本邦におけるHTLV-1感染及び関連疾患の実態調査と総合対策

文献情報

文献番号
200829033A
報告書区分
総括
研究課題名
本邦におけるHTLV-1感染及び関連疾患の実態調査と総合対策
課題番号
H20-新興・一般-004
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
山口 一成(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 恭暉(長崎大学 臨床検査医学)
  • 岡山 昭彦(宮崎大学 内科学)
  • 佐竹 正博(日本赤十字社 西東京都赤十字血液センター)
  • 出雲 周二(鹿児島大学 医歯学総合研究科)
  • 望月 學(東京医科歯科大学 眼科学)
  • 渡邉 俊樹(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)
  • 徳留 信寛(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は、難治性疾患である成人T細胞白血病(ATL)等の原因ウイルスである。本邦での感染者は約120万人と推定されていたが、これは20数年前の献血者での抗体陽性者から算出されたものであり、その後全国調査はなされていない。またATL患者数は、この5年間の厚生労働省の死亡統計ではこれまでの推定の約1.5倍となっている。そこで、全国調査により本邦のHTLV-1キャリア及びATL等のHTLV-1関連疾患の現在の実態を把握し、本感染症が国民健康に与えている影響を評価し、キャリア、患者に対する総合対策を提言実行することを目的とした。
研究方法
全国のキャリア数を把握するために、日本赤十字社の協力を得て、各地域における16歳以上65歳未満の献血者におけるHTLV-1抗体陽性者を調査した。但し、既献血者のなかで抗体陽性者にはその旨通知し献血者から除かれるため、本研究では通知によるバイアスのかからない初回献血者のみを対象とした。また、ウイルス量の測定において各施設で独自の方法が用いられているPCR法について、全国的なサーベイランスを行う手段としての標準的な測定法を確立するための検討を行った。さらに、日本赤十字社血液センターでの献血者に対するHTLV-1抗体検査法が昨年から変更になったため、現法の精度について従来法と比較検討した。
結果と考察
今回の調査では、日本全体におけるHTLV-1キャリア数は約108万人と推定され、減少はみられるものの、引き続き多くの感染者が存在していた。また九州(沖縄を含む)のキャリア数の割合が減少しているものの、関東は増加しており、感染が大都市圏に拡散している可能性が示唆された。また、PCR TaqMan法による末梢血中のHTLV-1プロウイルスDNAのコピー数定量系を検討したが、今後も検討を継続する必要があることが分かった。さらに、献血者の現在の抗体スクリーニング法(酵素免疫法)を従来法(粒子凝集法)と比較検討したところ、現法の方が従来法より精度的に向上していると考えられた。
結論
今後さらにキャリア数の全国調査を実施すると共に、HTLV-1関連疾患患者の最近の実態調査や発生状況を調査するため、その患者数の全国における現状把握も早急に行っていく必要がある。また、HTLV-1感染症の診断・評価において重要な抗体やウイルス量の測定法の検討もさらに必要である。これらの研究を通して、本邦におけるHTLV-1キャリア及び感染者からの関連疾患発症の実態を明らかにし、今後の感染・関連疾患発症の予防や治療の総合的な対策策定に役立てていく。

公開日・更新日

公開日
2010-01-12
更新日
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研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-12-01
更新日
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