ対策事業「多剤併用療法服薬の精神的、身体的負担軽減のための研究」の研究成果をもとに研究を進めた。本研究では服薬者の精神・心理的、身体的、社会経済的負担と施設側負担などの検討のため研究を実施した。各因子の分析は看護師、薬剤師、臨床心理士、精神科医の視点からアプローチを行った。施設側要因として拠点病院に抗HIV薬剤調査を実施した。服薬支援ツール忘れちゃだメールは年度ごとに改良を加え、最終年度は携帯でのアンケート結果を基に改良を加えた。服薬支援ホームページは内容の充実を行った。抗HIV治療のガイドラインは毎年度改訂した。最終年度には、初回療法で推奨されている代表的処方につき個々の推奨根拠の臨床試験データを論文発表や学会発表からまとめ、web上で参照できるようにした。
結果と考察
本研究から、服薬アドヒアランスの向上・維持に関わる要因が当初の予想以上に存在する事が認められ、しかも、多岐に亘り、複雑である事が明らかになった。対策は要因別である事が必要と考えられた。年々、新薬と新知見が登場するため、わが国の抗HIV治療のガイドラインの改訂は、今後も必要と考えられた。本研究で開発した携帯を用いた忘れちゃだメールや、ホームページでの薬剤情報提供は新しい支援ツールとして今後も開発継続が期待される。HIV診療のチーム医療については今後も研究が必要と考えられ、マニュアルの改訂も必要と考えられた。
結論
服薬アドヒアランスの向上および維持についての研究を実施し、次の成果を得た。患者側には精神・心理的、身体的、社会経済的負担があり、阻害因子と促進因子がある事が明らかになった。施設側にも負担因子があった。本研究により、上記の詳細につき解明が進んだ。服薬支援ツールの開発に加え、チーム医療マニュアルや抗HIV治療ガイドラインの改訂作業を順調に行うことが出来た。

公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200830001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
治療の進歩によってHIV感染症は慢性疾患になったが、治癒はなく、抗HIV薬の服薬アドヒアランスの向上・維持が重要である。本研究の目的は継続的服薬に伴う服薬者の精神・心理的、身体的、社会・経済的負担を明らかにし、その軽減のための支援方法の開発である。さらに、服薬支援ツールとして携帯を用いた“忘れちゃだメール“を開発し、ホームページでの情報提供システムも開発した。チーム医療マニュアルや抗HIV治療ガイドラインの改訂作業も順調に行うことが出来た。
臨床的観点からの成果
先行研究から服薬の継続が容易ではなく、服薬行動には身体、精神・心理、社会経済的な促進因子と阻害因子がある事が明らかとなった。本研究では、先行研究成果を踏まえ、それぞれの因子につき分析を加え、良好な服薬アドヒアランスを維持するためのポイントを概ね明らかにした。患者側には精神・心理的、身体的、社会経済的負担があり、阻害因子と促進因子がある事が明らかになった。施設側にも負担因子があった。本研究により、上記の詳細につき解明が進んだ。
ガイドライン等の開発
「抗HIV治療ガイドライン」2007-2009年版 毎年1回 改訂。
「抗HIV療法と服薬支援」Vol,3 Vol,4 改訂。
その他行政的観点からの成果
本研究班の先行研究で作成した「チーム医療マニュアル」は平成18年度診療報酬改定の中で、ウイルス疾患指導料チーム医療加算の根拠となった。マニュアル改訂につき検討を重ねた。
その他のインパクト
抗HIV薬の服薬アドヒアランス向上・維持が重要であるというコンセプトはマスコミでも取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
12件
その他論文(英文等)
9件
学会発表(国内学会)
44件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
「抗HIV治療ガイドライン」2007-2009年版毎年改訂。
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-