新型インフルエンザの発生予測、早期検知、リスク評価および大流行に対する事前準備と緊急対応に関する研究

文献情報

文献番号
200829034A
報告書区分
総括
研究課題名
新型インフルエンザの発生予測、早期検知、リスク評価および大流行に対する事前準備と緊急対応に関する研究
課題番号
H20-新興・一般-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
田代 眞人(国立感染症研究所 ウイルス第3部)
研究分担者(所属機関)
  • 小田切 孝人(国立感染症研究所 ウイルス第3部 )
  • 長谷川 秀樹(国立感染症研究所 感染病理部 )
  • 西藤 岳彦(独立行政法人 農業食品産業技術総合研究機構動物衛生研究所人獣感染病研究チーム感染症疫学解析疫学ユニット)
  • 押谷 仁(東北大学大学院 医学研究科)
  • 河岡 義裕(東京大学医科学研究所 分子ウイルス学分野)
  • 鈴木 康夫(中部大学 生命健康科学部)
  • 喜田 宏(北海道大学大学院人獣共通感染症リサーチセンター)
  • 岡部 信彦(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 高橋 宜聖(国立感染症研究所 免疫部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
174,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新型インフルエンザ大流行時での健康被害を最小限にとどめ、社会機能の維持を目的として、新型インフルエンザの発生予測、早期検知、リスク評価方法を確立し、事前準備と緊急対策計画の策定とその実施に必要な理論的、技術的な基盤を確立・提供し、危機管理体制の確立に寄与する。
研究方法
1.新型インフルエンザ出現機序の解明とそれに基づく出現予測方法の開発
2.新型インフルエンザ出現の早期検知監視体制とリスク評価方法の開発
3.新型インフルエンザウイルス迅速診断キットの開発・改良・普及
4.新型ワクチンの緊急開発・増産・供給・接種体制の検討
5.抗ウイルス剤の有効な備蓄方法と使用方法の検討
6.感染病理機構の解明に基づく経鼻投与ワクチン、組織培養ワクチンの開発
結果と考察
1.鳥で流行中のインフルエンザウイルスの遺伝子、抗原性、生物性状等を比較検討し、新型インフルエンザ出現の可能性、健康被害、社会的影響等のリスク評価を行った。H5N1は徐々にヒト型に変化しており、新型インフルエンザへの進展とヒトに対する高病原性も維持される可能性が高いと判断された。
2.H5N1への準備対応が不可欠であり、これらが十分であれば、他の亜型の新型インフルエンザにも対応可能と予想された。特にH5に関しては、備蓄ワクチンの事前接種(プライム・ブースト戦略)の有効性が示唆された。
3.鳥ウイルスのヒト型への変身要因として、HA蛋白レセプター認識部位の変異とRNAポリメラ―ゼ変異による低温増殖性が示された。遺伝子解析から、H5N1型はヒト型へ、さらに上気道で効率よく増殖するようになってきている。4.トリ(及びヒト)への強毒性は、ヒト型への変異要因とは異なる数カ所の遺伝子部位が規定している。流行中のH5N1ウイルスでは弱毒化の傾向は無く、H5N1新型ウイルスには、強毒性が維持される可能性が高い。
5.H5N1ウイルス感染診断系を改訂し、リアルタイムRT-PCRによるType A, H5, N1亜型の同時同定を可能にした。これらは、検疫所、地方衛生研究所検査担当者へ技術移転され、わが国で統一された最新版マニュアルを用いた診断検査が可能となった。
6.高病原性トリインフルエンザウイルスがヒトへ伝播可能とするレセプター認識変異を簡便に測定する基本技術を開発した。これにより、パンデミック発生を分子レベルで事前に監視できる可能性を得た。
結論
国のパンデミック事前準備と緊急対策の行動計画の策定および実施に必要な理論的、技術的な基盤を提供し、危機管理体制の確立に貢献できる。

公開日・更新日

公開日
2010-01-12
更新日
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