新型インフルエンザプレパンデミックワクチンの安全性・免疫原性および交叉免疫性に関する研究

文献情報

文献番号
200829050A
報告書区分
総括
研究課題名
新型インフルエンザプレパンデミックワクチンの安全性・免疫原性および交叉免疫性に関する研究
課題番号
H20-新興・指定-021
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
庵原 俊昭(国立病院機構三重病院)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤澄信(国立病院機構本部医療部研究課)
  • 小田切孝人(国立感染症研究所ウイルス3部)
  • 小林史明(日本医師会治験促進センター研究事業部)
  • 岩田敏(国立病院機構東京医療センター)
  • 佐伯行彦(国立病院機構大阪南医療センター臨床研究部)
  • 島津章(国立病院機構京都医療センター臨床研究センター)
  • 村中光(国立病院機構九州医療センター臨床研究センター)
  • 清川哲志(国立病院機構熊本医療センター)
  • 高橋典明(日本大学医学部呼吸器内科)
  • 堀部敬三(国立病院機構名古屋医療センター臨床研究センター)
  • 尾崎隆男(愛知県厚生連江南病院)
  • 中野貴司(国立病院機構三重病院臨床研究部)
  • 西川政勝(三重大学大学院医学系研究科臨床創薬研究学)
  • 井戸正流(国立病院機構三重中央医療センター)
  • 鈴木彦次(鈴鹿回生病院血液内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
450,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒトヒト感染する感染症においてワクチンは効果的な予防対策である。新型インフルエンザウイルスによるパンデミック時にも沈降新型インフルエンザワクチンの効果が期待されている。新型インフルエンザウイルスパンデミック時における沈降新型インフルエンザワクチンH5N1の役割を明らかにするために、沈降新型インフルエンザワクチンの安全性、免疫原性、交差免疫性について検討を行った。
研究方法
インドネシア株を2726人に、安徽株を2835人に2回接種し、0.1%以上の確率で出現が予測される副反応の出現頻度を検討し、インドネシア株および安徽株をそれぞれ100人に2回接種し、初回接種による免疫原性および交差免疫性を検討し、2年前にベトナム株の接種を受けた102人にインドネシア株を、108人に安徽株を1回接種し、追加接種による免疫原性および交差免疫性を検討した。なお、研究参加者には文書により同意を得た。
結果と考察
5561人に接種した結果では、局所性副反応および全身性副反応の種類と頻度は、ベトナム株治験時の副反応の種類と頻度に同等であり、0.1%以上の確率で出現する新たな副反応は認めなかったが、0.1%よりも低い頻度で出現する副反応については対象者を増やして検討する必要があると思われた。
インドネシア株、安徽株初回接種の免疫原性、交差免疫性の検討では、ホモの株に対する中和抗体はEMEAの評価基準を満たしたが、ヘテロの株に対する交差免疫性は不十分であり、本邦が開発した沈降新型インフルエンザワクチンは、株を変えても成人においては免疫プライミング効果があるが交差免疫性は弱いと判断された。インドネシア株、安徽株追加接種の安全性、免疫原性、交差免疫性の検討では、ベトナム株初回接種時の通常量接種群、低用量接種群とも効果的な二次免疫応答が認められ、しかも誘導された抗体価は高く、クレードの異なる野生株を含めた広い範囲の交差免疫性が認め、沈降新型インフルエンザワクチンのprime and boostは効果的な対策と思われた。
結論
H5N1パンデミック時の流行抑制対策として、沈降新型インフルエンザワクチンによる初回接種(2回)では予防効果は不十分で、あらかじめ初回接種により免疫記憶を誘導しておき、パンデミック時に1回追加接種するprime and boostの方が効果的な対策である。なお、接種対象者を拡大するにあたっては、予測されない重篤な有害事象の観察体制と報告体制の整備が必要である。

公開日・更新日

公開日
2009-04-21
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200829050C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本邦で開発された沈降新型インフルエンザワクチンは、製造に使用する株が開発時のベトナム株とかわっても、安全性は同程度であり、効果的な免疫プライミング効果が認められ、免疫誘導の面では優れた組成であった。追加接種の研究では、追加接種後には二次免疫応答が認められ、誘導された抗体は、初回接種時に誘導される抗体よりも抗体価が高く、広い交叉免疫性が認められた。また、0.1%以上の確率で出現する新たな副反応は認められなかった。
臨床的観点からの成果
初回接種よりも追加接種で誘導される抗体の方が、H5N1パンデミック時には効果的な効果が期待できると推察される。
ガイドライン等の開発
沈降新型インフルエンザワクチンの接種方法についてインフルエンザ専門家会議の委員と協議し、接種方法について提案することを予定している。
その他行政的観点からの成果
H5N1がパンデミックを起こせば、現在備蓄している沈降新型インフルエンザワクチンは、新型インフルエンザパンデミック対策としての効果が期待される。
その他のインパクト
低用量(5μg/接種)2回接種でも免疫プライミング効果があり、プライミング&ブーステイングによる感染対策を行うならば、沈降新型インフルエンザワクチンの在庫が少なくなったときのオプションとして、低用量接種も効果が期待される。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2016-06-08
更新日
-